「アリス・イン・ワンダーランド」のティム・バートン監督が無名時代に撮った同名短編作品をモチーフに、少年と犬の絆を描くモノクロ3Dストップモーション・アニメ。声の出演は「ホーム・アローン」のキャサリン・オハラ、「マーズ・アタック!」のマーティン・ショート、「エド・ウッド」のマーティン・ランドー、「シザーハンズ」のウィノナ・ライダー。
あらすじ:小さな街ニュー・オランダに暮らす少年ヴィクター(声:チャーリー・ターハン)は、学校から帰ると屋根裏に閉じこもり、科学の実験や映画作りに熱中していた。そんな彼の隣にはいつも最高の相棒──愛犬のスパーキーがいる。ヴィクターの映画に主演することを誇りに思うスパーキーは、ヴィクターの母スーザン(声:キャサリン・オハラ)や父エドワード、そしてヴィクターと一緒に完成した映画を観ることが何よりの楽しみであった。
ところがある日、不幸な交通事故がスパーキーの命を奪ってしまう。唯一の親友の死を受け入れられないヴィクターは、ジクルスキ先生(声:マーティン・ランドー)の科学の授業で習った“電気の実験”を応用して、家族にも内緒でスパーキーを生きかえらせることを決意。屋根裏の実験室でヴィクターは、雷のパワーも利用して、ついにスパーキーをつぎはぎだらけの“フラン犬(ケン)”としてよみがえらせる。
だが幸せな日々が戻ってきたのも束の間、スパーキーは自分が死んでいることに気づかぬまま家の外へと出てしまい、その“ありえない姿”をヴィクターのクラスメイトや街の人々に目撃されてしまう。やがて、ヴィクターのアイデアを知った子供たちは次々にペットや動物をよみがえらせ、街は大混乱に陥っていくのだった……。 (作品資料より)
<感想>100%、ティム・バートンのテイストである。ファンには涙もんの新作が完成した。主人公が科学オタクの映画少年という点で、すでにバートン・ワールドが全開、死んだ愛犬を蘇えらせ、町全体がモンスター・パニックに陥る展開には、バートン監督初期の「シザーハンズ」あたりの魅力も詰め込まれていると感じた。
やたら愛くるしい動きや表情をみせる愛犬のスパーキーや、主人公ヴィクターを囲むキモ可愛いキャラが、CGではなく、1コマずつマペットを動かすストップモーション・アニメで描かれており、温もり感も満点です。
「ティム・バートンのコープス・プライド」(05)に続くストップモーション・アニメ、つまり人形アニメ。お話は交通事故で命を落とした愛犬への少年の切なる思いが奇跡を起こすというもの。あまり人形アニメの作者たちが思いつかないストーリーの上、最後の方では日本の怪獣、ガメラまで登場させるサービスにバートンファンはいささか戸惑うものの楽しいですよね。
死んだ愛犬を紙箱に入れて埋める。箱に落ちる土の音。愛犬を亡くした人たちには特に思入れのあるシーンだと思う。
アメリカの一戸建ての家では屋根裏部屋があり、たいがい物置になっているのは「トイ・ストーリー」シリーズでも見る通りで、この作品の中でも主人公のヴィクターの居場所で、お母さんに「こんなに散らかして」などなど言われそうな作業実験をやらかすところにはもってこいの場所。
ここで少年は死んだ愛犬を墓から掘り出して、犬の体を置いて傍らの窓から雷雨の中へと凧を揚げるわけなんですね。これはフランクリンだよ、ってたちまち雷雨が、・・・その衝撃で犬は生き返るんです。
そもそも学校のジクルス先生が、死んだカエルに電気ショックを与える実験をして、ヴィクターにあるひらめきを与えたんですね。生理的にはこのカエルの足が動く場面の方が気持ち悪かったです。
生き返った犬は自分が死んでいたなんて思いもしないから、平常通りに振る舞うのが、まさにフランケンシュタインの怪物を思わせるツギハギ縫い目だらけで、体の背中に水玉模様の布が可愛いよね。水を飲むと縫い合わされた体のあっちこっちから水が漏るさまは本当に滑稽です。
