【10月10日 河北新報:焦点 石巻市、全避難所あす閉鎖 仮設敬遠、ゼロ遠く】
(http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20111010_01.htm)
宮城県石巻市は11日、東日本大震災発生後、ピーク時で宮城県内最多の約5万人が身を寄せた避難所を全て閉鎖する。冬を目前に被災者の住まいの確保が進み、同県全体で最大約32万人に上った避難者は石巻市の避難所閉鎖後、300人台となる見込み。ただ地元から離れた仮設住宅に対する敬遠などから当面避難所が維持される地域もあり、県内全域で「避難者ゼロ」となる見通しは依然立たない。
宮城県内の避難者数の推移はグラフの通り。最も多かったのは3月14日で、県人口の約14%に当たる32万885人が1183カ所に避難。ライフライン復旧や仮設住宅の整備とともに減少し、7月29日には1万人を割った。
県内では7日現在、743人が7市町の52カ所で避難所生活を続ける。市町別では避難者が多い順に石巻市372人、女川町228人、気仙沼市105人、大崎市27人、南三陸町6人、蔵王町3人、川崎町2人。石巻市の閉鎖に伴い、避難者数は半減するとみられる。
石巻市内では8月の段階で必要な仮設住宅の大半が完成したが、市郊外への入居が敬遠され、避難所暮らしを続けるケースが続出した。市は仮設住宅団地と中心部を結ぶ住民バスを運行するなど居住環境の改善を進め、11日の全避難所閉鎖にこぎ着けた。
自宅の修繕待ちで当面の住まいがない42世帯74人には、公民館など4カ所を「待機所」として開放。臨時の住まいとして利用してもらう。
200人以上が避難を続ける女川町では、町発注の2、3階建て仮設住宅が今月末に完成する予定。避難所暮らしの解消に一定のめどが立った。
これに対し気仙沼市は避難所解消のめどが立っていない。「長期の避難所生活は好ましくない」(同市総務課)としながらも、一関市に整備した仮設住宅団地の不人気などから当面は数カ所で避難所運営を続ける。
避難所生活が長期化した理由について、宮城県災害対策本部の小野寺好男事務局長は「仮設住宅の用地確保が難航したのに加え、被災者の強い地元志向で内陸部への入居が進まなかった。今後は避難所の早期解消を図り、生活再建を支援していきたい」と話した。
最多で約5万5000人が避難した岩手県は、8月末に県内全避難所を閉鎖した。
◎自分だけ取り残された/気仙沼100人超「あす」見えず
東日本大震災の避難所を石巻市が11日に全て閉鎖するのに対し、気仙沼市では現在も100人以上が避難所で暮らしている。自宅の修繕を待つ人、遠方の仮設住宅への転居を敬遠する人。避難所にとどまる理由はさまざまだ。気仙沼市は避難状態の早期解消を目指し、仮設住宅への転居を促すとしている。(1.27面に関連記事)
市中心部の高台にある市民会館。最も多いときで700人以上が身を寄せた。震災後7カ月がたつ現在も、残る避難者は約40人。日中は人影が少なく、どの部屋も閑散としている。
「自分だけ取り残されたようだ」と語る60代の女性は、気仙沼地区の仮設住宅の入居を希望したがかなわなかった。「いつまでも地元にこだわってはいられない」。近く、仙台市の民間借り上げ住宅に移り住む予定だ。
一時、約1800人が避難した総合体育館も現在は16人だけが暮らす。自宅の修繕を待つ男性(66)は「水道が開通すればすぐに出て行くつもり」と言う。
仮設住宅の抽選に外れ続けたという別の高齢男性は「通院を考えると、中心部にいたい。人気が低い県外の仮設住宅は、遠方になるので行きたくない」とうなだれる。
市によると、最大で2万人以上いた避難者は仮設住宅への入居が進んだため次第に減り、現在は100人余り。大半の人が自宅や民間賃貸住宅の修繕を待っているとみられるが、空きの少ない市内の仮設住宅への入居を希望して残る人も少なくないという。
岩手県境を越えて一関市千厩町に建設された仮設住宅には、160戸以上の空きがある。市は「住み慣れない場所への抵抗感があるかもしれないが、聞き取り調査を通して入居を促していきたい」と話している。
◎不安のみ込み一歩/生活再建、模索の道
11日に市内の全避難所を閉める石巻市。市が閉鎖日を通知した9月17日以降、多くの避難者が津波被害を受けた自宅の2階や郊外の仮設住宅などへの転居に踏み切った。一方で自宅の修繕待ちなどのため、臨時の住まいとして市が用意した公民館などの「待機所」に移る人も。避難者はさまざまな思いを抱えながら、生活再建に向け新たな道を模索する。
