2015年に公開され、ヒットしたアニメ『心が叫びたがってるんだ。』を実写化。他人と関わることが苦手な男子高校生が、地域向けミュージカルを通して、言葉を発するのを避ける同級生の女子と心の距離を縮める。監督は『近キョリ恋愛』などの熊澤尚人。主演に『黒崎くんの言いなりになんてならない』などの中島健人、共演にNHKの連続テレビ小説「べっぴんさん」などの芳根京子、『スプリング、ハズ、カム』などの石井杏奈らが顔をそろえる。
<感想>アニメ映画「ここさけ」の実写化。といっても、アニメは全然見ていませんから、何も分からずにただ、青春ものと思って鑑賞。オリジナルのファンの方にはハードルが上がるでしょうが、実写では生身の人間ならではの表現によって、この物語のメッセージがより強く浮かび上がっているようですね。
主人公の高校生の成瀬順は、小さい時に自分の言葉が原因で両親が離婚してから、喋ると腹痛が起きるようになり、言葉で会話ができない。幼少時に発した何気ない言葉で、両親を傷つけ家族をバラバラにさせたことから筆談でしか会話できない成瀬順。子供のころって、大人の顔色を見て話すなんてことはしない。だから純真な気持ちで、まさか父親が浮気をしていたことが、娘の口から出た言葉でバレてしまい、そのことで母親が傷つき離婚ということなる。これは、子供が全面的に悪いのではないのに、何故か子供が思っていたことを口にして、大人が困ったことになり、最悪の離婚となる。まさか、その原因を自分が言った言葉で、と真剣に思ってしまい話すことを止めてしまうとは、大人ってダメな人ばかりだ。それでも、いつまでもそのことを引きずって大人になり切れない成瀬が、最後には成長するのを見届ける母親がいたのも良かった。
その吃音ぽい、たどたどしく発する言葉には、力が漲っており、口で言ってしまえば、傷つくこともある。しかし喋らないでは、前には進まないのだ。成瀬の自分の心を表していくのが良かった。
そして、人との付き合いが下手で、本音で話すことができない高校3年生の坂上拓実を演じている中島健人。彼も子供のころに、両親が一人息子の進学のために、ピアノ教室に通っていたのを止めさせることで喧嘩をする両親。そのことで、母親と父親は険悪な仲になり母親は家を出ていき、父親も別に住むようになる。実は坂上拓実も幼少期にそんな両親との別れがあり、祖父母に育てられ彼もネクラの仲間入りなのだ。
ある日彼は、全く接点のないクラスメートの成瀬順に扮している芳根京子と共に、担任教師である荒川良々から、地域ふれあい交流会の実行委員を任される。
言葉が話せない成瀬に戸惑うも、拓実は地域向けの演目となるミュージカルの準備を進めるのだ。
一方の成瀬は、自分が幼い頃に物語を作った、山の上にあるお城に、ダンスパーティに行きたいお姫様がいて、という物語をミュージカルにしようと発案して、そのヒロインに選ばれた成瀬は、拓実にある言葉を掛けられたのを機に、自分の思いを歌で伝えようと、普通の元気な女子高生になろうとするわけ。
うつむきがちで喋らない、でもその表情で、成瀬の心の中は丸見えと言うヒロインは、アニメのキャラとしては分かりやすいと思うのだが、実写版では、芳根京子が、どもりながらも声を発して、思いを絞り出そうとするさまは、思い切りぎこちなくて、心臓を素手で掴まれるような痛みを感じるのだ。だから、本人も言葉を発すると、お腹が痛くなりしゃがみ込んでしまう。
それは他の人物にも共通する、生身の人間ならではの「ぎこちなさ」が、言葉で傷つけ合い、言葉で救い合うことの重さに、いっそう身体的な感触を持たせるのだ。10代の子供たちの思いや人間関係は、総じてぎこちないものなのだ。
こじれた親子関係も、怪我で引き裂かれた野球部の仲間たちの約束も、ミュージカルのシーンも、そのぎこちなさが美しかった。
成瀬の影響で、自分の心に素直になっていく拓実を演じる中島健人は、そんな中でもちょっと特殊であり、成瀬も優しく接してくれる拓実を、本当の王子様と勘違いしてしまい、心はルンルンなったのに。拓実が石井杏奈の前で本心を言うのが最高でした。
最後に石井杏奈が拓実と恋仲だと知ってしまい、成瀬には気づかなかった心の痛手が来て、つい、ミュージカルをドタキャンしてしまう。だから、成瀬の目に映る拓実の、キラキラとした王子様っぷりもすごく良かったと思う。
