パラドクスが見せる艶

弥勒半伽思惟像。ご存知でいらっしゃいますでしょうか。あの美しい肢体を。
少年から青年に移り変わる時特有の、未完成故の美とでも申しましょうか。あの、あやうくも禁欲的な美しさが、わたしにはなんとも隠微に思えてなりません。
お分かりいただけますでしょうか。このパラドクス。

高校生だったわたしには、たるみもなければ筋肉もない美しい裸体に掛かる、今にもはだけてしまいそうな柔らかな布の儚さが、繊細な隠微さを醸し出し、あからさまな如意輪観音よりもずっと、心を騒がせたのです。


「addicted」の歌詞を読んでいて、ふと思い出したのです。弥勒半伽思惟像。

自分は余裕な立場で相手を溺れさせて弄んでる。――わけではないかも知れんけど、結構鬼畜なことしてるよな。
そこには確実なエロさが潜んでるんやけど、というか、下心を浮き彫りにした歌詞なんやろうけど、何故か、ストイックさを感じてしまう。

傲慢で禁欲的な俯瞰者。
手と身体と口は動いてるけど、心は動かない。
メンタル的には禁欲的なんやけど、視覚的にはエロい。
このギャップに刺激される。


もっとこういうモノに出会いたい。