私の施設にいる日野さん（仮名）は98歳の
認知症のおばあちゃんです。
寝たきりですが、声掛けには返事もして
くれます。
鼻歌を歌ったり、ニコニコしたり
幸せな自分だけの世界を持っていました。
ある日、介護士が夕食のために離床し、車椅子に乗せました。その後、食事を食べるホー
ルに出てくる途中に、スタッフルームの入り口に置いてある酸素ボンベの足に車椅子のフットレストを引っ掛けて、車椅子から
前のめりに転落させてしまいました。
勢いよかった為か、ぶつかった瞬間に前方に吹き飛んだと言う感じだっだそうです。
前額部から鼻にかけて打撲、内出血、
鼻血がでており、右肩、右膝に打撲痕がありました。
転落直後は
👵「痛いわー痛いわー」と言っていましたが、その後はいつも通りの鼻歌を歌いニコニコしていました。血圧の異常もなく、そのまま様子を見る事になりました。
数日後を訪室し挨拶しに行きました。
内出血は紫から黄色くなりかけで
かなり痛々しい感じになっています。
声掛けに開眼されましたが、なんかおかしい。
目があっち向いてホイみたいになっている。
眼球編位と言う症状が出ている。
これはダメなやつだ。
頭に血が溜まっているかもしれない。
そう思いすぐに受診し頭部CTを撮る。
👨🦳「あーやっぱり、血が溜まってるね」
👩「やっぱりですか💦」
👨🦳「家族呼んでくれるか？」
🧑🏻🦳「先生、いつもお世話になってます。
母はどうですか？」
👨🦳「この間車椅子から落ちたでしょ？その時
に頭をぶつけていてね、徐々に出血が広
がってきているね。それが原因で、ご飯
も食べれなくなってきている見たいで
ね。病状的には手術するしかないかな？
と思うんですが、現実は難しいかもしれ
ませんね」
🧑🏻🦳「母は98歳なんですが、手術に耐えられま
すか？」
👨🦳「正直、体力的にと言うよりは認知症があ
るので、手術をしてくれるか？と言う事
になります。寝たきりで98歳で認知症で
となると、なかなか厳しいと思いま
す。」
🧑🏻🦳「では、このまま弱っていくと言う事で
しょうか？」
👨🦳「ご飯を食べて誤嚥性肺炎を起こす可能性
もあります。慢性硬膜外出血による影響
も出てくると思います。何もしなけれ
ば、徐々にそうなる事が予想されます」
🧑🏻🦳「わかりました。98歳まで生きてこれた
ので、大往生と思います。」
👨🦳「施設で点滴しながら様子を見ていきま
しょう」
日野さんは看取りとなり、施設で点滴をしながらゆっくり過ごしてもらう事になりました。
施設で点滴？ってなると思いますが
私の施設では点滴は当たり前にしています。
本人、家族が望むならと言う形ではありますが、先生もニーズを重視してくれています。
生活の場で点滴なんて！
苦しむ時間を伸ばすだけ！
点滴して浮腫が悪化する
私たちのエゴだと言われるかもしれませんが
点滴をする事で脱水が改善されて食事が取れるようになった人がいます。
点滴をする事で、全くご飯を食べない認知症の人に、介護士が頑張って食べる練習を繰り返しして、食事を食べれるようになった人がいます。
病院では全くご飯食べなくて困っていた人が
施設に帰ってくるとご飯を食べれるようになった人がいます。
偶然ではなく、点滴をして食事が食べれるようになった人達を目の当たりにしたら
甘くて美味しいものを食べさせてあげたくなるんです。
カップラーメンを美味しいって食べる
マクドナルドのプライドポテトを
初めて食べたと言って、目を丸くする姿をみたら
もっともっとこの顔が見たいと
思ってしまったんですよね…。
だから、日野さんも大好きな甘いものを
少しだけでも食べてもらえるように
穏やかに最後のその日が来るまで
チャレンジすることにしました
甘い甘い和菓子や、ゼリーを食べて
👵「美味しいわー」って笑ってくれる
その一口に意味がある
家族との時間も作る
コロナでなかなか会えなかったけど
面会をしてもらう機会を作った
転落事故から2ヶ月後に
日野さんは亡くなりました。
亡くなる数日前から嘔吐を繰り返していた
ので、最後は食べる事は出来ませんでした。
日野さんが亡くなった日の話は
また次に……。
日野さんを転落させた介護士
日野さんを看取った介護士は
同じ人でした。
