の続きです。(ざっくりいうと、地図の整合性やリアリティを求めて描き直しをしようとしていたら思いのほか話が大きくなり、いつの間にかテセウスの船になりそうになり、地図を描き直す("再測量"の)モチベーションが消えた、というお話でした。)
2022年の活動を改めて振り返る
ここで一旦、昨年の空想地図に関する活動について(若干そうじゃないものも含めますが)振り返ってみます
4月……「マニアフェスタ Vol.6」(@幕張)出展
10月……「あいそめ市」(@根津)に出展
同月……「再測量」ちょっとずつやる(2021年のつづき)
12月……「空想地図学会2022」開催
随時……地方都市を舞台にした小説を読む
2022年は個人的な事情として転職活動を行っていたことなどがあり、筆の進みはもはや例年と同様にきわめて遅くありましたが、一方で少しずつ多奈崎市の地図に手を入れるモチベーションが頭をもたげてきたり、それ以外にも空想地図にまつわる活動をいくつか行ったりしていました。
空想地図活動でやりたいのは「"多奈崎"という物語をつくる」こと?
前述の振り返りで記載しましたが、2022年は地方都市を舞台とした小説を(あまり多くはありませんが)いくつか読みました。山内マリコ(富山出身で地元やそれ以外の地方都市を舞台とした作品が多い)や辻村深月といった作者による現代日本の東京以外を舞台とした作品を読み、まちや都市と物語の関係性についてすごくざっくり考えたり、自分でも「まち」がキーになる物語を綴りて〜〜〜〜と思うなどしました。
ここで突然ですがChakuwikiというサイトを御存知でしょうか。「ご当地の噂」という、「ご当地のイメージを噂から明らかにするプロジェクト」がメインコンテンツのひとつにあるwikiのサイトで、日本のさまざまな地域の「噂」が箇条書きで纏められています。
わたしはかねてよりこのサイトを結構好きで閲覧していたのですが、つまるところこういったサイトは、人々の"まち"に対する認知の集積体であり、そこで暮らしたり訪れたりした一人ひとりの「物語」の集積があり、その集積が街の「噂」や「文化」といった大きなひとつの物語を作りだしたり作り出さなかったりしているわけです。
2022年はそういった意味で「街」と「人」の関係性について思いを馳せつつ、「多奈崎」という街がここに暮らす「人」にどのように作用するか、作用した結果その「人」が「街」にどのような物語を残していくかを考えたいというところに至るなどしました。つまり空想地図という活動を通してわたしがやりたいのは「多奈崎」という街が生み出す「物語」を考えたり発信したりすることであるということです。こうした考え、つまり架空の「街」が生み出す物語を作り上げる、という観点は、これまで言語化したり深く考えたりしていなかっただけで、多奈崎を作り始めたころからあったものであるとは思います。しかし2022年は従前以上にそれを強く意識した年であったことは確かで、同時に「多奈崎市」の作品を作る上でそうした「物語性」を創作の軸に意識的に据えたのはこれが初めてであると自覚しています。
かつて2020年に試行錯誤したドラスティックな再測量は、あくまで多奈崎市の地図のすがたを(日本における)現実に即した形にする、というところを深く重視したものでした。即ち、日本各地の地理や都市に関する知識・知見を限りなく高い解像度で「再現」するという試みであり、現代日本風の都市空間を舞台とした空想地図作者の多くが志向するところと同じ方向を向いていました。それから2年が経ち、むしろ「多奈崎市」という個性ある物語を創作する、という方向性にシフトした結果、「再測量」を実施するにしてもその方向性は「リアル」一辺倒であった従前とは異なり、物語を持ったひとつの「まち」を作り上げる上で違和感のない舞台に「多奈崎市」を成形するという方向性に、若干ではありますが変化が生じることとなりました。
なんだか自分で文字にしてもわかるようなわからないような感じですが、上記のような志向のシフトチェンジにより、テセウスの船的にほぼ全部入れ替わってしまう再測量よりも、これまでの多奈崎のすがたを大きく変えないような、細部のディティールを納得行く形に直す「再測量」を少しずつ2022年は実施しするというところに至った、というのが今年の多奈崎の地図に関する活動でした。
その他の活動――「空想地図学会」のオフライン開催
多奈崎市に関する一年は上述のように過ごした一方、さまざまな空想地図作者の交流の場である「空想地図学会」を12月に開催するなどしました。
※プロジェクターを直視してしまったのでものすごく青い写真になってしまいましたが、雰囲気は伝わると幸いで……
「空想地図学会」とはなんぞやということで、ざっくり言うと空想地図の作者が一同に介して各自の制作物を発表したり、その話を聞きに行けたり、交流したりできますよ〜という場です。「学会」と銘打っていますが広くゆるく参加してどうぞというスタンスで、新型ウイルスが流行る前の2019年に第一回を開催、2回めを翌年似開催しようと思ったら思いっきり流行期に被り中止になり、それ以降一度も開催できずにいたもので、感染が少し落ち着いたタイミングを見計らっての満を持しての開催でした。
2019年に実施した際はお陰さまで盛況でしたが、今回も多くの方の参加を賜ることができました(ありがとうございます👏)。前回から3年経過しており、当時は作品を作ってなかった新たな作者が登場したり、初回から来ていた人もパワーアップした作品や発表をしてくれたりと盛り上がりまして、普段のSNSをはじめとするオンラインでの交流とは一味違った空間を提供できていたのであれば幸いに存じています。感想はtwitterで「#空想地図学会2022」と検索ください。
自分の作品を作り上げるのも一つですが、空想地図を作る人は年々増えており、また空想地図という趣味はまだまだ知らない人も多くおります。そうした"空想地図界"の盛り上げにもまた、少しでも一役買えたら嬉しいなど考える今日このごろであります……
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