少年のクラスメイトに日本人のトシアキがいるが、とても自然に描かれており、吊目だとか英語が変だとかが一切ないところが、バートンの良識を感じた。その彼はとても競争心が強くて、ヴィクターをライバル視する。いやはやハムスターが包帯でグルグル巻きなんだけど、どこかモスラに似てなくもないのがいい。
他にもネズミがでかくなって狂暴化したり、フシギちゃんの白い猫が蝙蝠を加えてきて、それがとんでも吸血鬼こうもり猫になるなんて思ってもいなかったし、小さい亀が巨大怪獣になるのもご愛嬌ですよね。
この話がいつものバートンタッチと少し違うのは、主役の少年の孤独だろう。彼自身は異状さなどない普通の子どもだが、彼が心を開いていたのは愛犬だけ。クラスメートの方がどこかしらみんな普通じゃない。蘇えった愛犬を見て少年をゆすり始める隣家の少年エドガーの気味悪さなどかなりのもの。まるでせむし男を小さくしたような。
しかし、この状況に付け込んで変な金儲けをたくらむとか、少年に危険な目を遭わせるとかいうような大人の悪役は登場しないのが好感もてた。それにしても、クライマックスの水車小屋での大パニックにしても、もうひとつスカッと観客を納得させる切れ味に乏しかった。
まぁ、子供向けにと思えば、何度も電気ショックで生き返る愛犬なんて楽しすぎるもんね。いろいろ文句つけても、心を揺すられる最後には、犬や猫と楽しく暮らしたことのある人たち、やがて辛い別れをした経験のある人には、主役の気持ちが痛いほど理解できるし、どんな姿であろうと、もう一度会いたいという思いが伝わってきます。
さらにモノクロで3Dなのだが、最近は高い金を払ってまで3D映画を観なくても2Dでも十分に満足です。全編に貫かれるのは少年と犬の絆で、笑って泣ける王道娯楽作品にしあがっている。
2012年劇場鑑賞作品・・・140 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
あらすじ:小さな街ニュー・オランダに暮らす少年ヴィクター(声:チャーリー・ターハン)は、学校から帰ると屋根裏に閉じこもり、科学の実験や映画作りに熱中していた。そんな彼の隣にはいつも最高の相棒──愛犬のスパーキーがいる。ヴィクターの映画に主演することを誇りに思うスパーキーは、ヴィクターの母スーザン(声:キャサリン・オハラ)や父エドワード、そしてヴィクターと一緒に完成した映画を観ることが何よりの楽しみであった。
ところがある日、不幸な交通事故がスパーキーの命を奪ってしまう。唯一の親友の死を受け入れられないヴィクターは、ジクルスキ先生(声:マーティン・ランドー)の科学の授業で習った“電気の実験”を応用して、家族にも内緒でスパーキーを生きかえらせることを決意。屋根裏の実験室でヴィクターは、雷のパワーも利用して、ついにスパーキーをつぎはぎだらけの“フラン犬(ケン)”としてよみがえらせる。
だが幸せな日々が戻ってきたのも束の間、スパーキーは自分が死んでいることに気づかぬまま家の外へと出てしまい、その“ありえない姿”をヴィクターのクラスメイトや街の人々に目撃されてしまう。やがて、ヴィクターのアイデアを知った子供たちは次々にペットや動物をよみがえらせ、街は大混乱に陥っていくのだった……。 (作品資料より)
<感想>100%、ティム・バートンのテイストである。ファンには涙もんの新作が完成した。主人公が科学オタクの映画少年という点で、すでにバートン・ワールドが全開、死んだ愛犬を蘇えらせ、町全体がモンスター・パニックに陥る展開には、バートン監督初期の「シザーハンズ」あたりの魅力も詰め込まれていると感じた。
