remusuimin 徒然草

つれづれなるままに
心にうかんだもの
頭にひらめいたもの
見たもの
聞いたもの
読んだもの

ヤングremusuimin-その7

2013年01月27日 | ひとこま漫画
      
店内は人がいっぱいでした。奥行きの深い座敷は吹き抜けのように高い天井で真ん中に大きないろりが切ってあり、築数百年たっている柱も建具も赤色電燈の光に飴色にかがやいて江戸時代にタイムスリップしたような感じです。
「オンザロックちょうだい」宿場にきて西洋の酒は無いかなとおもったらスコッチがでてきました。
ウィスキーをひとくち口に含むと酒精が身体に一斉に拡散していき、この二日間の艱難辛苦が頭をよぎり酔いがそれらを少しずつほぐしていきます。
ふだんシングル一杯でダウンする男が三杯いただき意識もうろうとなったままそこに寝込んでしまったようです。
「もし、お客様」という遠いところから鈴を転がすような女性の声でうっすらと意識がリターンしていきました。
「まことに申し訳ございませんが、閉店のお時間でございますので、よろしくお願いいたします。」
起き上がって辺りを見回すと座敷でぽつんと一燈灯りのともっているのは僕の卓の上だけで先ほどの喧噪は霧のように掻き消えておりました。
僕を揺り起こしていたのはうら若い細面でひとえまぶたが切れ上がった美形のにょしょう。
藍鼠の縞小紋に、朱鷺色と白のいち松のくっきりした伊達巻で乳の下の縊れるばかり…という鏡花の小説から抜け出たような美しい方が僕におおいかぶさって……
「もしも~し、お客さぁ~ん看板だよお勘定してくんな」というドマ声で再び覚醒、というか現実に還る。

あれから40年近い時間が経ち、その後原付免許にくわえて自動車の免許を取得してクルマに乗れるようになってもっと安全に日本中行かれるはずなのに、ダックスホンダを買ったときほどの高揚感はまったくありませんでした。50ccだともしかしたら還って来れないかもしれないという大きなリスクがあるということが却って冒険心をかき立てなのかもしれません。もう、ダックスに乗るなんてことはないでしょうがこのシリーズを書くことで空想の中で大旅行をしてきた思いです。ご愛読感謝いたします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