お寺の話の次は神社のお話です。
■サントリーの社名の由来は?
最初からいきなりクイズです。
(問題)
サントリーの昔の会社名は何だったでしょうか。
(ヒント)
♪明日の天気はどうでしょう~
サントリーが知らせる天気予報~♪
サン、サン、サントリーの天気予報、てんき、ヨッホーオゥー♪
今から四十数年前、昭和三十年代にTBS系列で毎日夕方に放映されていた「サントリーの天気予報」という番組がありました。(50代以上の方ならご存知かも)子供と髪の薄いオジさんの人形(ギニョール)が出てくる天気予報です。番組の最後はサントリーの天気予報と書いた立て札がくるりと回り、提供会社名になるのですが、それには洋酒の「寿屋」(コトブキヤ)と書いてありました。
以前サントリーの元広報部の方と飲む機会があって、この番組の話をしたら、「良く覚えていてくれたネェ」と大変感激していただきました。その方の話によると、この番組はテレビ創生期の天気予報を番組にした大変画期的な物であったそうですが、短期間の放映で終わり、直ぐその後、今も続いている最長寿番組、「ヤン坊マー坊の天気予報」にとって代わられてしまい、今では覚えている人も少ないと、大変残念がられていました。
枕が長くなってしまいました。話を元に戻しましょう。サントリーの前身は赤玉ポートワインなどを製造していた「寿屋」だったのですが、ウイスキーなどを作るようになって新しくブランド名を作ることになったのです。当時の社長は創業者の鳥居信治郎氏でした。
ああその話なら知っている、「鳥居さん」をひっくり返して「サントリー」にしたんだろうとおっしゃりたい方、残念ですがそれは俗説です。サントリーの社名の起こりは、奈良県の三輪山のふもとにある「大神(おおみわ)神社」に由来するものなのです。
■「大神神社」
奈良市から桜井市に至る国道7号線に沿って文字通り山沿いに続く日本最古の道と呼ばれる「山の辺の道」は現在は東海自然歩道となっています。この街道のの終点近くの三輪山のふもとに「大神神社」はあります。
この「山の辺の道」一帯は古代大和朝廷誕生の地と言われ、箸墓(はしはか)古墳で知られる纏向(まきむく)遺跡の成立は、三世紀初頭で当時の古代都市と呼んで良いほどの集落規模と繁栄があったそうです。そして現在の桜井市三輪あたりはというと・・・・・『春過ぎて夏来るらし白妙の素麺干したり天の三輪山』と冗談が言いたくなるほど、全国的に知られる三輪素麺の本場で、白い素麺を天日で干しあげている光景は春から初夏の風物詩になっています。
古代大和朝廷が信仰した神が三輪山です。山全体がご神体でその大半が禁足地であり、例え神社の神職といえども立ち入ることはできません。古代より人が足を踏み入れたことのない原始の森がいまだに保たれています。
三輪山の主祭神は古事記によれば「大物主大神」です。古事記の世界では国津神(くにつかみ)であり、天津神(あまつかみ)である天照大神より神格は低いのですが、当初日本の神々の最高神であったのです。初期の大和朝廷はこの神を三輪山に祭り、盛大な祭祀を行っていたのです。えっ!大和朝廷の最高神は天照大神じゃないのと思う方も多いことでしょうが、この話は長くなるので別の機会にいたしましょう。
■薬の神様
日本書紀によれば「大物主神」は「大国主神」の別名である「大己貴神」(おおなむちのかみ)の分霊(幸魂・奇魂 )であるとされ、同一神として扱われています。「大国主」には全国に農業を広め、様々な技術や医術を広めた伝説があり、わが国の国造りを進めた、万能の偉大な神様と言われています。
現在の「大神神社」の代表的なご利益は厄ばらいですが、医術を広めたということから薬の神様としても崇敬されています。因幡の白兎の話を思い出してみてください。鰐に毛をむしられ、塩水につけられて泣いていた白兎に治療法を教えたのは「大国様」こと「大国主命」でした。ですから今でも製薬会社関係者に崇敬されています。
■酒の神様
天智天皇と大海人皇子(天武天皇)の二人の天皇にに愛された美貌の女流歌人、「額田王」(ぬかたのおおきみ)が詠んだ和歌に、『味酒(うまさけ)三輪の山あをによし 奈良の山の 山の間に』がありますが三輪山の枕言葉になるほど、古代のこの地一帯は名酒の産地であったようです。そのようなことから「酒の神様」として全国の酒造業者の崇敬を一心に集めているのがこの「大神神社」なのです。
山のふもとにある拝所の磐倉(いわくら)は全国の酒造業者が参拝の度にお酒を注ぐため、一年中酒の絶えることがなく、全山が酒甕かと錯覚をおこすほどの酒の匂いに満ち満ちています。日本書紀にもあるように、三輪の神の真のお姿は蛇身であると言われており、ヤマタノオロチの神話をはじめ、どうやら蛇とお酒は切っても切れない関係のようです。
さてこの「大神神社」は山全体がご神体であるため本殿がなく、我々が普段訪れる事が出来る神社の建物は、実は拝殿なのです。拝殿の奥には山に向かって神明造りの鳥居が三つ並んで立っています。そして鳥居の先は禁足地となっており何人も立ち入ることは出来ません。
前述のサントリーの鳥居信治郎氏が商売繁盛を祈願してこの神社を参詣したおり、自分の名前と同じ鳥居で大変めでたいということで、ブランド名を三っ鳥居にちなんで「三鳥居」、「サントリー」と命名し、後に社名となったのだそうです。
Copyright:(C) 2006 Mr.photon
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