やたら愛くるしい動きや表情をみせる愛犬のスパーキーや、主人公ヴィクターを囲むキモ可愛いキャラが、CGではなく、1コマずつマペットを動かすストップモーション・アニメで描かれており、温もり感も満点です。
「ティム・バートンのコープス・プライド」(05)に続くストップモーション・アニメ、つまり人形アニメ。お話は交通事故で命を落とした愛犬への少年の切なる思いが奇跡を起こすというもの。あまり人形アニメの作者たちが思いつかないストーリーの上、最後の方では日本の怪獣、ガメラまで登場させるサービスにバートンファンはいささか戸惑うものの楽しいですよね。
死んだ愛犬を紙箱に入れて埋める。箱に落ちる土の音。愛犬を亡くした人たちには特に思入れのあるシーンだと思う。
アメリカの一戸建ての家では屋根裏部屋があり、たいがい物置になっているのは「トイ・ストーリー」シリーズでも見る通りで、この作品の中でも主人公のヴィクターの居場所で、お母さんに「こんなに散らかして」などなど言われそうな作業実験をやらかすところにはもってこいの場所。
ここで少年は死んだ愛犬を墓から掘り出して、犬の体を置いて傍らの窓から雷雨の中へと凧を揚げるわけなんですね。これはフランクリンだよ、ってたちまち雷雨が、・・・その衝撃で犬は生き返るんです。
そもそも学校のジクルス先生が、死んだカエルに電気ショックを与える実験をして、ヴィクターにあるひらめきを与えたんですね。生理的にはこのカエルの足が動く場面の方が気持ち悪かったです。
生き返った犬は自分が死んでいたなんて思いもしないから、平常通りに振る舞うのが、まさにフランケンシュタインの怪物を思わせるツギハギ縫い目だらけで、体の背中に水玉模様の布が可愛いよね。水を飲むと縫い合わされた体のあっちこっちから水が漏るさまは本当に滑稽です。
少年のクラスメイトに日本人のトシアキがいるが、とても自然に描かれており、吊目だとか英語が変だとかが一切ないところが、バートンの良識を感じた。その彼はとても競争心が強くて、ヴィクターをライバル視する。いやはやハムスターが包帯でグルグル巻きなんだけど、どこかモスラに似てなくもないのがいい。
他にもネズミがでかくなって狂暴化したり、フシギちゃんの白い猫が蝙蝠を加えてきて、それがとんでも吸血鬼こうもり猫になるなんて思ってもいなかったし、小さい亀が巨大怪獣になるのもご愛嬌ですよね。
この話がいつものバートンタッチと少し違うのは、主役の少年の孤独だろう。彼自身は異状さなどない普通の子どもだが、彼が心を開いていたのは愛犬だけ。クラスメートの方がどこかしらみんな普通じゃない。蘇えった愛犬を見て少年をゆすり始める隣家の少年エドガーの気味悪さなどかなりのもの。まるでせむし男を小さくしたような。
しかし、この状況に付け込んで変な金儲けをたくらむとか、少年に危険な目を遭わせるとかいうような大人の悪役は登場しないのが好感もてた。それにしても、クライマックスの水車小屋での大パニックにしても、もうひとつスカッと観客を納得させる切れ味に乏しかった。
まぁ、子供向けにと思えば、何度も電気ショックで生き返る愛犬なんて楽しすぎるもんね。いろいろ文句つけても、心を揺すられる最後には、犬や猫と楽しく暮らしたことのある人たち、やがて辛い別れをした経験のある人には、主役の気持ちが痛いほど理解できるし、どんな姿であろうと、もう一度会いたいという思いが伝わってきます。
さらにモノクロで3Dなのだが、最近は高い金を払ってまで3D映画を観なくても2Dでも十分に満足です。全編に貫かれるのは少年と犬の絆で、笑って泣ける王道娯楽作品にしあがっている。
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