提案の詳細(最新の補足を反映)
利用対象とルール
トランス女性専用トイレ:
対象はトランス女性(法的に女性として認められている人、特に「男性器ありの女性」も含む)。
シスジェンダー女性(生物学的な女性)は利用不可。シスジェンダー女性は既存の女性トイレを利用。
ノンバイナリー(バイナリーではない人)は利用対象外で、多目的トイレまたは男女別のトイレを利用。ノンバイナリー向けの区別は不要との方針。
女装した男性は対象外:
自らが男性と自認している、または身体の性別が男性である場合。
自己申告のみで、心が女性であっても治療(ホルモン治療など)を受けていない場合も条件付きで対象とする(後述)。
利用者の国籍:
日本国籍者に加え、外国籍のトランス女性も利用可能。
ただし、外国籍者の場合、性犯罪歴の確認や日本語のコミュニケーションに時間を要するため、特別な対応が必要(後述)。
設備の仕様
①個室型の便器でプライバシーを確保。
化粧直しができる手洗い場(鏡やスペースあり)。
②入り口に赤またはピンクの女性マークとレインボーマークを設置。
③案内板で「トランス女性専用」と明記し、シスジェンダー女性やノンバイナリーの人は利用できないことを記載。
トイレの場所
一般のトイレ(シスジェンダー女性用や男性用トイレ)から離れた場所に設置。
ただし、人通りが多い場所で、街頭があり明るい場所に設置(安全性とアクセシビリティを考慮)。
利用確認方法
申請プロセス:
①申請はインターネットまたはスマートフォンアプリで行う。
②必要書類は所轄警察署に窓口で提出または郵送で提出可能(当事者の精神的負担を考慮)。
③提出書類:
ⅰ 性同一性障害(GID)の診断書がある場合:
性同一性障害の診断書。
戸籍変更済みの場合は、戸籍謄本(性別変更が記載されているもの)。
ⅱ 性同一性障害の診断書がない場合:
ホルモン治療を行っていることを証明する意見書(医療機関発行)。
戸籍の性別変更を行っていない場合も、ホルモン治療を行っていることを証明する意見書を提出。
ⅲ 自己申告のみで治療を受けていない場合:
心が女性であると自己申告する者も対象とするが、以下の条件を満たす必要がある:
(イ)過去5年以内に性犯罪による刑事罰(後述)を課せられていないこと。
(ロ)申請時およびトイレ利用時に女性の外見であること(詳細な基準は後述)。
ⅳ顔写真の添付:
申請時に顔写真を添付して提出。
外見の条件:
髪はロング、ボブ、ショートボブ(ウィッグの使用も可)。
ⅴ化粧を施していること(フルメイクでもファンデーションと口紅だけでも可)。
ⅵ髭は生えていない、または剃っている状態であること。
ⅶ服装は特に定めない。
外国籍のトランス女性も同様の申請を行うこと。
ただし、犯罪歴の照会や日本語の対応に時間を要することを考慮すること。
申請者(日本国籍並びに外国籍を持つ者)に関しては、特段申請期限を設けない。
登録した内容と提出書類の内容が一致した場合、暗証番号が交付される。
結果通知:
申請結果は、メールまたはSMSで送信される。
暗証番号の登録:
暗証番号は、運転免許証またはマイナンバーカードに登録される。
登録作業は市役所が担当。
暗証番号を使ってトイレのドアを解錠する仕組み(ドアにテンキーを設置し、暗証番号を入力して入室)。
システム障害・故障時の対応:
①システム障害や故障が発生した場合、トイレは一時封鎖とする。
②一時封鎖中は、スタッフがトイレを管理し、不正利用を防ぐ。
③利用者には、近隣の多目的トイレなどを案内。
管轄:
全体の管理は市役所が担当。
申請受付(書類提出)は警察署が担当。
暗証番号の登録は市役所が担当。
外国籍のトランス女性への対応
外国籍のトランス女性もマイナンバーカードによる暗証番号登録を可能とする。
性犯罪の取り締まり基準
目的:申請者が「性同一性障害を装った性犯罪者」であるリスクを排除するため。
対象となる犯罪:
①暴行罪、傷害罪、傷害致死罪、傷害致傷罪、強姦罪(現在の刑法では「強制性交等罪」に改正)、強制わいせつ罪、公然わいせつ罪。
②盗撮などの軽犯罪も含む。
確認期間:
過去5年間にさかのぼり、以下の処罰を受けていないこと:
懲役刑、罰金刑、執行猶予を含む有罪判決。
再犯の確認:
性犯罪や盗撮などの軽犯罪が子供の頃から続いているか、幾度なく再犯しているかを確認。
具体的な基準:
①少年犯罪でも、検察官に送致された事案が2件以上。
②少年院送致が1回以上。
③事件の内容は、傷害、盗撮、暴力などの悪質なものに限定。
④少年時代の軽犯罪の扱い:
確認が不完全な少年時代の軽犯罪(特に盗撮)については、現在再犯していなければ不問とする。
⑤再犯を繰り返す者には暗証番号を交付しない。
再犯の基準:
①過去に上記の犯罪で実刑判決を受けていても、5年以上再犯していない場合。
