再登場となったもの。高い評価を受けてきた現役道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベルご夫妻による風変わりなコメディです。『アイスバーグ!』『ルンバ!』でも組んだドミニク・アベルとフィオナ・ゴードンが製作、監督、脚本、主演を務めたコメディー。おばを助けにカナダからフランスにやって来た主人公が、思いがけないトラブルに遭遇する姿をキュートに描く。『愛、アムール』などのエマニュエル・リヴァがおばを好演。カラフルでポップな映像、夏のパリで巻き起こる珍事件の数々が見どころ。
<感想>フランス映画社が弱体化していたため、まったく話題にならなかったが、今回、めでたく再登場となったもの。高い評価を受けてきた現役道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベルご夫妻による風変わりなコメディです。
物語は、雪ばかり降るカナダの小さな村。図書館司書のフィオナ(フィオナ・ゴードン)は、ある日雪パリに住むおばのマーサ(エマニュエル・リヴァ)から手紙を受け取る。「パリを愛しているのに、みんなが私を老人ホームに入れようとするの、助けて!」。これを読んだフィオナは、はじめてのパリ行きを決意し、出発。しかし、パリに着いてもマーサには会えず、フィオナはセーヌ川に落ちて荷物を丸ごと流されてしまう。一方、その荷物を拾った謎のホームレス、パリジャン・ドム(ドミニク・ベル)は、偶然フィオナと巡り会うことに。数々のトラブルに巻き込まれながらも、フィオナはマーサおばさんを探し出そうとして…。
過酷な現実を描いた作品の後に、こういうのに出会うとホッとしますよね。もう、肩の力を抜いて楽しんだ方が勝ですって。この夫婦のニヤニヤ、クスクスの演出スタイル。まるでチャップリン映画のようにも思えた。
これが3回目のおめもじとなると久しぶりねと、声を掛けたくなる。J・タチ、R・デリーを思わせる道化的な笑いが良かったです。
冒頭での事務所には、お腹を抱えて笑ったが、カナダの雪の多いところが舞台なのか、吹雪でドアが閉まらなかったりして大騒ぎ。それに、パリに来てからは、お上りさん状態で、写真を撮ったりしてウキウキして、おばさんのアパートを探しても、留守で表で待ちぼうけ。このアパートだと分かっているんだから、中へ入ってオバサンの部屋で休めばいいものを。
パリで暮らす老叔母に、はるばる会いに来たカナダ人の女性が、異国で珍道中を繰り広げる。ヒロインと、彼女が出会うホームレスの男性を演じたのは、本作の監督の夫婦コンビであります。
以前の話題を呼んだ映画『アイスバーグ!』『ルンバ!』は未見ですが、この映画の中での、原色あふれるパリの風景を背景に、豊かな色彩で絵本のような映像美を楽しませながら、人生と自由の素晴らしさを、ユーモアたっぷりに描いているのが良かった。
パントマイムを素地にする二人のユニークな身体。すごくよく似た体つきも。身体表現は、もうそれだけで映像を支える高度な芸風ですから。仄かなお色気感もあってよろしいかと。それに、監督の夫のホームレスは、もしこういうパリ人がいたら、観光客は嫌な思いをするのではないかしら。
写真を撮って、重いリュックとハンドバックがセーヌ川に落ちてしまい、その中にパスポートもお金も全部入っていたとは。拾ったお金で、女をナンパして食事をご馳走するホームレス。そのハンドバックは、私のよと、騒いでも後のまつり。
おばさんは、認知症でエッフェル塔によじ登ってたとはね。後は、同じホームレスの爺さんと、ベンチで足のステップでダンスを踊るところも、彼女、エマニュエル・リヴァは、そのコメディエンヌとしての魅力を存分に発揮して2017年に亡くなったそうです。
ですが、全体的には、少し上品すぎて物足りなさを感じてしまった。ドタバタ喜劇の飛躍とまでは言わないが、もう一つ弾けたギャグも欲しくなります。ちょっと、計算しすぎの感もするのではないかしらね。とはいえ、この楽しさは貴重ですよね。
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