江戸時代に「落首」という、短い句を書いて、人通りの多いところに張り付けるもの流行った時期があった。江戸以前からあったものだが、内容は世相の風刺。庶民には面白く、幕僚には頭の痛い句ばかりであった。中には将軍や町奉行の怠慢ぶりを書くものもあり、作者が見つかれば、島流しか打ち首かという重罪だった。
折しも、幕閣が賄賂目当てに奉行職を売るような悪事がはびこり、吉宗らは頭を痛めていた。料亭の中居・お種(志乃原良子)はそのやり取りを聞き覚えて、投書として目安箱に入れようとしていたが、悪党どもに殺されてしまう。
それを目撃したのが髪結いのお駒(京唄子)。実はお駒の夫がそのとき世間を騒がせていた落首の書き手だったのだ。徳田新之助なる吉宗と知り合ったお駒は夫をかばいながらも、目撃者として命を狙われる羽目に。
「こんな世の中にした将軍様は阿呆や間抜けや」と大声を上げる。それを聞いていた吉宗は「その通りだな。将軍は恥じねばならない」と自戒するようにつぶやく。
悪の根城であった料亭に乗り込むお駒についていった吉宗は、悪老中と幕僚狙いの旗本らを成敗する。珍しかったのは、大立ち回りの場所が悪党の屋敷ではなく、料亭だったこと。なんで家来の武士がこんなにたくさんいるのだろうか、と不思議ではあったが、店が壊れるなどの被害はなかったと思われる。
お駒夫妻は落首の件で囚われる恐怖から逃れようと、夜逃げをしようとするが、玄関に、落首の件は咎めない、という内容が書かれた落首ふうの句が張ってあり、吉宗の寛大さに感謝する夫婦だった。
落首って、そんなに決死の思いで書くものだったんだね。知らなかった。若い女性ゲストはお種だけで、冒頭に殺されてしまったが、京唄子がうまく演じていて、面白かった。
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