お寺、珊瑚寺は口縄坂の傍にあるので、傾斜地にお墓が点在している。
ケンジくんのお墓は見晴らしのいい高台にある。お墓の後ろに、南天が芽を出しこんなに成長している。ケンジくんは今も17歳。多感な17歳だった。ボウイが大好きで、学校を辞めて音楽をやりたかった。でも保護者懇談に来てもらったお母さんと私で説得して、なんとか学校を続けることになった。軽音の引退コンサートが成功し、やり切った笑顔が印象的だった。その数日後に帰らぬ人となるとは誰が想像しただろうか。通学途中、駅で倒れて心臓が止まってしまった。雨の降る日だったが、プールの用意もしていた。
お寺の紫陽花
くちなしの花もあった。3日連続のくちなし。
ご家族とお別れして、私は天王寺に行った。観たい映画があったので。その前に昼食。『信州庵』というお蕎麦屋さんでちらし寿司セットを食べた。お蕎麦がとってもおいしかった。ちらし寿司はもう少しお酢をきかせて欲しかった。
映画のチケットを買った。3時半に始まる。一旦、家に帰ってもいいが、本を読んだり買い物をして時間を潰すことにした。
書店でこれを買った。著者の小泉悠さんは、ウクライナの戦争が始まってから、よくテレビに出演されている。本物の専門家に見えたのでこの本を選んだ。選択は正しかったようだ。
近鉄デパートのソファーや喫茶店で読んだがすぐに疲れてしまった。やはりショッピングの方が楽しい。
ピンクの夏用の帽子を買った。いっぱいあるのに。
近鉄デパートの『中川政七商店』で草木染めのストールを買った。『中川政七商店』は奈良の猿沢池の近くに本店がある。素敵な工芸品を売っている。
このグラスも一目で気に入り、買ってしまった。産地は長野県。
近鉄デパートの『中川政七商店』で草木染めのストールを買った。『中川政七商店』は奈良の猿沢池の近くに本店がある。素敵な工芸品を売っている。
このグラスも一目で気に入り、買ってしまった。産地は長野県。
さあ、いよいよ映画『怪物』が始まる。カンヌで脚本賞とクィア・パルム賞を取った作品だ。ほぼ満席だった。
監督:是枝裕和、脚本:坂元裕二、音楽:坂本龍一。それだけでも興奮するが、キャスティングもすごい。どのシーンも丁寧に作られていて、観ている方も見逃すまいと思って真剣に観る。終わってもしばらく立ち上がる人はいなかった。
テーマは「自分の見た物が全てとは限らない」「だれもが怪物になりうる」ということなのだろうか。観たあとにあれこれ考えてしまう映画だった。パンフレットを買った。
映画の中で、5年生の少年がいじめられている。私が経験したイジメを思い出してしまった。ケンジくんより3学年下の生徒を担任した時のことだった。どうもA君がいじめられているようだった。それを仄めかしてくれた女子生徒もいた。夜、クラス全員に電話をして、A君がいじめられていないか聞いた。今のように携帯が普及していなかった頃の話だ。生徒たちは答えにくそうにしていたが、B君とC君がいじめているようだった。B君とC君がイジメをはっきり認めて謝ることはなかったが、B君の彼女が「いじめるような男とは付き合わない。」ときっぱり言ってくれたので、イジメ問題は一応解決した。生徒指導部長には相談したが、管理職には言わなかった。おおごとにせずに収めたいという気持ちがあった。保身に走った。イジメをしたのは二人だけではなかったかもしれないし、クラスの者もイジメだと思った生徒もいれば、そうでないと思った生徒もいたと思う。A君が被害者でB、C君が悪人だと決めつけるのもどうかなと思う。でも当時は、そんな風に考える余裕はなかった。多くの生徒を傷つけてしまったかもしれない。私が『怪物』だったかもしれない。