最近、トチノキの下をとおり、木を見上げて
トチノミに思いをはせていたらむらっときたので
あく抜きについて調べてみたところ、
どうも手順がおかしい、科学的ではない、ということに気づきました。
とちのみを食べるには何か月もアク抜きをしなければいけない、とも
見るのですが、どうも古い時代のままなにも考えず、
概念も更新していないように思うのです。
昔は、飢えたとき、食べ物のないときに食べて
どうにか命をつなぐ系統のものだったそうで。
たとえば、冬の間、トチノミでなんとか生き延びるように
腐らせず、長持ちさせるようにと手を入れていたように
見えるのです。
そうでない現在、作ってすぐ消費するのなら、
そこまで時間をかける必要はないはずなのです。
――想像上では。
そもそも、トチの実で何を食べるかといえば、
でんぷんです。
でんぷんを取り出して食べ物にする、というのは
昔からよくありました。
そもそもじゃがいもだって原種は毒があるので、
乾燥させたり夜露に濡らしたり、踏んづけたりして
毒を抜いたはず。
それ以外にも、ソテツやヒガンバナだって
毒性があるでんぷんを無毒化して食べるものです。
それから、特に有名な、タピオカミルクティーを作るキャッサバ。
あれは毒のあるキャッサバを解毒して
無毒でんぷんを作り出して加工しています。
……でも、です。
解毒方法を間違えれば死んでしまうソテツだって、
数か月無毒化作業を行う、なんてことはしません。
なのに、なぜ、ソテツよりも致死性の低いトチの実に、
数か月もかけなくてはいけないのでしょうか。
ここには、工程に無駄や矛盾があるはずです。
ここで、ソテツなどとトチの実の無毒化に
どういう違いがあるかと見れば――
そのやりかたが違うとわかります。
ソテツやキャッサバ、ヒガンバナなどは、
粉や粉汁、すなわち毒を含んだでんぷん状態にしてから、
無毒化作業を行います。
いっぽうで、とちのみの無毒化について書かれているものを見る限り、
どれも実のままで無毒化をしようとしています。
これが、誤りだと思うのです。
実の形を保ったままで作業しなければ毒がぬけない、なんて
ゲームの世界のおまじないみたいなことが、この世界であるでしょうか?
おそらく、ありません。
とちのみもでんぷんにしてから毒成分を分離させたほうが、
浸透性・伝導性の高さからも、ずっとはやく、ずっとうまくいくはずです。
――想像上では。
というところで、調べながら考えてみた方法を一応メモしておきます。
そのうち実が拾えたら試してみたいと思っているだけで
試していないので注意です。
※いろいろ調べていたら、トチノ実を食べようとする人には、
どのような形でもいいので、拾ってみたトチノミを食べてみたいだけの人と、
トチノミをトチノミらしく食べてみたいという人がいたようです。
後者は実のままで毒抜きをして、風味が残った状態でなければ
満足できないため、従来の長い時間がかかる手順が必要になります。
A-1
実を拾ったら、水に漬けて虫を出します。
2~3日。
虫は有毒ではないため、実を実として使わないこの手法では
おそらく必要ない手順です。
水を吸って実が膨らむと皮が剥きにくくなるかもしれません。
実際やってみて修正が必要です。
A-2
外の、もっとも硬い殻だけを剥きます。
中の渋皮だかは別に残していても平気なはず。
ただ、考えるならば、
工業的には、一度茹で、巨大ハンマーでただ押しつぶし、
実をはみ出させ、それを水で洗って殻だけ捨てる、
という方法では楽にできる可能性があります。
やったことないのでなんともいえませんし、
設備代がかかってしまいますけど。
水車とかで殻ごとつぶして汁に流せる可能性もあるかもしれません。
※実をゆでてからつぶしてでんぷんを取る、という方法は
トチノミでないものにも見かけます。
オオシの球根など。
元の状態に近いままであれば、水と熱を加えても変質せず、
後にでんぷんを取り出せる様子。
じゃがいもからでんぷんを取る際、
生じゃがいもを摩り下ろす話ばかりでてくるけれど、
ゆでたじゃがいもからも同じようにでんぷんが取れる……?