ミュージカルに間に合ったからいいようなもので、成瀬のいつまでも純真な心が、時にはうざったくなる。今時の女子高生ってこんなもんなのかも。
2017年劇場鑑賞作品・・・169映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
<感想>アニメ映画「ここさけ」の実写化。といっても、アニメは全然見ていませんから、何も分からずにただ、青春ものと思って鑑賞。オリジナルのファンの方にはハードルが上がるでしょうが、実写では生身の人間ならではの表現によって、この物語のメッセージがより強く浮かび上がっているようですね。
主人公の高校生の成瀬順は、小さい時に自分の言葉が原因で両親が離婚してから、喋ると腹痛が起きるようになり、言葉で会話ができない。幼少時に発した何気ない言葉で、両親を傷つけ家族をバラバラにさせたことから筆談でしか会話できない成瀬順。子供のころって、大人の顔色を見て話すなんてことはしない。だから純真な気持ちで、まさか父親が浮気をしていたことが、娘の口から出た言葉でバレてしまい、そのことで母親が傷つき離婚ということなる。これは、子供が全面的に悪いのではないのに、何故か子供が思っていたことを口にして、大人が困ったことになり、最悪の離婚となる。まさか、その原因を自分が言った言葉で、と真剣に思ってしまい話すことを止めてしまうとは、大人ってダメな人ばかりだ。それでも、いつまでもそのことを引きずって大人になり切れない成瀬が、最後には成長するのを見届ける母親がいたのも良かった。
その吃音ぽい、たどたどしく発する言葉には、力が漲っており、口で言ってしまえば、傷つくこともある。しかし喋らないでは、前には進まないのだ。成瀬の自分の心を表していくのが良かった。
そして、人との付き合いが下手で、本音で話すことができない高校3年生の坂上拓実を演じている中島健人。彼も子供のころに、両親が一人息子の進学のために、ピアノ教室に通っていたのを止めさせることで喧嘩をする両親。そのことで、母親と父親は険悪な仲になり母親は家を出ていき、父親も別に住むようになる。実は坂上拓実も幼少期にそんな両親との別れがあり、祖父母に育てられ彼もネクラの仲間入りなのだ。
ある日彼は、全く接点のないクラスメートの成瀬順に扮している芳根京子と共に、担任教師である荒川良々から、地域ふれあい交流会の実行委員を任される。
言葉が話せない成瀬に戸惑うも、拓実は地域向けの演目となるミュージカルの準備を進めるのだ。
一方の成瀬は、自分が幼い頃に物語を作った、山の上にあるお城に、ダンスパーティに行きたいお姫様がいて、という物語をミュージカルにしようと発案して、そのヒロインに選ばれた成瀬は、拓実にある言葉を掛けられたのを機に、自分の思いを歌で伝えようと、普通の元気な女子高生になろうとするわけ。
うつむきがちで喋らない、でもその表情で、成瀬の心の中は丸見えと言うヒロインは、アニメのキャラとしては分かりやすいと思うのだが、実写版では、芳根京子が、どもりながらも声を発して、思いを絞り出そうとするさまは、思い切りぎこちなくて、心臓を素手で掴まれるような痛みを感じるのだ。だから、本人も言葉を発すると、お腹が痛くなりしゃがみ込んでしまう。
それは他の人物にも共通する、生身の人間ならではの「ぎこちなさ」が、言葉で傷つけ合い、言葉で救い合うことの重さに、いっそう身体的な感触を持たせるのだ。10代の子供たちの思いや人間関係は、総じてぎこちないものなのだ。
こじれた親子関係も、怪我で引き裂かれた野球部の仲間たちの約束も、ミュージカルのシーンも、そのぎこちなさが美しかった。
成瀬の影響で、自分の心に素直になっていく拓実を演じる中島健人は、そんな中でもちょっと特殊であり、成瀬も優しく接してくれる拓実を、本当の王子様と勘違いしてしまい、心はルンルンなったのに。拓実が石井杏奈の前で本心を言うのが最高でした。
最後に石井杏奈が拓実と恋仲だと知ってしまい、成瀬には気づかなかった心の痛手が来て、つい、ミュージカルをドタキャンしてしまう。だから、成瀬の目に映る拓実の、キラキラとした王子様っぷりもすごく良かったと思う。
ミュージカルに間に合ったからいいようなもので、成瀬のいつまでも純真な心が、時にはうざったくなる。今時の女子高生ってこんなもんなのかも。
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