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シャーロック・ホームズ氏に次いで著名な探偵といえば、ベルギー出身のエルキュール・ポワロ氏の名前が浮かび上がってきます。
今回は、ポワロ氏のドラマについてのレヴューです。
グラナダTVが、S・ホームズのドラマ化に史上最も成功したとするならば、H・ポワロのドラマ化に史上最も成功したといえるのが、英国LWT制作によるデヴィッド・スーシェ主演の『Poirot』でしょう。
( 画像は、Poirot-Death on the Nileの番組宣伝の1シーンを転載。
画像右がポワロ役のデヴィッド・スーシェ。左が、その相棒ヘイスティングス大尉役のヒュー・フレイザー)
故アガサ・クリスティ女史の創造した、もっともユニークな探偵、それがエルキュール・ポワロ。
1989年から制作が開始され、TVドラマとして全5シーズン46話を放送し、今なおTVスペシャル版が制作され続け、原作すべてのドラマ化を目指しているシリーズです。
日本では御大NHK総合で『名探偵ポワロ』の邦題で放送されました。
ポワロについては、もはや何をかいわんやですね。
ホームズ物語と同等に、日本でも翻訳された版が次々と出版されています。最近では、ハヤカワ・ミステリ文庫から、新版が刊行されました。
( 個人的には旧版のほうが表紙といい、本文の文字の大きさといい、好みだったのですが)
エルキュール・ポワロ。
第一次大戦時、ベルギーから英国に亡命してきたベルギー人。フランス語訛りで英語を話すため、よくフランス人と勘違いされるが、そんな時に彼は、
「ノン!ポワロはフランス人ではありません。ベルギー人です!」
・・・と本気で怒る愛国者ぶりを見せる。
なかなかの美食家であり、かつ洒落者でもあり、時として滑稽なほどに自分のライフスタイルを貫く人。
興奮したり熱中してくると、フランス語が飛び出す。
ノン、ノン!(違いますよ!)
トレヴィアン!(すばらしいですね!)
モン・デュー!(何ということでしょう!)
・・・などなど。
よりエレガントに、知的で、合理的に。
灰色の脳細胞を働かせて、今日もポワロは事件を解決していく。
ドラマは、ポワロが活躍したという20世紀初期の英国ロンドンのモダンな雰囲気を十二分に再現。ドラマを観ていると、大戦前の斜陽の大英帝国にタイムスリップしたかのよう。登場人物の衣装やヘアスタイル、ロケ地に至るまで、すばらしい気配りがなされています。
細部に至る 「こだわり」。
それは主演のスーシェ氏も同じです。グラナダ版ホームズを演じたブレット氏も同じだったそうですが、スーシェ氏も原作から収集した「メモ帳」を持って、撮影の合間に読み返し、原作の描写により近い演技をしているのだそうです。
原作とは異なり、ドラマの脚本上、原作以上にヘイスティングス大尉やポワロの秘書ミス・レモンの活躍の幅が増えているのも見所のひとつです。
彼らを動かしたおかげで、物語の展開が、より生き生きとしています。ドラマのアレンジの程度を原作と照らし合わせていくのも、鑑賞時の楽しみのひとつとなっています。
私がポワロを好きな理由、それはD.スーシェ演じるポワロのたまらない魅力にあります。
知的で聡明、それに優しさ、包容力、女性への気遣い。これらは世の男性陣に是非、倣っていただきたい!(笑)
こんなシーンがあります。
『雲をつかむ死』("Death in the Clouds")の回。このエンディングで、ポワロの優しさがよく顕れています。
恋仲にあった男性が殺人犯だったと分かり、泣きくれるジェーン・グレイ嬢。
好きだった相手は、実は結婚しており、金のためにその妻を殺していた。
自分は騙されただけだったの?・・・そう、泣きくれる彼女にポワロは話しかけるのです。
「あなたは彼が 好きだった。彼も、あなたが 好きだったと思ったのですね?