※ここでゆでてしまうとでんぷんが老化するだけで
二度と糊化できなくなるので注意。
くずもちやゼリーのような、ぷるるんタイプにならず
粉のままぼぞぼぞになって、毒も味もない
かさまし材にしかならないそう。
A-3
中の実を、水を入れたミキサーなどで粉砕し、どろどろにします。(だめ)
硬くて壊せないなら、すこし茹でてしまっていいのかもしれません。
実の状態ではゆでても糊化せず、
でんぷんが取れるようです。(だめ)
※いきなりどろどろにすると、沈殿するアクと分離が難しいらしいのでだめ。
アクは水に解けて流せるものだけではなく、
肉をゆでたアクのように浮かぶものばかりでなく
沈殿していくものもあるそう。
なるべくこまかくくだいて、網の上に載せて、水にしずめて、
水に溶けるアクも沈むアクもとれるようにしていくとよさそう。
A-4
布などで濾し、カス(ゴミ)とにごり汁にわけます。
手にビニール手袋をつけて、しっかりもみこんで
カスに粉がなるべく残らないようにすること。
で、絞ってにごっているこの汁が、
有毒成分を含む、トチノミのでんぷんです。
この状態から、有毒成分を分離すればいいわけです。
虫でも、渋皮でも、ゴミのほうにここで分離されるはず。
A-5
しっかり乾燥させる。
※この乾燥が、重要のようです。
従来手順では、実のまま乾燥させようとするので
ここに長い時間かかっていましたが、
粉にして乾燥させると、簡単に水分は抜けます。
乾燥させないと、植物的成分が生きていて、
毒成分を手放さないとかどうとかの話があるそう。
そこで、乾燥させて植物的成分を殺し、
毒成分を分離しやすくする……らしいです。
この植物的成分が、植物繊維とかのことなのか、
その植物が持つ何かのたんぱく質や酵素のことなのかは
よくわかりません。
(→どうも植物繊維のことっぽい)
先ほど述べた、実のまま煮て、その後砕いて水にさらしても
でんぷんが取れるのは、この植物的成分が
でんぷんを守っているからだと思われます。
乾燥か熱を加えることで、でんぷんを守る植物的成分を破壊し、
排除できるようにする手順です。
従来の手順で、実を乾燥させていたのは、
毒を分離しやすくするという意味もあったようです。
もちろん、加熱して殺す、という手もありますが、
今回のように、丸出しのでんぷんが水に入っている状態で煮ると、
でんぷんは糊化して、毒でんぷんのすいとんのような食べ物に
直接変わってしまいます。
水気と熱を同時に加えるのはだめ。
毒でんぷんを無毒にする方法、として、
煮込んでから粉にする、と書いてあるものを見かけましたが、
煮込んだら糊のぬめぬめになるだけのはず。
やってはだめです。
次の手順
B-1
固めた毒でんぷんを水に溶かし、よく混ぜ、沈殿させ、
水を適当に捨てます。
※ここで、一個分くらいの量の毒でんぷんを小分けにしてとっておき、
乾燥させて粉にしておくといいかも。(微毒でんぷん)
B-2
水を捨てたらまた水を加え、よくまぜ、沈殿させ、
水を適当に捨てるのを繰り返します。
あるいは、流れ出ないくらいに水を出しつづけ、
水をこぼしつづける、でもいいのかも。
基本的に、トチノミは茶色い粉石鹸ですので、
茶色汁やせっけんのような泡がでなくなるまで
水変えをざっと繰り返します。
B-3 積極的毒抜き
省ける行為です。
従来の、栃の実を栃の実の形のままあく抜きするには必須ですが、
素人や町人がやろうとすると、これが一番難易度が高いのです。
でも、でんぷんからの毒抜きにはおそらく必要ない行為です。
一応記します。
従来の手順では、ナラの木を焼いた灰などをぬるま湯に溶かし、
pH値が10くらいになる水を作り、そこに木の実を沈めたり、
ペースト状にして木の実に塗りたくったりします。
でも、でんぷんでそれをやると、おそらく灰とでんぷんと
分離できなくなります。
なので、木の灰は使えません。
木の灰を使う場合は、ぬるま湯に溶かし、
上澄み液をとり、その液でもみ洗いとかき混ぜ、沈殿を行います。
替わりになるのは、重曹(炭酸水素ナトリウム)。
