(厚労省への署名提出の様子)
現在、NPO法人POSSEでは、家事労働者過労死裁判を支援するボランティアを募集しています。
今回の過労死裁判支援をはじめとした過労死問題への取り組みは、POSSEの学生や若手社会人が中心を担っています。
「過労死を無くしたい、仕事が原因で命が失われる社会を変えたい」という方は、ぜひボランティアを募集していますので、私たちまでご連絡ください。一緒に今の社会を変えていきましょう。
私たちが取り組む裁判の家事労働者過労死裁判の概要とボランティア内容は以下になります。
【事件概要】
裁判の対象となっているのは、2015年5月に急性心筋梗塞で亡くなった家事代行及び訪問介護ヘルパーとして働いていた女性のAさん(当時68歳)の死亡に対し、2018年1月に下された国の労災不認定の決定です。
・1週間、ほぼ24時間休みなしの住み込み家事労働の過酷な実態
Aさんは株式会社Y社の紹介で、認知症を患う寝たきりの高齢者(要介護度は一番重い「5」)の個人宅にて住み込みで働いていました。常時対応が必要なため、2015年20日~26日までの1週間、ほぼ24時間休みなしで、清掃や洗濯、食事の用意、介護など家事業務と介護業務が渾然一体となった状態で働いていました。
多種多様で専門性も高く責任重大な「ケア労働」を、たった1人で担っていたのです。
「求人票兼労働条件通知書」には休憩時間が深夜0時~5時と記載されており、そもそも24時間中5時間しか休むことが想定されていない契約書となっていました。さらに、Aさんの同僚は「派遣された家政婦は、ろくに睡眠時間も取れない上に、2時間おきのおむつ替え、定期的な失禁にも対応しなければならなかった。事実上24時間労働であり、労働から解放されることがない」旨の証言をしています。そこからも、Aさんがほぼ24時間の過酷な労働を強いられていたことがわかります。
・家事労働者を差別する現在の法制度の壁
Aさんの死は仕事が原因だと思った遺族は、2017年5月に渋谷労働基準監督署に労災申請をしましたが、2018年1月に不支給決定となりました。その後の異議申し立ての手続きである審査請求、再審査請求も国から退けられました。
その理由は、Aさんが労働基準法116条2項の「家事使用人」に該当し、同法及び労働者災害補償保険法の適用除外となるため、というものでした。遺族は、過重労働が原因で死亡したのに、家事労働者に労災が認められないのは不当だとして、2020年3月に国を相手に東京地裁へ提訴しました。遺族は会見で「家事労働者が労働者として守られないのは重大な人権侵害で納得できない」と訴えました。
・家事労働者の差別は女性差別とつながっている
Aさんもそうであるように、家事労働者の多くは女性です。国はこれまで、家事労働者の実態把握等を十分にしておらず、調査等もほとんどありませんが、2015年の国勢調査では、日本国内に約1万1千人の家事労働者(統計上は「家政婦(夫)」)がいるとされ、97%が女性となっています(個人契約の全てを把握できないため、この数字も氷山の一角と予想されます)。家事労働者として働く多くの女性が無権利状態で働いているのです。
・海外では広がる家事労働者の権利拡大
日本とは異なり、国際的には家事労働者の権利は拡大を続けています。2000年代中頃から女性団体や労働組合、NGOなどが連携し家事労働者の国際的な待遇改善を進め、2011年6月、ILO第100回総会で「家事労働者の適切な仕事に関する条約(第189号条約)」が採択されています。この条約では、家事労働者は他の労働者と同じ基本的な労働者の権利を有するべきとして、「安全で健康的な労働環境の権利」、「一般の労働者と等しい労働時間」などが規定されています。
しかし、日本は同条約を未だ批准しておらず、国連女子差別撤廃委員会から勧告も受けていますが、改善の動きは未だありません。
・訴訟を通して実現したいこと
Aさんの労災認定を実現するとともに、労働基準法や労災保険法の適用除外という労働者としての最も基本的な権利すら認められていない家事労働者の現状に多くの人が目を向け、こうした差別的な状況を問題と捉えられるようにしたいと考えています。
【これまでボランティアがやってきたこと】
・裁判傍聴支援や報告集会の実施
過労死裁判は数年続く場合が多く、精神的負担も少なくありません。遺族が最後まで裁判を闘えるように、POSSEのボランティアや連携する労働組合のメンバーで継続的に裁判傍聴を行い、精神的なサポートをします。
また、裁判期日ごとに、弁護士とともに報告集会を行なっており、裁判の意義や進捗を参加者同士で共有し、継続的な支援体制の構築を進めています。
・オンライン署名「家事労働者に労基法・労災保険の適用を! 1週間・24時間拘束労働で亡くなった高齢女性の過労死を認定してください!」の立ち上げ
現在、オンライン署名には3万6000筆もの署名が集まっています。2022年11月には、3万5000筆の署名を厚生労働省に提出し、家事労働者に対しての労基法・労災保険の適用を求めました。その様子は多くのメディアで報道されました。
・厚生労働省へのヒアリング
弁護団、ジャーナリスト、現役の家事労働者、遺族と共に、POSSEボランティアの学生や労働者も、今後の法改正の見通しなどについての質問を行いました。
・記者会見の設定や準備
裁判の提訴や判決などの際には、厚生労働省などで記者会見を行い、問題を広く社会へアピールしています。また、
・SNSでの情報発信
裁判の概要やポイント、闘いの意義について、継続的にTwitterやInstagramなどのSNSで発信しています。
【これからやろうと思っていること】
・オンライン署名の多言語翻訳
劣悪な労働環境で働かせられている家事労働者は、今回亡くなったAさん以外にも大勢いるはずです。今後は、権利行使が難しい「外国人」の家事労働者からの相談も含め、家事労働者の権利を獲得する国際的な運動を作っていきたいと考えています。
・家事労働者の実態調査
家事労働者の労働実態については、調査はほとんどありません。今回の裁判の反響を受けて、国もやっと実態調査を始めようとしていますが、その内容がどうなるかは不透明です。現場の実態把握を私たちも独自調査の実施を検討しています。
【家事労働者問題に関心がある方からのご連絡お待ちしています】
私たちと一緒に家事労働問題に取り組んでくれるボランティアを募集しています。具体的な活動としては、裁判傍聴支援、記者会見や報告集会の準備、SNSでの情報発信、オンライン署名の多言語翻訳などがあります。
お名前、連絡先、参加理由を記入して以下までご連絡頂ければ幸いです。
・LINE
https://line.me/R/ti/p/%40bug0288j
・メール