第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたサスペンス。事件や事故現場に急行して捉えた映像をテレビ局に売る報道パパラッチとなった男が、刺激的な映像を求めるあまりに常軌を逸していく。脚本家として『ボーン・レガシー』などを手掛けてきたダン・ギルロイが、本作で監督に初挑戦。『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホールを筆頭に、『マイティ・ソー』シリーズなどのレネ・ルッソ、『2ガンズ』などのビル・パクストンらが出演。報道の自由のもとで揺らぐ倫理という重いテーマが、観る者の胸をざわつかせる。
<感想>生々しい犯罪現場や事故の映像を追い求め、夜の街を駆けずりまわる映像パパラッチ、通称ナイトクローラー。視聴率が取れる刺激的な“画”を追い求める男の狂気を描き、現代のメディアの闇を浮き彫りにするクライム・スリラー。
眠らない街、ロサンジェルス。ルイスを演じるジェイク・ギレンホールが12キロの減量を敢行して狂気の主人公を怪演している。共演は監督の奥様でもあるレネ・ルッソに、「アポロ13」のビル・パクストンらが。
主人公のルイスは友達も家族もなく、ネットとテレビ漬けの毎日を送っている。窃盗行為で生計を立てる彼が、「その仕事」の存在を知ったのは、交通事故の現場に遭遇した時だった。
スクープ映像をテレビ局に売って稼ぐ報道パパラッチ、通称ナイトクローラー。ルイスは盗品の自転車と交換でビデオカメラと警察無線の盗聴器を手に入れ、一人でナイトクローラーの仕事を始める。
警察無線を傍受したルイスは、カージャックの被害者の撮影に成功する。同業者を出し抜き、女性TVディレクターのニーナ(レネ・ルッソ)に映像を買い取ってもらう。
刺激的な画が欲しいという彼女の言葉は、ルイスの心に火を付ける。本格的に事業を始めた彼は助手を雇い、現場から現場へと飛び回る日々を始める。
ルイスには天性の要領の良さと、突き抜けた行動力があった。高く売れる画のためなら、不法侵入も現場の細工も辞さない彼は、特ダネを次つぎと手に入れていく。だが、ネットで得た知識を狂信する彼の行動は、次第にエスカレートしていく。独占契約と引き換えに、ニーナとの関係まで強要するようになる。そして、ある強盗殺人の現場で、彼の狂気は禁断の一線を越えてしまう。
片手にビデオカメラのハンドルを握り、腰を落として重心を低くしながら足音を潜めて小走りで現場にすり寄るルイス。その姿勢が、フリーの報道パパラッチという職業の総てを物語っている。
どんなスクープ映像を、ものにしても常につきまとう浅ましさ。顔のこけた頬に、目ばかりがぎょろっと光らせた不気味なギレンホール。映画の見せ場がシンクロした真夜中のカーチェイスが、鮮烈に残る光景が美しい。
何者でもなかった男が、カメラ一つで成り上がる胡散臭さと、欲望に度胸。一刻も早く現場に着きたい彼の必然性と、他のカメラマンよりも早く、よりショッキングな映像を撮った方が高く売れると気づき、犯罪ギリギリの行為に手を染める、しかもそれが成功していくのだ。
日常を戦場として撮影していく変質者といえばいいのだろうか。まぁ、嫌な作品で、二度と観たくはないと思った。スクープ映像をテレビ局に売りつける素人カメラマンは、迫真的な死の瞬間を完璧に撮る妄想に取り憑かれていく。
ただただ、即物的なアングルを求める。終盤には、演出された警官との銃撃場面が撮られるのだが、ここだけは悪くないようだ。
それは、よりショッキングな映像を観たいという人間の否定できない心理と、モラルを象徴しているようだから。それはインターネット上で起きている現在のカルチャーそのものであり、真実かどうか、というよりも、よりショッキングであればいいという風潮も象徴しているからだと思う。
2015年劇場鑑賞作品・・・214映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>生々しい犯罪現場や事故の映像を追い求め、夜の街を駆けずりまわる映像パパラッチ、通称ナイトクローラー。視聴率が取れる刺激的な“画”を追い求める男の狂気を描き、現代のメディアの闇を浮き彫りにするクライム・スリラー。
眠らない街、ロサンジェルス。ルイスを演じるジェイク・ギレンホールが12キロの減量を敢行して狂気の主人公を怪演している。共演は監督の奥様でもあるレネ・ルッソに、「アポロ13」のビル・パクストンらが。
主人公のルイスは友達も家族もなく、ネットとテレビ漬けの毎日を送っている。窃盗行為で生計を立てる彼が、「その仕事」の存在を知ったのは、交通事故の現場に遭遇した時だった。
スクープ映像をテレビ局に売って稼ぐ報道パパラッチ、通称ナイトクローラー。ルイスは盗品の自転車と交換でビデオカメラと警察無線の盗聴器を手に入れ、一人でナイトクローラーの仕事を始める。
警察無線を傍受したルイスは、カージャックの被害者の撮影に成功する。同業者を出し抜き、女性TVディレクターのニーナ(レネ・ルッソ)に映像を買い取ってもらう。
刺激的な画が欲しいという彼女の言葉は、ルイスの心に火を付ける。本格的に事業を始めた彼は助手を雇い、現場から現場へと飛び回る日々を始める。
ルイスには天性の要領の良さと、突き抜けた行動力があった。高く売れる画のためなら、不法侵入も現場の細工も辞さない彼は、特ダネを次つぎと手に入れていく。だが、ネットで得た知識を狂信する彼の行動は、次第にエスカレートしていく。独占契約と引き換えに、ニーナとの関係まで強要するようになる。そして、ある強盗殺人の現場で、彼の狂気は禁断の一線を越えてしまう。
片手にビデオカメラのハンドルを握り、腰を落として重心を低くしながら足音を潜めて小走りで現場にすり寄るルイス。その姿勢が、フリーの報道パパラッチという職業の総てを物語っている。
どんなスクープ映像を、ものにしても常につきまとう浅ましさ。顔のこけた頬に、目ばかりがぎょろっと光らせた不気味なギレンホール。映画の見せ場がシンクロした真夜中のカーチェイスが、鮮烈に残る光景が美しい。
何者でもなかった男が、カメラ一つで成り上がる胡散臭さと、欲望に度胸。一刻も早く現場に着きたい彼の必然性と、他のカメラマンよりも早く、よりショッキングな映像を撮った方が高く売れると気づき、犯罪ギリギリの行為に手を染める、しかもそれが成功していくのだ。
日常を戦場として撮影していく変質者といえばいいのだろうか。まぁ、嫌な作品で、二度と観たくはないと思った。スクープ映像をテレビ局に売りつける素人カメラマンは、迫真的な死の瞬間を完璧に撮る妄想に取り憑かれていく。
ただただ、即物的なアングルを求める。終盤には、演出された警官との銃撃場面が撮られるのだが、ここだけは悪くないようだ。
それは、よりショッキングな映像を観たいという人間の否定できない心理と、モラルを象徴しているようだから。それはインターネット上で起きている現在のカルチャーそのものであり、真実かどうか、というよりも、よりショッキングであればいいという風潮も象徴しているからだと思う。
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