これは水溶性で、水を替えれば流れていきます。
……が。高アルカリは苦味がつくらしく、
橡の実の苦味は、実本来の味なのか、
この毒抜き剤の味なのかわからない
とも言われるほどであるとかどうとか。
※重曹(炭酸水素ナトリウム)は65度くらいで
炭酸ナトリウムになってpHがあがります。
炭酸ナトリウムの汁を一度作って冷ましてから、
毒でんぷんを入れると……
苦味が重曹によるものであれば、苦味がさらに増すはずです。
※煮る、について。
トチノミでんぷんの糊化温度は56度くらいだそうなので
55度近くなると、毒すいとんができあがって捨てるしかなくなります。
ヨーグルトメーカーとか甘酒メーカーとかで
50度くらいにして保温もあり。
温度は50度程度であれば、時間は何時間だろうが
かまいません。
実の形のまま煮るのであれば、
冬場のストーブの上に置いて、毎日水を変えて、
適当に重曹を入れて煮込み続けるのが楽そう。
B-4
完成です。
トチノミの毒成分は無味無臭で命だけ奪うというタイプでなく、
すごく毒っぽい味でわかるようなので、
手の上に乗せ、においをかぎ、そっと舌につけてしばらくしたのち、
無事だったら口の中に入れてもごもごして、
それでも泡が立たず、苦さにおえっとせず、
普通に粉やでんぷんだな……と思えたら成功です。
C-1
料理の素材につかうとき、先にとっておいた
微毒でんぷんを、隠し味の塩程度に混ぜるか、
あるいはできあがりにちらっと振り掛けるかすると、
もとの風味を感じられるかもしれません。
どこまで毒が残っているのかわからないので注意ですけど。
でんぷんで完全にさらすと、風味も何もない、
かたくりことほぼかわりませんので。
参照:
ヒガンバナからでんぷんを取るには、
一緒に混じっているリコリンを抜けばいいとか。
リコリンは水溶性です。
とちの実の毒性は、
サポニンやタンニン、アロインだそうです。
調べると、サポニンは水溶性、タンニン、アロインも水溶性のようです。
とすると、じつのところ。
毒でんぷんを持つ植物の大概は、
きれいな水(流水)にさらしつづけて
腐らないようにしておけば毒が抜けているのでは?
たとえば、神社のお手水のような、
深い桶にちょっと高い場所からちょろちょろ水を落とすようなものの底に
毒でんぷんを沈めておけば。
一か月後などにはだいたいなんでも腐らずに、
そのうち勝手に食べられる状態に
なっているのではないか、と思います。
――想像上では。
そんな都合のいい場所がない町では、
おふろの浴槽の上に棒でも渡しておいて、
ちょろちょろ水のこぼれを浴槽にためておくといいかもしれません。
トチノミの有害物質、サポニンはサポン、サボン……
すなわちシャボン(石鹸)の成分ですので
水は選択につかえて、ただ捨てることにもならず、
無駄と罪悪感が薄れるはず。
ただ、タンニンが含まれていると茶色くなるので、
色がなくなるまでは捨て続けなければいけませんけど。
気をつけておくべきは、水の温度です。
洗濯でもなんでも、物の反応は温度が高いほど起こりやすいので、
手を入れると冷たくてたまらない、低温度の水では
毒抜き効果は薄いかもしれません。
かといって、高温にするとでんぷんが固まるので注意です。
たぶんでんぷんの糊化は50度以上で起こるものがおおそうなので
高い温度にしてはいけません。
また、毒成分が水溶性でないものも、この方法ではだめです。
でんぷんで毒成分が脂溶性であるものはよくわかりませんでしたけど。
いちおう述べておくと、でんぷんでなく、たんぱく質の、
貝毒や魚毒などは脂溶性らしいです。
こういうものを水にさらしておいても毒はぬけません。
ふぐ毒はカビなどをつけて分解させるという手があるようですし、
味噌などに漬けるというものもあるようです。
たんぱく質分解酵素などが毒成分も一緒に分解する……のでしょうか。
毒でんぷんのソテツも、味噌にするとか
カビを生やすとか目にしたので、
でんぷんの毒素も分解できるものはあるようです。
