『第9地区』が第82回アカデミー賞作品賞などにノミネートされた新鋭ニール・ブロムカンプ監督が、マット・デイモンを主演に迎えたSFアクション。22世紀、富裕層だけが居住を許されるスペースコロニー“エリジウム”を舞台に、虐げられた地球の住人の反撃をハードに描く。マットのほか、ジョディ・フォスターや『第9地区』『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のシャールト・コプリーが出演。ブロムカンプ監督の斬新なアイデアや演出に期待。
<感想>永遠の命が約束された理想郷・エリジウムに暮らす富裕層と、貧困と犯罪が蔓延する荒れ果てた地球で生きる貧困層。この二極化された2154年の世界を舞台にした「エリジウム」は、「第9地区」で注目を集めたニール・ブロムカンプ監督によるSFアクションである。
人類の理想郷のエリジウムのビジュアルも想像を絶する美しさに驚く。それに対比する貧しいものが暮らすスラム化したロサンゼルスの景観だ。地平線まで続く粗末なバラックや崩れかけたビル群に、蜂の巣状態で人々が密集し、人工過剰で荒廃し、貧困と犯罪が蔓延。人々は高性能ロボットに監視されながら暮らし、病気になってもまともに治療をうけられない。
主人公は、工場の事故で大量の照射戦を浴び、余命5日を宣告された地球の住人マックス。生きるか、死ぬかの瀬戸際に立たされた彼は、永遠の命を手に入れるためにエリジウム行きを決意する。
しかし、不法入国を厳しく管理するエリジウムに侵入するのは至難の業。密航用の宇宙船に乗せてもらう代わりに、彼はある富裕層の人物、アーマダイン社の社長のデーターを盗み出す仕事を任されるのだが、・・・。
マックスは闇商人のスパイダーのもとを訪れ、エクソ・スーツを装着する手術を受ける。それは、人間が攻撃型ロボットと対等に戦う力を得ることができる特殊な装置。装着するには骨にねじ切って直付するし、神経と結合させる。頭にも電極をねじ込むから痛そう。まるで、大リーグボール養成ギブスふうのコンパクトな作りなのだ。
パワーアップしたマックスは、見た目はまんまの生身状態。ドロイドとの肉弾戦は、エクソ・スーツの馬力にマックス本人の肉体が追いつかず、腕がへし折れるんじゃないかとハラハラして、妙なスリル感を覚える。
運よくエリジウムから地球へ戻って来たアーマダイン社の社長のヘリを襲撃し、護衛のロボットをやっつける。真っ赤なボディのロボットだが、本格戦闘には弱い。社長の頭とマックスの頭の脳にダウンロードするシステムもちゃっちい。こんなんで、エリジウムの全権システムを奪還できるとは思ってもいなかった。
それには、裏切り者のデラコート長官、ジョディ・フォスター演じるエリジウムの安全を守る防衛長官で、地球の住民を監視し、不法入国者を徹底的に排除する。その任務はロボット軍隊だが、みたところ数が少ないし、戦闘能力があまりない。
そして、地球に住む民間協力局の覆面エージェントであるクルーガー。あの「第9地区」で一躍有名になったヴィカスが、狂暴な傭兵に変身して、ホームレスのようなボロキレをまとい、敵とみれば刀で斬りまくるは、宇宙船を迎撃する長距離ロケットランチャーを撃つはで、ハデにやってくれます。演じるのは、シャールと・コプリー。この男の難点は、女とみれば下半身がうずきだし、マックスの幼馴染である女医フレイを拉致してしまう。
児童養護施設で育ち、幼き日に「あなたは特別な存在」とシスターから言われながらも、犯罪にまみれた生活を送ってきたマックスが、ようやく真面目に働き出したと思ったら、不慮の事故。何とも運の悪い男だが、手を伸ばせば届きそうなのに、たどり着けないエリジウムの存在。そもそもマックスがエリジウム行きを決意したのは、自分が余命わずかとなったからで、いわば自分自身のためだけに戦ってきた彼が、自分も気づかぬうちに世界を変える戦いに巻き込まれ、ヒーロー然とした男に成長していく姿が観る者の胸を打つ。
さらには、残酷な選択を迫られるマックスがたどる運命は、切なすぎて、SFアクションにもかかわらず、最後は救世主となって死んでいくマックスに涙を誘います。
マックスを演じたマット・デイモンは、「ボーン」シリーズからさらに飛躍させたキレのいいアクションを披露。超人的なヒーローではなく、痛みも弱さもある人間味あふれるマックスはハマリ役で、幼馴染の女性フレイ(アリス・プラガ)との、後一歩踏み出せない関係も、物語の絶妙なエッセンスになっている。彼女には白血病の娘がいてエリジウムでの医療ポットで治したいと願っている。
さらには、格差社会を背景に、社会的テーマとSFアクション、感動のドラマまでを融合させたブロムカンプ監督のこだわりが全編にあふれている。
それなりに、本作は、今のハリウッド大作映画の水準で考えると、充分よくできた映画だと思う。マット・デイモンが体を張ったアクション・シーンの迫力は、前作にもなかった見どころだし、SF的な発想の中にも面白いアイデアがたくさんあった。特にやっぱりロボット/メカ関係が。今後に期待出来そう。
15年に公開が決まっているブロムカンプ監督の作品「Chappie」は、アマチュア時代に撮った短編を基にしていて、「ロボコップ」と「E.T.」を足して2で割ったような作品だというのだ。物語の舞台は再び南アフリカとなり、コプリーに加え、南アフリカ出身のヒップホップ集団、ダイ・アントワードのニンジャ&ヨランディの二人も地元のギャング役で出演。