市によると9月9日現在で、避難者1352人のうち833人が、仮設住宅に当選しながら避難所生活を続けていた。通勤や通学に不便な郊外への転居を敬遠したのが主な理由とされる。
市が全避難所46カ所を11日で閉鎖すると通知した後、職員は避難所を巡回。郊外の仮設住宅向けに格安の住民バスを用意したことなどを説明した。10月8日の集計では、避難所の代替施設となる待機所への入居者は74人にとどまる見通し。
震災直後から同市大街道小に身を寄せる無職佐藤清治さん(78)は、半壊した自宅に家族3人で戻る。1階の修繕が終わらず、2階に寝泊まりする。「この先どこかを転々とするのも気が重いし、これ以上学校にも迷惑を掛けられない」
郊外の仮設住宅に入居した人もいる。同市清水町の無職青山信二さん(65)は市中心部への入居を希望したが、市のあっせんで9月末、郊外の河北地区にある仮設住宅で1人暮らしを始めた。
車を持たず、近くに知り合いはいない。今は歩いて20分ほどのコンビニエンスストアで日用品を調達する。今後は住民バスやカーシェアリングなどを利用する予定だ。「不平不満を言っても始まらない」と前を向く。
同市湊小に避難してきた無職西条定夫さん(85)は自宅の修繕が済む10月末まで、待機所となる近くの公民館に身を寄せることを決めた。西条さんは「足腰が弱く、寝泊まりできる2階での生活に不安がある。もう少し、お世話になりたい」と話す。
市は「震災で職を失った人や高齢の単身者ら避難者はそれぞれ、抱える事情が異なる。避難所を出てからも、できる限りの支援を続けたい」としている。
◎児童・生徒、忘れられぬ7ヵ月/部活や集会、通常通りに
体育館や教室を避難所として開放していた石巻市の小中学校18校(5日現在)は12日以降、部活動や集会、定例行事などを通常通り実施する。校舎内に震災前の活動が戻ることに、学校関係者は安堵(あんど)の表情を見せた。
「新しい環境になっても、頑張ってください」。石巻市蛇田中で7日夕、生徒会主催で開かれた避難者の「退所式」。体育館で生活してきた20人に向けて生徒110人がメッセージを唱和したほか、激励の手紙を避難者一人一人に渡した。
蛇田中には震災時、最大で約1800人が避難。4月の授業再開後、教職員の離任式を近くのショッピングセンター駐車場で行ったほか、全校集会を校内放送で済ませるなどの対応を余儀なくされた。
運動部は近くの小学校を間借りしたり、廊下での筋力トレーニングなどに練習メニューを切り替えたりした。同校2年でバレー部の斎藤佳介君(14)は「これからは震災前の使い慣れたコートで練習できるのは、やっぱりうれしい」と話す。
避難者に体育館を開放してきた門脇中は、震災による火災で校舎が全焼した門脇小の児童216人を受け入れている。避難所の閉鎖を受けて22、23日、門脇小と交代で文化祭を開く。ステージ発表に向け、近く練習を再開させるという。平塚隆教頭は「生徒は避難者の様子を間近で見ることで、震災を風化させずに生活できた。この7カ月間を前向きに受け止めながら、学校環境を整えたい」と静かに話した。
記事にあるように、確かに避難所の閉鎖によって「避難者数」は減少するが、しかし“「避難者の数」の減少”ではなく、“被災者の生活を確保・改善していくこと”を目的とすべきである。
避難所の閉鎖の通知によって多くの避難者が郊外の仮設住宅や被災した自宅、待機所(公民館など)へ移らざるを得なくなった。仙台市内の仮設入居件数が9月頃からまた増加してきているのだが、この各避難所の閉鎖が原因の1つと考えられる。この時期まで避難所に残っていた被災者は高齢者がほとんどであり、避難所を出て、コミュニティが分断されてしまった後の生活が危ぶまれる。
入居先としては仮設住宅が多いが、外壁に断熱材が使用されていない、雨樋がない、郊外にあるため生活利便施設(買い物、福祉など)が何もないなどの問題が起きている。こういった仮設受託に入居する高齢者や障害者には特に配慮しなければならない。
そのような状況の中で、石巻市が行なっている仮設住宅向けの住民バスは移動やコミュニケーションの場としてもとても大きな意味がある。その他にも、仮設住宅団地内に診療所やコンビニを設けるというように、仮設住宅での被災者の生活に寄り添った支援を行っていくべきではないだろうか。
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