2020年3月にご遺族が国を相手に労災認定を求めて東京地裁に提訴した家事労働者過労死裁判は、2022年9月29日、東京地裁にて不当判決を受けました。
しかし、ご遺族はすぐに東京高裁へ控訴し、裁判は継続してきました。そして、ついに9月19日(木)の14時から東京高裁1階の101号法廷(最も大きい100名規模の大法廷)で高裁判決の言い渡しとなります。
ぜひ、支援者の皆様には、差別され続けてきた家事労働者・女性労働者の権利を勝ち取るために、見逃されてきた過労死を認めさせるために、傍聴支援へお集まりいただけると幸いです。
また、判決後は16:15頃から東京都港区虎ノ門1-1-21 新虎ノ門実業会館 地下1階(東京メトロ虎ノ門駅出口に直結するビル内)の貸会議室にて、ご遺族、弁護団、支援者たちで報告集会を開催します。ぜひ、こちらにも多くの方にご参加いただけたらと思います。
明日は、どうぞよろしくお願いいたします。
○これまでの経過
2013年8月 Aさんは要介護高齢者向けの居宅介護支援サービスや家事代行サービスを展開する都内の株式会社Y社に入社。
2015年5月20~26日 6日間、24時間ほぼ休みなく個人宅で住み込み勤務
2015年5月27日 入浴施設で倒れ、救急搬送。
2015年5月28日 急性心筋梗塞のため亡くなる。
2017年5月 遺族が渋谷労働基準監督署に労災を申請。
2018年1月 労災の不支給決定が下る。その後の審求請求、再審査請求も退けられた。
2020年3月 遺族が国を相手に労災認定を求めて東京地裁に提訴
2022年9月29日 東京地裁判決で原告側敗訴
2023年1月24日 東京高裁にて控訴審開始
○前回期日の様子
6月27日、東京高裁で家事労働者過労死裁判の控訴審結審期日が行われました。原告、被告共に全ての主張を出し終えました。当日は、亡くなった家事労働者のご遺族が約10分間の意見陳述を行い、裁判を闘う意義を裁判所に訴えました。以下はその抜粋になります。
「私は、亡き妻が100%労働者であったことを主張します。国は、妻について実態調査を省略し、単に固定観念で家事使用人であると判断を下したのではないですか。だとすれば、国の主張はあまりにも杜撰で形式的なものであると言わざるを得ません。国は労働基準法が公布されてから、家事使用人の問題を、現在まで77年間放置して来ました。多くの家事使用人、女性を差別して来た労基法116条が改正されるまで私は闘います。亡き妻に代わって家事使用人問題を社会に発信し続ける決意です。」
ご遺族は、亡くなったAさんが労基法、労災保険法上の労働者として仕事をしていたことや、多くの家事使用人を差別してきた労基法116条が改正されるまで闘い続けることを訴えました。
控訴審初回期日と同様に、傍聴支援には傍聴席を埋め尽くすほどの支援者が集まりました。傍聴支援は原告への大きな心の支えとなっていますし、裁判官へも確実に影響を与えられています。お忙しい中、傍聴に参加頂きありがとうございました。
〇前回期日の報告集会の様子
裁判後は、近くの貸会議室にて、原告、弁護団、支援者らが集まり、報告集会を行いました。以下はその報告集会の内容です(申し訳ありません、当日の発言は文章の分量の関係で全員分を掲載できませんでした)。
・亡くなったAさんのご遺族(息子さん)
「母を労働者として認めてほしいのが一番大きいです。地裁判決は残念な結果でしたけど、ここまできてよい感触がありますので、いい判決が出ることを心から願っています。全国で苦労されている女性の家事労働者の皆さんたちに、労働基準法含めて、様々なサポートがなされるように切に願っています。」
・原告代理人 指宿昭一弁護士
「本件の一審判決は不当にも敗訴判決でした。ただこれが報道されたことで、戦後、労基法制定70年以上を経って、この問題が日の目を見ることとなりました。家事労働者に労基法を適用するか否かが非常に大きな問題になってきました。おそらく、これから法改正も含めて議論がされる可能性は大きいと思います。本件は控訴して闘ってきましたが、控訴審の場合はだいたい一回結審が多いんですけど、1年半続いてきました。それだけで見てもかなり異例だと思います。過労死認定の新基準が2021年9月に出ました。本件は旧基準の時代に起こっている事件です。新基準が適用されるかということも、最後の方では問題になりました。新基準は、医師を含む専門家が最新の知見に基づく判断をすべきなのだから、本件について業務起因性を認めるべきだと最後に主張しました。これまでの期日の進行の感触はいいので、いけそうだという感覚は持っています。」
・ジャーナリスト 竹信三恵子さん
「この間、介護保険の幅が狭まってきています。なるべく適用させないようにしようとしていろんなものを保険の対象外にして、勝手に自分で買えよって話にどんどんなってきています。家事労働者を拡大解釈して使って、そういうものを担わせようとしているのははっきりしているわけです。そちらの方に目をやると、今日のテーマになってる人たちをどう守るのかというのは介護の根幹問題になってきています。」
・家事労働者 土屋華奈子さん
「家の人から直接指示をもらうのが家事使用人で、労働基準法が適用されないとなっています。つまり、労働者ではないということですが、家の人から直接指示をもらうお仕事はたくさんありますよね。例えば引っ越し屋さんとか、植木屋さんとか。タンスはここに置いてくださいと指示される引っ越し屋さんは労働者で、洗濯物はここに片付けて、といわれる「家政婦」は労働者ではないんですか?以前、厚生労働省の方に聞いたことがありますが、お返事は「それが家事ならば、そうです」というお返事でした。つまり、同じ指揮命令系統にあっても家事をする人は労働者と認められないのです。ならば、私は労働者ではありません。私は「家政婦」ですから。これは、差別です。私は、法律に書いてあるからと、厚生労働省のお役人に真正面から差別されたのです。今はこんな時代で、正しいとされるいろんな価値が崩れてきていますけれど、それでも「差別はダメだ」という価値観が正しいとされることは変わらないと思います。司法は正しいことを示してくれるはずです。第二審の判決は勝訴となると信じています。」
・POSSEボランティア 過労死遺族
「元々この裁判は法律の壁が立ちはだかっていて、法廷の中だけで普通に闘ったとしても勝てる見込みがあまり見えませんでした。指宿弁護士は裁判を引き受ける時に「勝てる見込みは3%」とAさんの遺族に話していました。しかし、遺族と共に様々な取り組みを行った結果、世間の反応も大きくなり、国もそれを無視できなくなってきたことで法改正の可能性が見えてきました。今日も多くの方々が支援に駆けつけてくれました。皆で良い判決を勝ち取りましょう。」
〇国が家事労働者への労働基準法適用方針との報道
厚生労働省は27日、家事代行などを担う労働者に対して、労働基準法を適用すべきだという方針を示しました。労基法関係の研究会では、近いうちに最終的な考え方をまとめ、労働政策審議会の議論を経て、具体的な法制度が決まるようです。原告と共に国に求めてきた法改正が実現しようとしています。
「法が守ってくれない「家事労働者」、77年ぶり差別解消か 労働基準法「除外」から「適用」へ厚労省が大転換」(2024年6月28日・東京新聞)
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