2013年劇場鑑賞作品・・・278 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>永遠の命が約束された理想郷・エリジウムに暮らす富裕層と、貧困と犯罪が蔓延する荒れ果てた地球で生きる貧困層。この二極化された2154年の世界を舞台にした「エリジウム」は、「第9地区」で注目を集めたニール・ブロムカンプ監督によるSFアクションである。
人類の理想郷のエリジウムのビジュアルも想像を絶する美しさに驚く。それに対比する貧しいものが暮らすスラム化したロサンゼルスの景観だ。地平線まで続く粗末なバラックや崩れかけたビル群に、蜂の巣状態で人々が密集し、人工過剰で荒廃し、貧困と犯罪が蔓延。人々は高性能ロボットに監視されながら暮らし、病気になってもまともに治療をうけられない。
主人公は、工場の事故で大量の照射戦を浴び、余命5日を宣告された地球の住人マックス。生きるか、死ぬかの瀬戸際に立たされた彼は、永遠の命を手に入れるためにエリジウム行きを決意する。
しかし、不法入国を厳しく管理するエリジウムに侵入するのは至難の業。密航用の宇宙船に乗せてもらう代わりに、彼はある富裕層の人物、アーマダイン社の社長のデーターを盗み出す仕事を任されるのだが、・・・。
マックスは闇商人のスパイダーのもとを訪れ、エクソ・スーツを装着する手術を受ける。それは、人間が攻撃型ロボットと対等に戦う力を得ることができる特殊な装置。装着するには骨にねじ切って直付するし、神経と結合させる。頭にも電極をねじ込むから痛そう。まるで、大リーグボール養成ギブスふうのコンパクトな作りなのだ。
パワーアップしたマックスは、見た目はまんまの生身状態。ドロイドとの肉弾戦は、エクソ・スーツの馬力にマックス本人の肉体が追いつかず、腕がへし折れるんじゃないかとハラハラして、妙なスリル感を覚える。
運よくエリジウムから地球へ戻って来たアーマダイン社の社長のヘリを襲撃し、護衛のロボットをやっつける。真っ赤なボディのロボットだが、本格戦闘には弱い。社長の頭とマックスの頭の脳にダウンロードするシステムもちゃっちい。こんなんで、エリジウムの全権システムを奪還できるとは思ってもいなかった。
それには、裏切り者のデラコート長官、ジョディ・フォスター演じるエリジウムの安全を守る防衛長官で、地球の住民を監視し、不法入国者を徹底的に排除する。その任務はロボット軍隊だが、みたところ数が少ないし、戦闘能力があまりない。
そして、地球に住む民間協力局の覆面エージェントであるクルーガー。あの「第9地区」で一躍有名になったヴィカスが、狂暴な傭兵に変身して、ホームレスのようなボロキレをまとい、敵とみれば刀で斬りまくるは、宇宙船を迎撃する長距離ロケットランチャーを撃つはで、ハデにやってくれます。演じるのは、シャールと・コプリー。この男の難点は、女とみれば下半身がうずきだし、マックスの幼馴染である女医フレイを拉致してしまう。
児童養護施設で育ち、幼き日に「あなたは特別な存在」とシスターから言われながらも、犯罪にまみれた生活を送ってきたマックスが、ようやく真面目に働き出したと思ったら、不慮の事故。何とも運の悪い男だが、手を伸ばせば届きそうなのに、たどり着けないエリジウムの存在。そもそもマックスがエリジウム行きを決意したのは、自分が余命わずかとなったからで、いわば自分自身のためだけに戦ってきた彼が、自分も気づかぬうちに世界を変える戦いに巻き込まれ、ヒーロー然とした男に成長していく姿が観る者の胸を打つ。
さらには、残酷な選択を迫られるマックスがたどる運命は、切なすぎて、SFアクションにもかかわらず、最後は救世主となって死んでいくマックスに涙を誘います。
マックスを演じたマット・デイモンは、「ボーン」シリーズからさらに飛躍させたキレのいいアクションを披露。超人的なヒーローではなく、痛みも弱さもある人間味あふれるマックスはハマリ役で、幼馴染の女性フレイ(アリス・プラガ)との、後一歩踏み出せない関係も、物語の絶妙なエッセンスになっている。彼女には白血病の娘がいてエリジウムでの医療ポットで治したいと願っている。
さらには、格差社会を背景に、社会的テーマとSFアクション、感動のドラマまでを融合させたブロムカンプ監督のこだわりが全編にあふれている。
それなりに、本作は、今のハリウッド大作映画の水準で考えると、充分よくできた映画だと思う。マット・デイモンが体を張ったアクション・シーンの迫力は、前作にもなかった見どころだし、SF的な発想の中にも面白いアイデアがたくさんあった。特にやっぱりロボット/メカ関係が。今後に期待出来そう。
15年に公開が決まっているブロムカンプ監督の作品「Chappie」は、アマチュア時代に撮った短編を基にしていて、「ロボコップ」と「E.T.」を足して2で割ったような作品だというのだ。物語の舞台は再び南アフリカとなり、コプリーに加え、南アフリカ出身のヒップホップ集団、ダイ・アントワードのニンジャ&ヨランディの二人も地元のギャング役で出演。
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