村上春樹の長編、短編の中でもこの本は毛色が違うというか異質のような感じがしてなかなか手に取れなかった。
きっかけは安倍元総理銃撃事件だった。
地下鉄サリン事件から3年後に刊行されている。
この本が刊行される前に地下鉄サリン事件の被害者を取材したundergroundを刊行している。
信者の生立ちから入信そして出家、事件後の心境やこれからのオウムに対しての関わり等を入念に著者がインタビューしている。
読んでいて村上春樹はオウムの何処かに小説家としての自分の共通項を感じながら取材していたと思ったし、その様なことが書かれている。
日本社会の画一的なシステムから外れた・外れようとしている人を受け入れる有効で正常なサブシステム=安全ネットが日本には存在しないという現実があると書かれていた。
安倍元総理銃撃事件とオウム事件とは規模が違うがオウム事件から日本社会は何か変わったのだろうかと思ってしまう。
河合隼雄氏との対談は秀逸でオウムが暴発した必然性が語られていた。