熊じぃの戯言

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U-19最新情報【第2報-2】

2006-10-28 11:45:49 | 五輪
■チームにはJリーグで戦う選手がそろう

 決戦の地・インドの環境も過酷だ。バンガロールはインドの中でも比較的整備された都市といえるが、バイクやリクシャー(ほろ付きのオート三輪タクシー)の排気ガス公害は深刻で、騒音も日本人には想像を絶するレベル。加えてプレー環境も芳しくない。
 10月11日にはオシムジャパンが同じ街でインド戦を消化したが、トレーニング場として用意されたスタジアムは芝がボロボロ。土がむき出しのところもかなりあった。試合会場のスリーカンテラーバ・スタジアムは少し状況はいいものの、日本の選手たちが普段戦っているピッチとは程遠い。照明灯が消えたり、野良犬がピッチに飛び出してくるなど、予想外の出来事も起きた。こういった環境でも持てる力を100パーセント発揮し切れなければ、カナダへの道は遠ざかってしまうのだ。

 困難な道に挑もうとする吉田ジャパンだが、激戦を戦い抜けるだけの人材はいる。今回のメンバー21人の中には、9月のA代表のサウジアラビア・イエメン遠征に招集された梅崎司(大分)をはじめ、Jリーグでレギュラーを勝ち取っている柳川雅樹(神戸)、内田篤人(鹿島)、田中亜土夢(新潟)、柏木陽介(広島)らがいる。
 梅崎は、フル代表経験を持ちながら1998年アジアユースに出場した小野伸二(浦和)のような存在といえる。「今年は試合が多くて疲れがたまっている」と、本人はコンディション面の不安を訴えていたが、彼がチームを力強く引っ張らなければ何も始まらない。キャプテンの福元洋平(大分)も今シーズンは出たり出なかったりだが、昨季からJの出場経験を地道に積み上げてきた選手だ。
 こうした主力がそろってトレーニングする時間が限られていたことは、吉田監督にとっても頭の痛い部分だろうが、彼らがJの舞台で培った経験値があることは心強いはず。昨年の1次予選以降、吉田ジャパンは国際経験不足を補うため、カタールやインド、タイ、オーストラリア、サウジアラビアとアジア各国を転戦。タフなメンタリティーを養ってきた。そんな経験も総合力アップに寄与しているだろう。


■人材がそろう中盤と軸不在のFW陣

 今回のチームの特徴を簡単に言うと、守備の手堅さと中盤の安定感が挙げられる。
 最終ラインは福元を軸に1次予選のレギュラーだった槙野智章(広島)と柳川が競う形だ。状況によってはボランチの青山隼(名古屋)もセンターバックができるだけに、真ん中を担える人材はそこそこいる。右サイドはJリーグで売り出し中の内田、左サイドは堤俊輔(浦和)で、左がやや守備的な形になる。この4バックがどれだけ相手の攻撃を跳ね返すのか。それが1つのポイントになる。

 中盤はJリーグでの経験豊富な選手がそろう。攻守の要であるボランチは青山と柏木が担い、攻撃的な位置に梅崎、田中、山本真希(清水)あたりが入る。1年前までは山本がこの年代でずば抜けた存在感を示していたが、彼が清水でプロの壁にぶつかっている間にほかの選手たちが急成長し、山本もレギュラーが危うい状況になった。
 ただ、競争が激化するのはチームにとっていいこと。「中盤はJで実績を積んでいる選手が多いから安心して見ていられる」と指揮官も言う。このタレント集団が日本の命運を握ることになる。

 問題はFW陣だ。10月中旬に新潟県・十日町で行われた国内最終調整合宿には194センチの長身を誇るハーフナー・マイク(横浜FM)やU-21代表にも選ばれた森島康仁(C大阪)、「和製アンリ」の呼び声高い伊藤翔(中京大中京高)ら7人が呼ばれ、彼ら3人にガッツ溢れるプレースタイルがウリの河原和寿(新潟)と左利きのテクニシャン・青木孝太(千葉)の2人を加えたメンバーが残った。
 彼ら5人はそれぞれ違った特徴を持っており、吉田監督は対戦相手や環境に応じて選手を入れ替える考えだろう。パワープレーが必要な場面ならハーフナーと森島を並べ、スピードで勝負したいなら伊藤と河原を使うなど、合宿でもさまざまな組み合わせを試していた。

 気になるのは、軸になる存在がいないことだ。99年ナイジェリア大会の高原直泰(フランクフルト)、2003年UAE大会の坂田大輔(横浜FM)、2005年大会の平山相太(FC東京)のように、日本がある程度の結果を残したチームには、必ず大黒柱となるFWがいた。今回のチームから傑出した存在が出現しなければ、日本は苦戦を強いられることになるだろう。



■初戦の北朝鮮戦にピークを

 チームの起爆剤になり得るスーパーサブの不在も懸念材料だ。これまで吉田監督は昨年の北朝鮮戦でゴールを奪った安田理大(G大阪)をその役割に据えてきた。しかし、安田はJリーグに出るチャンスを得られず、ここ最近は不調続き。指揮官も「安田はイザという時の爆発力を持っていて、起爆剤になり得るが、悪かったら外すしかない。競争意識を常に持たせないとチーム全体が良くならないから」と、あえてメンバーから外した。その決断が是と出るか、非と出るか……。

 もう1つ課題は、チームとしての好不調の波が大き過ぎること。昨年の北朝鮮戦のように、歯車がかみ合っている時は緊張感あるアグレッシブな戦いを見せるが、悪い時はどん底まで落ちてしまう。今年夏のSBSカップの静岡選抜戦などはその典型的な例で、はた目から見ても出来が悪過ぎた。「悪いなら悪いなりにどこまで踏ん張れるか。勝負の懸かった試合ではそういう手堅い戦いができないといけない」と吉田監督も強調するが、どうしても安定した試合運びができない。
 キャプテンの福元も「まだチーム全体に厳しさが足りない。アジアユース開幕までに細かい部分をもっと話し合う必要がある。大事なところで絶対にミスをしない戦いをしないといけない」と気を引き締めていた。

 いずれにせよ、こうした不安材料を克服し、初戦の北朝鮮戦までにチームを100パーセントに仕上げること。それが7大会連続世界切符獲得への第一歩となる。「今回は初戦にピークを合わせる。そこを勝ち抜くのがすべての始まりだ。北朝鮮戦を考えていろんな準備をしてきたつもり」と吉田監督も話していただけに、どこまで完成度の高いチームを作ってくるのか。初戦がその後の展開を大きく左右するといっても過言ではない。

<了>

元川悦子/Etsuko Motokawa
1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。柳沢敦、中村俊輔ら「中田英寿以降の世代」の成長過程を高校時代から見続けており、その取材活動を現在も継続中。2000年シドニー五輪の頃からは海外サッカーにも本格的に目覚め、本場の熱気に浮かされたようにここ数年、年間100日以上を欧州などでの取材活動(若者でもやらないような冒険旅行?)に当てている。著書に「U-22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「ワールドカップ勝利への最終提言」(徳間書店)、「蹴音」(主婦の友社)がある。目下のテーマは女性にサッカーの魅力を伝えること






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