『ブロークン・フラワーズ』などのジム・ジャームッシュが、『リミッツ・オブ・コントロール』からおよそ4年ぶりに放つ監督作。何世紀も恋人同士として生きてきた吸血鬼の男女が、突如として現われた女の妹と対峙(たいじ)したことで生じる関係の変化を追い掛けていく。『マイティ・ソー』などのトム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントンやミア・ワシコウスカと、実力派俳優が結集。彼らの妙演はもとより、ジャームッシュ監督ならではのユーモラスでシニカルな世界観も堪能できる。
あらすじ:吸血鬼でありながら、どんな弦楽器でも弾くことができるミュージシャンとして活動中のアダム(トム・ヒドルストン)。アンダーグラウンドな音楽シーンに身を置いて人間たちと共存しているが、何かと自己破壊的な言動を取る彼らに対して複雑な思いを抱いていた。そんな中、何世紀も恋人として愛し合ってきた同じ吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)が、アダムが暮らすデトロイトへとやって来る。久々の再会を楽しもうとする二人だが、イヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が現われる。
<感想>永遠の生きるヴァンパイア、アダムとイヴの愛の物語が詩的に、かつユーモアと共に綴られるのだが、その背景となるのは瀕死の街デトロイトと、時間が止まったかのような街タンジール。いかにも死の匂いがただよってきそうだし、実際に濃厚に匂うような感じもする。と同時に子供のような生命力も感じさせる。
ヴァンパイアというものはそもそも英国文学から生まれたわけだし、吸血鬼のカップルをこんなにもお洒落に描いてしまうなんて、誰にもできる芸当ではないと思う。
いつも皮の手袋をしている、この何ともユニークなヴァンパイア映画のキャスティングが、アダムにトム・ヒルドンが、妻のイヴにはティルダ・スウィントンに、イヴの年老いた元夫のマーロウにジョン・ハートが扮して、この二人は「スノーピアサー」にも出演していた。それに、イヴの妹エヴァに、若きミア・ワシコウスカが扮して、我がまま放題に人間の血を狩っていく。
まぁ、イヴを演じるティルダ・スウィントンは、もはやほとんど普通の人間を演じない人になってしまっているので、彼女の吸血鬼には、奇妙な安定感さえ感じさせる。思えば、実に不思議で魅力的な女優である。
「マイティ・ソー/ダークワールド」でのロキ様こと、トム・ヒドルストンの活躍は大したものでした。今作ではアダムというヴァンパイアで、60年代のロック・ミュージシャン気質を持った男で、ロマンティックで凄くインテリジェントで洗練され、そして非常にミステリアスな男を演じている。
驚くことに、アダムの部屋はオープンリールのテープレコーダー、アナログのミキシング・デスクなど、アナログ機材で溢れていて、おまけに壁にはシェイクスピアからイギー・ポップまで多くの芸術家の肖像画がかかっている。これはみなジャームッシュの好きなもんだったりして?・・。
アダムとイヴの関係は、陰と陽のようで、イヴはアダムを闇の中から救ってくれるような光のような存在。2人はひとつで一対であるような関係にある。全く異なる生き物の二人だからこそ愛し合っている、つまりはヴァンパイアのラブストーリーですね。
それに“ゾンビ”と呼ばれる人間たち、アダムが抱えている悲劇とはゾンビ特有にある存在の無駄ということ。何もせずに、時間を無駄に使い、音楽を作ったり詩を書いたりできるのに、血液をめぐって争ったりする。それをアダムは悲しく思っている。
しかし、彼らは何世紀にも渡って生き続けてきて、たどり着いた現代に、決して満足はしていない様子。人間から吸血するのではなく、人間との共存をはかり、病院へ医者の変装をして血液を金で購入しているのだ。
しかし、イヴの妹がLAからやって来て、自分たちの大事な血液をむさぼるように飲んでしまう。それに、妹のエヴァが、アダムの友達イワンの首に食いついて吸血をしてしまう。その死体の後始末も二人でやらなければならないのだ。
妹をLAに返して、自分たちはアメリカを離れてモロッコのタンジールにやってくる。
だが、そこには、吸血鬼として生き延びていた中世の異端の作家クリストファー・マーロウが、汚染された人間の血を摂取して死の床についている姿があった。
愚かな人間による環境破壊や市場主義に絶望して、アダムとイヴは空腹を感じながら、「体に力が入らなくなった」とついにそのまま滅びていく道を選ぼうとするが、目の前に若い恋人カップルがキスをしているのを見て、二人がその人間に飛び付いたように見えたのだが、・・・もう人間じゃなく、純正カリスマみたいで、かくてヴァンパイアは、映画という虚構の世界の中で、永遠に存在し続けるのであるという。