トチノミに思いをはせていたらむらっときたので
あく抜きについて調べてみたところ、
どうも手順がおかしい、科学的ではない、ということに気づきました。
とちのみを食べるには何か月もアク抜きをしなければいけない、とも
見るのですが、どうも古い時代のままなにも考えず、
概念も更新していないように思うのです。
昔は、飢えたとき、食べ物のないときに食べて
どうにか命をつなぐ系統のものだったそうで。
たとえば、冬の間、トチノミでなんとか生き延びるように
腐らせず、長持ちさせるようにと手を入れていたように
見えるのです。
そうでない現在、作ってすぐ消費するのなら、
そこまで時間をかける必要はないはずなのです。
――想像上では。
そもそも、トチの実で何を食べるかといえば、
でんぷんです。
でんぷんを取り出して食べ物にする、というのは
昔からよくありました。
そもそもじゃがいもだって原種は毒があるので、
乾燥させたり夜露に濡らしたり、踏んづけたりして
毒を抜いたはず。
それ以外にも、ソテツやヒガンバナだって
毒性があるでんぷんを無毒化して食べるものです。
それから、特に有名な、タピオカミルクティーを作るキャッサバ。
あれは毒のあるキャッサバを解毒して
無毒でんぷんを作り出して加工しています。
……でも、です。
解毒方法を間違えれば死んでしまうソテツだって、
数か月無毒化作業を行う、なんてことはしません。
なのに、なぜ、ソテツよりも致死性の低いトチの実に、
数か月もかけなくてはいけないのでしょうか。
ここには、工程に無駄や矛盾があるはずです。
ここで、ソテツなどとトチの実の無毒化に
どういう違いがあるかと見れば――
そのやりかたが違うとわかります。
ソテツやキャッサバ、ヒガンバナなどは、
粉や粉汁、すなわち毒を含んだでんぷん状態にしてから、
無毒化作業を行います。
いっぽうで、とちのみの無毒化について書かれているものを見る限り、
どれも実のままで無毒化をしようとしています。
これが、誤りだと思うのです。
実の形を保ったままで作業しなければ毒がぬけない、なんて
ゲームの世界のおまじないみたいなことが、この世界であるでしょうか?
おそらく、ありません。
とちのみもでんぷんにしてから毒成分を分離させたほうが、
浸透性・伝導性の高さからも、ずっとはやく、ずっとうまくいくはずです。
――想像上では。
というところで、調べながら考えてみた方法を一応メモしておきます。
そのうち実が拾えたら試してみたいと思っているだけで
試していないので注意です。
※いろいろ調べていたら、トチノ実を食べようとする人には、
どのような形でもいいので、拾ってみたトチノミを食べてみたいだけの人と、
トチノミをトチノミらしく食べてみたいという人がいたようです。
後者は実のままで毒抜きをして、風味が残った状態でなければ
満足できないため、従来の長い時間がかかる手順が必要になります。
A-1
実を拾ったら、水に漬けて虫を出します。
2~3日。
虫は有毒ではないため、実を実として使わないこの手法では
おそらく必要ない手順です。
水を吸って実が膨らむと皮が剥きにくくなるかもしれません。
実際やってみて修正が必要です。
A-2
外の、もっとも硬い殻だけを剥きます。
中の渋皮だかは別に残していても平気なはず。
ただ、考えるならば、
工業的には、一度茹で、巨大ハンマーでただ押しつぶし、
実をはみ出させ、それを水で洗って殻だけ捨てる、
という方法では楽にできる可能性があります。
やったことないのでなんともいえませんし、
設備代がかかってしまいますけど。
水車とかで殻ごとつぶして汁に流せる可能性もあるかもしれません。
※実をゆでてからつぶしてでんぷんを取る、という方法は
トチノミでないものにも見かけます。
オオシの球根など。
元の状態に近いままであれば、水と熱を加えても変質せず、
後にでんぷんを取り出せる様子。
じゃがいもからでんぷんを取る際、
生じゃがいもを摩り下ろす話ばかりでてくるけれど、
ゆでたじゃがいもからも同じようにでんぷんが取れる……?
