『苦役列車』の山下敦弘監督と前田敦子が再びタッグを組み、実家で自堕落な日々を過ごすヒロインの生活を切り取った人間ドラマ。東京からUターンして実家に戻るものの就職もせず、家業を手伝うでもなくただ無為な毎日をやり過ごす若者が、やがて小さな第一歩を踏み出すまでを描写する。『マイ・バック・ページ』などの康すおんや、『アウトレイジ』シリーズなどの音楽を担当した鈴木慶一らが共演。ふがいないが、どこか憎めない主人公の成長物語が共感を呼ぶ。
あらすじ:東京の大学を卒業した23歳のタマ子(前田敦子)は、父親がスポーツ用品店を営む甲府に戻って来る。彼女は特に就職活動をするわけでもなく、ほぼ毎日惰眠をむさぼり、ぐうたらな日々を送っていた。父親に仕事を探せとせっつかれても聞く耳も持たず、たまに起きているときはマンガやゲームに没頭していたが……。
<感想>決してファンではないが、主人公は元AKB48の前田敦子ちゃん。お笑い芸人のキンタロウを思い浮かべるが、ただ美しく、可愛いだけではなく根性のある女優魂見せつけてくれるというので鑑賞した。
東京の大学を卒業したものの、山梨の実家へ戻り、自堕落な生活を送る寄生虫、タマ子である。そのダメっぷりの描写は、映画のファーストショットに現れる。惰眠をむさぼるタマ子のお尻の大写しから始まる。つまりお尻から起き上がるわけ。敦ちゃんがボサボサ頭でジャージ姿でも、画になる女優力はやはり尋常じゃないです。
堂々たるモラトリアム宣言映画なのである。ところが敦ちゃんの食っちゃ寝のグータラぶりに妙なリアル感があり、こんなニート女が実在するに違いないと思えてくる。いるんですよね、最近の男も女も、大学出て就職が決まらず実家で寄生虫している子供たちがね。自分の子供だったら、絶対に叱り飛ばして、アルバイトでも何でもいいから働いて、家から出て行ってくれと言いたい。
ところが、親が片親で娘に甘いというか、田舎町でスポーツ用品店を経営しながら、料理や掃除、洗濯など家事を豆にこなす父親との対比が面白いときた。
テレビのニュースを見ながら「ダメだな、日本は」とぬかすナメた態度のタマ子に、父親が「ダメなのは日本じゃなくてお前だ」という父親の苦言に共感する。
しかしだ、痛いところを突かれても、「その時が来たら動くわよ、私だって」と逆ギレする。「何時なんだよ、」と追い討ちをかけられると、「少なくとも、今ではない」とこうのたもう。それもいけしゃあしゃあと。父親の問いかけに言葉ではなく、ひたすら舌打ちで返すというシーンもあったりする。
中盤くらいで、タマ子がなぜここまでズボラになったのか、やがていろんなものが見えてくるんですね。彼女がアゴで使う中学生、その弟分との関係性にもいろいろ裏があって面白い。
エリック・ロメールの連作「四季の物語」4部作もかくやの、人生“春夏秋冬”ストーリー。変わりゆく季節に応じて、タマ子の心の表情も移ろっていく。秋・冬編を撮影したのは黒沢清の諸作でも知られる芦澤明子。春・夏編は、「リンダリンダリンダ」「苦役列車」の池内義浩。
いつも高度な仕事ぶりの安宅紀史の美術。ラストを飾る星野源の主題歌「季節」もとてもマッチしていて沁みいる。
それで、これは監督が、女優・前田敦子を輝かせる隠し駒を握ってしまったのだろう。単純に可愛さはハンパないし、ぐうたらも孤独も漫画好きも、彼女と掛け合わされることで、内に秘めたる鬱屈の大きさを思わせ、切なさすら漂わせてくれる。
二人の関係は父親の再婚話をめぐってしだいにシリアスになり、娘の自立が親の自立につながるところなんか納得ですよ。
ラストの父と娘の決断は、それはほんの些細なことなんだけど、そこに至るまでのテンポのまま、とりわけ夏編での長回し、富田靖子を相手にした演技が圧巻です。夏のアイスのごとく自然と溶けて余韻を残すところがいい。
きちんと面白みに繋げているし、80分以下の尺ながらも、四季の移ろいと長さをしっかり感じさせ、子離れできない“親のモラトリアム”の物語にも転じさせていく語り口が印象的でもある。
