仮設で在宅困難、介護施設に殺到 岩手沿岸部半数が定員超過
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20111003_04.htm
東日本大震災で被災した岩手県沿岸部で、介護施設の入所希望者が増加している。在宅介護をしていた家庭が被災して仮設住宅に移らざるを得なくなるなどし、在宅介護の環境が悪化しているため。定員を超過して受け入れている施設もあるが、急増する入所希望に対応しきれないでいる。
津波で自宅が流された陸前高田市の女性(83)は避難していた特別養護老人ホームに夫(95)を預け、市内の仮設住宅で1人で暮らす。
夫は要介護度4で、ほぼ寝たきり。「最後まで家で世話をしたい」と訪問介護、デイサービスなどを利用して自宅で老老介護を続けていたが、震災のショックで気持ちが落ち込んでしまったという。
「ずっと頑張り通してきたけれど、自信がなくなった。腰も痛いし血圧も高くなり、この調子では面倒を見られない」とため息をつく。
県長寿社会課によると、7月末現在、県内の介護入所施設の15%に当たる52施設が定員を超過しており、超過人員は1施設平均3.7人。中でも沿岸部は48%の25施設で、入所者が定員を上回る。
厚生労働省は震災を受け県内全域で、定員を超過して受け入れてもよいとの方針を示した。被災者支援として来年2月までは、介護サービス利用料の免除などの負担軽減措置も講じている。
沿岸部の施設では、在宅介護する家族からの入所希望が後を絶たない。被災施設の受け皿の役割も期待され、大船渡市では待機者が震災前より2、3割増えた特別養護老人ホームもある。
「仮設住宅は介護するには狭いし、周囲も気になりストレスがたまる」「家が残っても仕事を失い、生活再建で精いっぱいな家族もいる」。甚大な被害を受けた陸前高田市の介護施設関係者は、疲弊する家族の厳しい介護環境を心配する。
一方、施設側の受け入れは限界に来ている。
陸前高田市の介護老人保健施設「松原苑」は、定員190人を10人ほど超過して受け入れている。比較的介護度の低い高齢者の部屋の入所者を増やしたり、利用者が減ったデイケアの職員を当てたりして、やりくりする。入沢美紀子看護部長(55)は「家族が求めるサービス水準に応える上で、これ以上(入所者を)増やすのはなかなか難しい」と話す。
2011年10月03日月曜日
〈コメント〉
被災を契機にして介護施設へ入居を希望する人が増加している。「在宅介護の環境が悪化」が主な原因となっているが、このような状況に対して、多くの施設は急増する入所希望に対応することができていない。いったいどうしてこのようなことが起きてしまっているのだろうか。
「津波で自宅が流された陸前高田市の女性(83)」は「「ずっと頑張り通してきたけれど、自信がなくなった。腰も痛いし血圧も高くなり、この調子では面倒を見られない」とため息をつく」。ここからもわかるように、訪問介護やデイサービスを利用していたとしても、家族の支えなしに在宅介護は困難だ。そのため震災などで家族の状況が変化すると、途端に在宅介護の基盤は揺らいでしまう。
日本社会で要介護者がまともな生活をしていくためには、「まとも」な施設に入所するか、家族の支えを前提とした在宅介護を選ばなければならない。「まとも」な施設が少なければ、在宅介護を選ぼうとするのは無理からぬことだ。家族のなかに要介護者の介護をする「余裕」がある場合には、在宅介護も可能であろう(しかしそれは、女性差別を前提としているのだが)。一方で、そのような「余裕」がないなかでも在宅介護を選択せざるを得ない場合には、その矛盾が、しばしば介護殺人や高齢者虐待などといった悲惨な事件を引き起こす。
東日本大震災は、これまで要介護者の生活を支えてきた家族の状況を一変させてしまった。被災したことによって、家族が介護をする「余裕」が失われてしまったのである。在宅介護は家族の支えなしに成り立たないので、まともな生活をしていくためには施設に入所するしかなくなってしまう。しかし、これまで日本社会は家族に要介護者を押し付けてきたために、震災によって顕在化した要介護者たちを吸収するだけの「まとも」な施設が十分整備されていない。その結果として、本記事のような状況が生じてしまっている。
「厚生労働省は震災を受け県内全域で、定員を超過して受け入れてもよいとの方針」を出して、この状況に対応しようとしている。しかしそれだけで対応しようとしても、全体の介護サービスの質を下げ、劣悪な介護環境が広がってしまうだけである。また、施設に入居できず、劣悪な環境のなかでの生活を迫られる人も増加していくだろう。根本的な解決のためには、誰もが家族に頼らずともいきていけるよう、これまで介護政策のあり方を見なおしていくとともに、「必要」を満たすだけの十分な量の介護環境を整備していく必要がある。
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