小さくなったその体を抱きしめる
何度も、何度も 名前を呼ぶ
さっきまで、確かにそこで小さな息をしていた体が、動きを止めていた。
温かい体のぬくもりが、手足の先から抜けていく。
それを 押しとどめるように、
私は あびの体を抱きしめる
昨日は、朝からずっと歩き回って、
バタバタしてる私の後を 追っていたんだ
お天気悪かったから、外には出してあげなかった
いつもと同じ・・・いつもと変わらない・・・何でもない平穏な日
ただ、本当にずっとずっと後を、追っていた・・・昼寝もせずに・・・
夜になって、肌寒いのでストーブをつけたら
ストーブの横に置いたお気に入りの座布団の上で・・・
ことっと横になった・・・あび
そんないつもと変わらない あびとの暮らしが、こうやって ずっと続くと 思ってた。
年老いた あびに 好きなだけ パウチをあげて 欲しがるものをあげて・・・
眠たくなったら、小さな寝息を たてて眠る
そして、そんな元気になりつつある あびから
こんなこと 全然 想像できなかった
あー、だんだん
小さな体から ぬくもりが抜けていく
薄曇りのお天気
・・・雲の隙間から 光がさしこむ
私は、あびを抱いて 庭に出る
あびの 少し開いた瞳に 光がさして きらりと光る
黄色いチューリップが きらりと光る
あび・・・おひさんだよ。あったかね・・・
あー、涙がとまらない
あー、あびがだんだん冷たくなっていく・・・
空を見上げて、猫の神様にお願いする・・・
どうか、どうか
猫の神様、お願いです
あびが 望むようにしてやってください・・・
どうか、どうか どこに行っても あびが 幸せでありますように
あびを 抱いている 私の胸から 心が落ちていく
流れ続けて 全身の力が 抜けていく
あび お願い
目をあけて・・・
かあちゃん、もっと 長く あびちゃんと 暮らしたかったよ
お願い・・・お願い
もう一度、目をあけて・・・
まだ・・・「ちゅーる」残ってるよ・・・
無くなったら、かあちゃん、買ってくるよ・・・
後悔ばかり、湧き上がる・・・