岩手県にある機械部品製造会社サンセイで働いていたAさんの父親が、2011年8月に、脳幹出血が原因で51歳の若さで亡くなりました。慢性的に長時間労働が続いており、記録が残っている2002年以降、月60時間から80時間の残業に従事していました。特に倒れる直前の3ヶ月は88、111、85時間と過労死ラインを遥かに超える労働時間でした。
Aさんの母が労災申請した所、2012年夏、花巻労働基準監督署は、「発症前2か月においては残業時間の平均が98時間とほぼ100時間に近い時間外労働に及んでおり、請求人は著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事していたと認められる」として、労災であると認定しました。しかし、サンセイは過労死であることを認めなかったため、今回の提訴に至りました。
(事件の詳細はPOSSE代表の今野のブログ記事「「過労死」はどのように明るみにでるのか? 遺族が裁判を起こすまで」もご覧ください)
Aさんを中心にPOSSEが支援して、準備を行い、この裁判を迎えました。第一回期日の当日もPOSSEで活動している学生ボランティアや連携しているユニオンの組合員も応援に駆けつけ、30人近くの人が集まりました。
裁判では、Aさんは自身が原告として意見陳述を行い、父親の働き方について話したあと、自身の就職の経験を話しました。Aさんは高校卒業と同時に上京して、ブラック企業で働き精神的に追い詰められることがありました。過労死は一企業の問題ではなく、社会全体の問題だと捉えて解決しなければならない、「皆が安心して働ける社会にするために、私は最後まで諦めません」と力強く宣言して、意見陳述を締めくくりました。
今回の訴訟の論点は、すでに労基署が労災であると認定していた過労死を、株式会社サンセイおよび当時の役員3人に認めさせ、損害賠償を請求することです。しかし、Aさんの父親が勤めていた会社(サンセイ)は、労災認定がおりた5か月後に解散し、役員が代表を務める別法人に工場や土地などの資産を売り払ってしまっています。そのため、サンセイに対してそのまま損害賠償を請求することができなくなり、サンセイの財産を引き継いだと思われる関連会社も同時に訴えるという複雑な手続きを踏んでいます。Aさんら原告は責任逃れのための「偽装倒産」ではないかと主張しています。
Aさん自身は、「ようやくここまで来たな」と、当日までの準備を振り返っていました。2011年の夏に父親を亡くしてから6年半の歳月が経っており、POSSEで1年以上の準備を経てようやく裁判にこぎつけました。Aさんの一言に、この裁判に対する強い思いを感じました。
次回期日は3月16日(金)13時30分から、今回と同じ横浜地裁で行われます。この過労死裁判は、ただ会社に過労死を認めさせ、金銭的な解決を勝ち取るというだけではなく、やはりAさんの「過労死をなくしたい」という思いがあり、過労死問題を社会に訴えかけていくという大きな意味を持っています。この裁判は、今の日本社会を変えていくための第一歩になると思います。「過労死をなくしたい」と考えている人は、ぜひ次回の裁判の傍聴にお越し下さい。
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