いいえ、それは違います」
ジェーンは、わかっている。自分の勝手な思い込みだったのは、わかっているのです・・・とばかりに泣きながら彼の言葉に頷く。
しかし、ポワロはこう続けるのです。
「彼は、あなたを “好き” だったのではなく・・・ “愛して” いたのです。
彼の眼が、そう 語っていました」
好きではなく、より強く深い「愛」があったのだと。罪は犯したけれども、あなたたちの間には愛があったのですよ、そう優しく言うポワロとポワロの言葉に涙を零すジェーンのシーンが、今も私の心にあたたかく残っています。
( 2010/02/20 一部訂正 )
今回は、ポワロ氏のドラマについてのレヴューです。
グラナダTVが、S・ホームズのドラマ化に史上最も成功したとするならば、H・ポワロのドラマ化に史上最も成功したといえるのが、英国LWT制作によるデヴィッド・スーシェ主演の『Poirot』でしょう。
( 画像は、Poirot-Death on the Nileの番組宣伝の1シーンを転載。
画像右がポワロ役のデヴィッド・スーシェ。左が、その相棒ヘイスティングス大尉役のヒュー・フレイザー)
故アガサ・クリスティ女史の創造した、もっともユニークな探偵、それがエルキュール・ポワロ。
1989年から制作が開始され、TVドラマとして全5シーズン46話を放送し、今なおTVスペシャル版が制作され続け、原作すべてのドラマ化を目指しているシリーズです。
日本では御大NHK総合で『名探偵ポワロ』の邦題で放送されました。
ポワロについては、もはや何をかいわんやですね。
ホームズ物語と同等に、日本でも翻訳された版が次々と出版されています。最近では、ハヤカワ・ミステリ文庫から、新版が刊行されました。
( 個人的には旧版のほうが表紙といい、本文の文字の大きさといい、好みだったのですが)
エルキュール・ポワロ。
第一次大戦時、ベルギーから英国に亡命してきたベルギー人。フランス語訛りで英語を話すため、よくフランス人と勘違いされるが、そんな時に彼は、
「ノン!ポワロはフランス人ではありません。ベルギー人です!」
・・・と本気で怒る愛国者ぶりを見せる。
なかなかの美食家であり、かつ洒落者でもあり、時として滑稽なほどに自分のライフスタイルを貫く人。
興奮したり熱中してくると、フランス語が飛び出す。
ノン、ノン!(違いますよ!)
トレヴィアン!(すばらしいですね!)
モン・デュー!(何ということでしょう!)
・・・などなど。
よりエレガントに、知的で、合理的に。
灰色の脳細胞を働かせて、今日もポワロは事件を解決していく。
ドラマは、ポワロが活躍したという20世紀初期の英国ロンドンのモダンな雰囲気を十二分に再現。ドラマを観ていると、大戦前の斜陽の大英帝国にタイムスリップしたかのよう。登場人物の衣装やヘアスタイル、ロケ地に至るまで、すばらしい気配りがなされています。
細部に至る 「こだわり」。
それは主演のスーシェ氏も同じです。グラナダ版ホームズを演じたブレット氏も同じだったそうですが、スーシェ氏も原作から収集した「メモ帳」を持って、撮影の合間に読み返し、原作の描写により近い演技をしているのだそうです。
原作とは異なり、ドラマの脚本上、原作以上にヘイスティングス大尉やポワロの秘書ミス・レモンの活躍の幅が増えているのも見所のひとつです。
彼らを動かしたおかげで、物語の展開が、より生き生きとしています。ドラマのアレンジの程度を原作と照らし合わせていくのも、鑑賞時の楽しみのひとつとなっています。
私がポワロを好きな理由、それはD.スーシェ演じるポワロのたまらない魅力にあります。
知的で聡明、それに優しさ、包容力、女性への気遣い。これらは世の男性陣に是非、倣っていただきたい!(笑)
こんなシーンがあります。
『雲をつかむ死』("Death in the Clouds")の回。このエンディングで、ポワロの優しさがよく顕れています。
恋仲にあった男性が殺人犯だったと分かり、泣きくれるジェーン・グレイ嬢。
好きだった相手は、実は結婚しており、金のためにその妻を殺していた。
自分は騙されただけだったの?・・・そう、泣きくれる彼女にポワロは話しかけるのです。
「あなたは彼が 好きだった。彼も、あなたが 好きだったと思ったのですね?
いいえ、それは違います」
ジェーンは、わかっている。自分の勝手な思い込みだったのは、わかっているのです・・・とばかりに泣きながら彼の言葉に頷く。
しかし、ポワロはこう続けるのです。
「彼は、あなたを “好き” だったのではなく・・・ “愛して” いたのです。
彼の眼が、そう 語っていました」
好きではなく、より強く深い「愛」があったのだと。罪は犯したけれども、あなたたちの間には愛があったのですよ、そう優しく言うポワロとポワロの言葉に涙を零すジェーンのシーンが、今も私の心にあたたかく残っています。
( 2010/02/20 一部訂正 )