※ここでゆでてしまうとでんぷんが老化するだけで
二度と糊化できなくなるので注意。
くずもちやゼリーのような、ぷるるんタイプにならず
粉のままぼぞぼぞになって、毒も味もない
かさまし材にしかならないそう。
A-3
中の実を、水を入れたミキサーなどで粉砕し、どろどろにします。(だめ)
硬くて壊せないなら、すこし茹でてしまっていいのかもしれません。
実の状態ではゆでても糊化せず、
でんぷんが取れるようです。(だめ)
※いきなりどろどろにすると、沈殿するアクと分離が難しいらしいのでだめ。
アクは水に解けて流せるものだけではなく、
肉をゆでたアクのように浮かぶものばかりでなく
沈殿していくものもあるそう。
なるべくこまかくくだいて、網の上に載せて、水にしずめて、
水に溶けるアクも沈むアクもとれるようにしていくとよさそう。
A-4
布などで濾し、カス(ゴミ)とにごり汁にわけます。
手にビニール手袋をつけて、しっかりもみこんで
カスに粉がなるべく残らないようにすること。
で、絞ってにごっているこの汁が、
有毒成分を含む、トチノミのでんぷんです。
この状態から、有毒成分を分離すればいいわけです。
虫でも、渋皮でも、ゴミのほうにここで分離されるはず。
A-5
しっかり乾燥させる。
※この乾燥が、重要のようです。
従来手順では、実のまま乾燥させようとするので
ここに長い時間かかっていましたが、
粉にして乾燥させると、簡単に水分は抜けます。
乾燥させないと、植物的成分が生きていて、
毒成分を手放さないとかどうとかの話があるそう。
そこで、乾燥させて植物的成分を殺し、
毒成分を分離しやすくする……らしいです。
この植物的成分が、植物繊維とかのことなのか、
その植物が持つ何かのたんぱく質や酵素のことなのかは
よくわかりません。
(→どうも植物繊維のことっぽい)
先ほど述べた、実のまま煮て、その後砕いて水にさらしても
でんぷんが取れるのは、この植物的成分が
でんぷんを守っているからだと思われます。
乾燥か熱を加えることで、でんぷんを守る植物的成分を破壊し、
排除できるようにする手順です。
従来の手順で、実を乾燥させていたのは、
毒を分離しやすくするという意味もあったようです。
もちろん、加熱して殺す、という手もありますが、
今回のように、丸出しのでんぷんが水に入っている状態で煮ると、
でんぷんは糊化して、毒でんぷんのすいとんのような食べ物に
直接変わってしまいます。
水気と熱を同時に加えるのはだめ。
毒でんぷんを無毒にする方法、として、
煮込んでから粉にする、と書いてあるものを見かけましたが、
煮込んだら糊のぬめぬめになるだけのはず。
やってはだめです。
次の手順
B-1
固めた毒でんぷんを水に溶かし、よく混ぜ、沈殿させ、
水を適当に捨てます。
※ここで、一個分くらいの量の毒でんぷんを小分けにしてとっておき、
乾燥させて粉にしておくといいかも。(微毒でんぷん)
B-2
水を捨てたらまた水を加え、よくまぜ、沈殿させ、
水を適当に捨てるのを繰り返します。
あるいは、流れ出ないくらいに水を出しつづけ、
水をこぼしつづける、でもいいのかも。
基本的に、トチノミは茶色い粉石鹸ですので、
茶色汁やせっけんのような泡がでなくなるまで
水変えをざっと繰り返します。
B-3 積極的毒抜き
省ける行為です。
従来の、栃の実を栃の実の形のままあく抜きするには必須ですが、
素人や町人がやろうとすると、これが一番難易度が高いのです。
でも、でんぷんからの毒抜きにはおそらく必要ない行為です。
一応記します。
従来の手順では、ナラの木を焼いた灰などをぬるま湯に溶かし、
pH値が10くらいになる水を作り、そこに木の実を沈めたり、
ペースト状にして木の実に塗りたくったりします。
でも、でんぷんでそれをやると、おそらく灰とでんぷんと
分離できなくなります。
なので、木の灰は使えません。
木の灰を使う場合は、ぬるま湯に溶かし、
上澄み液をとり、その液でもみ洗いとかき混ぜ、沈殿を行います。