ヒップな吸血鬼カップルというのは、なかなか新鮮な感じで面白いし、かっこいいと思わせる画も多いしで、廃墟のような夜のデトロイト郊外をドライブするシーンとかも素敵ですよ。
2014年劇場鑑賞作品・・・35 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:吸血鬼でありながら、どんな弦楽器でも弾くことができるミュージシャンとして活動中のアダム(トム・ヒドルストン)。アンダーグラウンドな音楽シーンに身を置いて人間たちと共存しているが、何かと自己破壊的な言動を取る彼らに対して複雑な思いを抱いていた。そんな中、何世紀も恋人として愛し合ってきた同じ吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)が、アダムが暮らすデトロイトへとやって来る。久々の再会を楽しもうとする二人だが、イヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が現われる。
<感想>永遠の生きるヴァンパイア、アダムとイヴの愛の物語が詩的に、かつユーモアと共に綴られるのだが、その背景となるのは瀕死の街デトロイトと、時間が止まったかのような街タンジール。いかにも死の匂いがただよってきそうだし、実際に濃厚に匂うような感じもする。と同時に子供のような生命力も感じさせる。
ヴァンパイアというものはそもそも英国文学から生まれたわけだし、吸血鬼のカップルをこんなにもお洒落に描いてしまうなんて、誰にもできる芸当ではないと思う。
いつも皮の手袋をしている、この何ともユニークなヴァンパイア映画のキャスティングが、アダムにトム・ヒルドンが、妻のイヴにはティルダ・スウィントンに、イヴの年老いた元夫のマーロウにジョン・ハートが扮して、この二人は「スノーピアサー」にも出演していた。それに、イヴの妹エヴァに、若きミア・ワシコウスカが扮して、我がまま放題に人間の血を狩っていく。
まぁ、イヴを演じるティルダ・スウィントンは、もはやほとんど普通の人間を演じない人になってしまっているので、彼女の吸血鬼には、奇妙な安定感さえ感じさせる。思えば、実に不思議で魅力的な女優である。
「マイティ・ソー/ダークワールド」でのロキ様こと、トム・ヒドルストンの活躍は大したものでした。今作ではアダムというヴァンパイアで、60年代のロック・ミュージシャン気質を持った男で、ロマンティックで凄くインテリジェントで洗練され、そして非常にミステリアスな男を演じている。
驚くことに、アダムの部屋はオープンリールのテープレコーダー、アナログのミキシング・デスクなど、アナログ機材で溢れていて、おまけに壁にはシェイクスピアからイギー・ポップまで多くの芸術家の肖像画がかかっている。これはみなジャームッシュの好きなもんだったりして?・・。
アダムとイヴの関係は、陰と陽のようで、イヴはアダムを闇の中から救ってくれるような光のような存在。2人はひとつで一対であるような関係にある。全く異なる生き物の二人だからこそ愛し合っている、つまりはヴァンパイアのラブストーリーですね。
それに“ゾンビ”と呼ばれる人間たち、アダムが抱えている悲劇とはゾンビ特有にある存在の無駄ということ。何もせずに、時間を無駄に使い、音楽を作ったり詩を書いたりできるのに、血液をめぐって争ったりする。それをアダムは悲しく思っている。
しかし、彼らは何世紀にも渡って生き続けてきて、たどり着いた現代に、決して満足はしていない様子。人間から吸血するのではなく、人間との共存をはかり、病院へ医者の変装をして血液を金で購入しているのだ。
しかし、イヴの妹がLAからやって来て、自分たちの大事な血液をむさぼるように飲んでしまう。それに、妹のエヴァが、アダムの友達イワンの首に食いついて吸血をしてしまう。その死体の後始末も二人でやらなければならないのだ。
妹をLAに返して、自分たちはアメリカを離れてモロッコのタンジールにやってくる。
だが、そこには、吸血鬼として生き延びていた中世の異端の作家クリストファー・マーロウが、汚染された人間の血を摂取して死の床についている姿があった。
愚かな人間による環境破壊や市場主義に絶望して、アダムとイヴは空腹を感じながら、「体に力が入らなくなった」とついにそのまま滅びていく道を選ぼうとするが、目の前に若い恋人カップルがキスをしているのを見て、二人がその人間に飛び付いたように見えたのだが、・・・もう人間じゃなく、純正カリスマみたいで、かくてヴァンパイアは、映画という虚構の世界の中で、永遠に存在し続けるのであるという。
ヒップな吸血鬼カップルというのは、なかなか新鮮な感じで面白いし、かっこいいと思わせる画も多いしで、廃墟のような夜のデトロイト郊外をドライブするシーンとかも素敵ですよ。
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