エンドクレジット後に映し出される、山下監督は敦ちゃんが可愛くてしかたないんだろうなぁ、と思わせるフッテージもいい。
2014年劇場鑑賞作品・・・6 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:東京の大学を卒業した23歳のタマ子(前田敦子)は、父親がスポーツ用品店を営む甲府に戻って来る。彼女は特に就職活動をするわけでもなく、ほぼ毎日惰眠をむさぼり、ぐうたらな日々を送っていた。父親に仕事を探せとせっつかれても聞く耳も持たず、たまに起きているときはマンガやゲームに没頭していたが……。
<感想>決してファンではないが、主人公は元AKB48の前田敦子ちゃん。お笑い芸人のキンタロウを思い浮かべるが、ただ美しく、可愛いだけではなく根性のある女優魂見せつけてくれるというので鑑賞した。
東京の大学を卒業したものの、山梨の実家へ戻り、自堕落な生活を送る寄生虫、タマ子である。そのダメっぷりの描写は、映画のファーストショットに現れる。惰眠をむさぼるタマ子のお尻の大写しから始まる。つまりお尻から起き上がるわけ。敦ちゃんがボサボサ頭でジャージ姿でも、画になる女優力はやはり尋常じゃないです。
堂々たるモラトリアム宣言映画なのである。ところが敦ちゃんの食っちゃ寝のグータラぶりに妙なリアル感があり、こんなニート女が実在するに違いないと思えてくる。いるんですよね、最近の男も女も、大学出て就職が決まらず実家で寄生虫している子供たちがね。自分の子供だったら、絶対に叱り飛ばして、アルバイトでも何でもいいから働いて、家から出て行ってくれと言いたい。
ところが、親が片親で娘に甘いというか、田舎町でスポーツ用品店を経営しながら、料理や掃除、洗濯など家事を豆にこなす父親との対比が面白いときた。
テレビのニュースを見ながら「ダメだな、日本は」とぬかすナメた態度のタマ子に、父親が「ダメなのは日本じゃなくてお前だ」という父親の苦言に共感する。
しかしだ、痛いところを突かれても、「その時が来たら動くわよ、私だって」と逆ギレする。「何時なんだよ、」と追い討ちをかけられると、「少なくとも、今ではない」とこうのたもう。それもいけしゃあしゃあと。父親の問いかけに言葉ではなく、ひたすら舌打ちで返すというシーンもあったりする。
中盤くらいで、タマ子がなぜここまでズボラになったのか、やがていろんなものが見えてくるんですね。彼女がアゴで使う中学生、その弟分との関係性にもいろいろ裏があって面白い。
エリック・ロメールの連作「四季の物語」4部作もかくやの、人生“春夏秋冬”ストーリー。変わりゆく季節に応じて、タマ子の心の表情も移ろっていく。秋・冬編を撮影したのは黒沢清の諸作でも知られる芦澤明子。春・夏編は、「リンダリンダリンダ」「苦役列車」の池内義浩。
いつも高度な仕事ぶりの安宅紀史の美術。ラストを飾る星野源の主題歌「季節」もとてもマッチしていて沁みいる。
それで、これは監督が、女優・前田敦子を輝かせる隠し駒を握ってしまったのだろう。単純に可愛さはハンパないし、ぐうたらも孤独も漫画好きも、彼女と掛け合わされることで、内に秘めたる鬱屈の大きさを思わせ、切なさすら漂わせてくれる。
二人の関係は父親の再婚話をめぐってしだいにシリアスになり、娘の自立が親の自立につながるところなんか納得ですよ。
ラストの父と娘の決断は、それはほんの些細なことなんだけど、そこに至るまでのテンポのまま、とりわけ夏編での長回し、富田靖子を相手にした演技が圧巻です。夏のアイスのごとく自然と溶けて余韻を残すところがいい。
きちんと面白みに繋げているし、80分以下の尺ながらも、四季の移ろいと長さをしっかり感じさせ、子離れできない“親のモラトリアム”の物語にも転じさせていく語り口が印象的でもある。
エンドクレジット後に映し出される、山下監督は敦ちゃんが可愛くてしかたないんだろうなぁ、と思わせるフッテージもいい。
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