替わりになるのは、重曹(炭酸水素ナトリウム)。
これは水溶性で、水を替えれば流れていきます。
……が。高アルカリは苦味がつくらしく、
橡の実の苦味は、実本来の味なのか、
この毒抜き剤の味なのかわからない
とも言われるほどであるとかどうとか。
※重曹(炭酸水素ナトリウム)は65度くらいで
炭酸ナトリウムになってpHがあがります。
炭酸ナトリウムの汁を一度作って冷ましてから、
毒でんぷんを入れると……
苦味が重曹によるものであれば、苦味がさらに増すはずです。
※煮る、について。
トチノミでんぷんの糊化温度は56度くらいだそうなので
55度近くなると、毒すいとんができあがって捨てるしかなくなります。
ヨーグルトメーカーとか甘酒メーカーとかで
50度くらいにして保温もあり。
温度は50度程度であれば、時間は何時間だろうが
かまいません。
実の形のまま煮るのであれば、
冬場のストーブの上に置いて、毎日水を変えて、
適当に重曹を入れて煮込み続けるのが楽そう。
B-4
完成です。
トチノミの毒成分は無味無臭で命だけ奪うというタイプでなく、
すごく毒っぽい味でわかるようなので、
手の上に乗せ、においをかぎ、そっと舌につけてしばらくしたのち、
無事だったら口の中に入れてもごもごして、
それでも泡が立たず、苦さにおえっとせず、
普通に粉やでんぷんだな……と思えたら成功です。
C-1
料理の素材につかうとき、先にとっておいた
微毒でんぷんを、隠し味の塩程度に混ぜるか、
あるいはできあがりにちらっと振り掛けるかすると、
もとの風味を感じられるかもしれません。
どこまで毒が残っているのかわからないので注意ですけど。
でんぷんで完全にさらすと、風味も何もない、
かたくりことほぼかわりませんので。
参照:
ヒガンバナからでんぷんを取るには、
一緒に混じっているリコリンを抜けばいいとか。
リコリンは水溶性です。
とちの実の毒性は、
サポニンやタンニン、アロインだそうです。
調べると、サポニンは水溶性、タンニン、アロインも水溶性のようです。
とすると、じつのところ。
毒でんぷんを持つ植物の大概は、
きれいな水(流水)にさらしつづけて
腐らないようにしておけば毒が抜けているのでは?
たとえば、神社のお手水のような、
深い桶にちょっと高い場所からちょろちょろ水を落とすようなものの底に
毒でんぷんを沈めておけば。
一か月後などにはだいたいなんでも腐らずに、
そのうち勝手に食べられる状態に
なっているのではないか、と思います。
――想像上では。
そんな都合のいい場所がない町では、
おふろの浴槽の上に棒でも渡しておいて、
ちょろちょろ水のこぼれを浴槽にためておくといいかもしれません。
トチノミの有害物質、サポニンはサポン、サボン……
すなわちシャボン(石鹸)の成分ですので
水は選択につかえて、ただ捨てることにもならず、
無駄と罪悪感が薄れるはず。
ただ、タンニンが含まれていると茶色くなるので、
色がなくなるまでは捨て続けなければいけませんけど。
気をつけておくべきは、水の温度です。
洗濯でもなんでも、物の反応は温度が高いほど起こりやすいので、
手を入れると冷たくてたまらない、低温度の水では
毒抜き効果は薄いかもしれません。
かといって、高温にするとでんぷんが固まるので注意です。
たぶんでんぷんの糊化は50度以上で起こるものがおおそうなので
高い温度にしてはいけません。
また、毒成分が水溶性でないものも、この方法ではだめです。
でんぷんで毒成分が脂溶性であるものはよくわかりませんでしたけど。
いちおう述べておくと、でんぷんでなく、たんぱく質の、
貝毒や魚毒などは脂溶性らしいです。
こういうものを水にさらしておいても毒はぬけません。
ふぐ毒はカビなどをつけて分解させるという手があるようですし、
味噌などに漬けるというものもあるようです。
たんぱく質分解酵素などが毒成分も一緒に分解する……のでしょうか。
毒でんぷんのソテツも、味噌にするとか
カビを生やすとか目にしたので、
でんぷんの毒素も分解できるものはあるようです。