兼六園の雪吊りも終わっている。
市内の消雪装置の点検がほぼ終わった様です。我が家の冬支度は保存食や燃料の準備など無いので、タイヤ交換ぐらいです。

その頃、といっても大正4、5年のことで、今から四十数年前のことだが、夕方になると、決まって村の子供たちは口々に、"しろばんば、しろばんば"と叫びながら、家の前の街道をあっちに走り、こっちに走ったりしながら、夕闇のたちこめ始めた空間を綿屑でも舞っているように浮遊している白い小さい生きものを追いかけて遊んだ。素手でそれを掴み取ろうと飛び上がったり、ひばの小枝を折ったも手にして、その葉にしろばんばを引っかけようとして、その小枝を空中に振り廻したりした。しろばんばは"白い老婆"ということなのだろう。子供たちはそれがどこからくるのか知らなかったが、夕方になると、その白い虫がどこからともなく現れて来るから、さして不審にも思っていなかった。夕方がくるからしろばんばが出て来るのか、しろばんばが現れて来るから夕方が来るのか、そうしたことははっきりしていなかった。しろばんばは、真っ白というよりごく微かだが青味を帯んでいた。明るいうちはただ白く見えたが、夕闇が深くなるにつれて、それは青味を帯んで来るように思えた。
11月28日 北國新聞 朝刊

小さい頃、白いものが飛んでいたような、、?
白い綿状のろう物質を体にまとい、ふわふわ漂っていたと記事にはありますが、これが「しろばんば」なのでしょうか?
『しろばんば』 井上靖