年上の刑務官が宙を跳んだとき、スローモーションを見ているようだった。
太った男の悪い方の足を後ろから蹴りいれた。
男の足は抵抗も反動もなく折れた。
そのまま男は暗い通路に臥して倒れた。
折れた男の足が悲鳴をあげるようにくるくると回るように宙を舞った。
呆然と事の成り行きを見ていた僕は我にかえり、パートトナーの元に向かった。
僕はかなりの距離を走って二人のもとにたどり着いた。
床に転がった収監者は残った一本の足と両手でクモのように地面を這いつくばっていた。
折れて飛んだ片足を取りに行こうとしている。
僕はパートナーを見た。
襟をなおし、袖のボタンを留めなおして涼しい顔をしていた。
「おまえは戦場で人を殺したことがあるか?」
会話すらしなかったパートナーが少し饒舌になっていた。
「……いいえ」
ゲームの中でなら何人も殺したけど、現実には人を殺したりしていない
僕はきっぱりと答えた。
「それと同じだ」
パートナーは目の前の独房の扉を開けた。
そして転がっている男の片足を拾い上げ、扉の向こう側に放り込んだ。
義足だった。
片足の男は3本の手足で自分の足を求めて扉の中に入った。
パートナーは男が中に入るなり扉を締めて言った。
「ここでは効率が優先される」
彼は僕の耳元で小声で続けて言った。「これはテストなんだ」
「テスト?」
「卵運びのテストだ」
「卵運び?」
「ゾルタクスゼイアンの卵運び」年上のパートナーは誰にも聞かれないように耳元で囁いた。
「……」
「戦場で撃ち合うことで評価されるわけじゃない」
――吉高浩司――
太った男の悪い方の足を後ろから蹴りいれた。
男の足は抵抗も反動もなく折れた。
そのまま男は暗い通路に臥して倒れた。
折れた男の足が悲鳴をあげるようにくるくると回るように宙を舞った。
呆然と事の成り行きを見ていた僕は我にかえり、パートトナーの元に向かった。
僕はかなりの距離を走って二人のもとにたどり着いた。
床に転がった収監者は残った一本の足と両手でクモのように地面を這いつくばっていた。
折れて飛んだ片足を取りに行こうとしている。
僕はパートナーを見た。
襟をなおし、袖のボタンを留めなおして涼しい顔をしていた。
「おまえは戦場で人を殺したことがあるか?」
会話すらしなかったパートナーが少し饒舌になっていた。
「……いいえ」
ゲームの中でなら何人も殺したけど、現実には人を殺したりしていない
僕はきっぱりと答えた。
「それと同じだ」
パートナーは目の前の独房の扉を開けた。
そして転がっている男の片足を拾い上げ、扉の向こう側に放り込んだ。
義足だった。
片足の男は3本の手足で自分の足を求めて扉の中に入った。
パートナーは男が中に入るなり扉を締めて言った。
「ここでは効率が優先される」
彼は僕の耳元で小声で続けて言った。「これはテストなんだ」
「テスト?」
「卵運びのテストだ」
「卵運び?」
「ゾルタクスゼイアンの卵運び」年上のパートナーは誰にも聞かれないように耳元で囁いた。
「……」
「戦場で撃ち合うことで評価されるわけじゃない」
――吉高浩司――