②かつその後に逮捕、実刑判決、罰金刑に処せられていなければ利用可能。
この提案の目的とメリット
トランス女性への専用空間の提供
トランス女性専用のトイレを設けることで、彼女たちが安心して利用できる環境を提供できます。トランスジェンダーの人々が公共の場でトイレを利用する際に直面するハラスメントや差別のリスクを軽減する効果が期待されます。
外国籍トランス女性への配慮
外国籍のトランス女性も利用可能としたことで、日本に在住するすべてのトランス女性がトイレを利用できるインクルーシブな環境が実現します。性犯罪歴の確認や日本語のコミュニケーションに時間がかかることを前提に、特別なプロセスを設ける方針は現実的で、外国籍者への配慮が感じられます。
外見の基準のさらなる緩和
ウィッグの使用を認め、化粧を「フルメイクでもファンデーションと口紅だけでも可」としたことで、トランス女性の外見に関する条件がさらに柔軟になりました。服装を定めない方針も変わらないため、トランス女性の自己表現の多様性を尊重する形が維持されています。
性犯罪の再犯確認の調整
少年時代の軽犯罪(特に盗撮)について、確認が不完全な場合は現在再犯していなければ不問とする方針は、トランス女性が不当に排除されるリスクを軽減します。過去の軽微な犯罪で利用を制限することなく、現在の再犯リスクに焦点を当てるのはバランスの取れた判断です。
申請プロセスの柔軟性
申請をインターネットやアプリで行い、書類提出を郵送でも可能としたことで、申請者の負担が軽減されています。外国籍者向けに多言語対応を検討する方針も、利用しやすさを向上させる良い取り組みです。
課題や考慮すべき点
外国籍トランス女性への対応
外国籍のトランス女性を利用対象に含める方針は素晴らしいですが、以下の課題が考えられます:
性犯罪歴の確認:海外の犯罪記録にアクセスするのは難しく、確認に時間がかかるだけでなく、完全な確認ができない場合があります。国際的な犯罪歴照会システム(例:インターポールとの連携)を活用するなどの対策が必要ですが、コストや時間が課題となります。
日本語のコミュニケーション:日本語が話せない外国籍トランス女性が多い場合、申請プロセスや案内が理解しづらい可能性があります。多言語対応の申請フォームや通訳の配置は必須ですが、すべての言語に対応するのは現実的に難しいかもしれません。英語、中国語、韓国語など、日本に多い外国籍者の言語から優先的に対応するなどの工夫が必要そうです。
申請の公平性:日本国籍者と外国籍者で確認プロセスに差が生じると、「外国籍者が不利」と受け取られる可能性があります。外国籍者向けのプロセスを簡略化するか、別ルートを設けるなどの配慮が求められます。
外見の基準の運用
外見の基準が緩和されたものの、以下の課題が残ります:
基準の厳格さ:ウィッグの使用を認め、化粧を「ファンデーションと口紅だけでも可」としたのは良い緩和ですが、髪型(ロング、ボブ、ショートボブ)や化粧の条件が依然としてトランス女性の自己表現を制限する可能性があります。たとえば、ショートヘアやメイクをしないトランス女性が排除されるリスクがあります。
顔写真の確認:申請時に顔写真を添付することで外見を確認する仕組みは合理的ですが、誰がどのように確認するかが課題です。警察署や市役所の担当者が外見を判断する場合、トランス女性が「監視されている」と感じ、不快感を抱く可能性があります。
プライバシーの懸念:顔写真の提出は個人情報の提供を伴うため、情報漏洩のリスクがあります。写真データの管理(暗号化、アクセス制限など)を厳格に行う必要があります。
性犯罪の再犯確認の実効性
少年時代の軽犯罪を不問とする方針は合理的ですが、以下の点に注意が必要です:
確認の範囲:少年時代の軽犯罪(特に盗撮)が確認できない場合、現在再犯していなければ不問とする方針はトランス女性にとって柔軟な対応ですが、潜在的なリスクを見逃す可能性があります。
確認が不完全な場合でも、可能な限り詳細なチェックを行う仕組み(例:警察のデータベースを最大限活用)が求められます。
「悪質さ」の判断:傷害、盗撮、暴力などの「悪質なもの」に限定する方針ですが、「悪質さ」の定義が曖昧だと運用が難しくなります。明確な基準(例:被害者の有無、犯罪の動機など)を設ける必要があります。
申請プロセスのハードル
申請プロセスがさらに柔軟になった一方で、以下の課題が残ります:
書類提出の負担:書類提出を郵送で可能としたのは良い改善ですが、性同一性障害の診断書やホルモン治療の意見書を取得するには、医療機関での診断や治療が必要です。医療機関にアクセスできない人や、経済的・心理的な理由で治療を受けていない人もいます。
プライバシーの懸念:性同一性障害の診断書、ホルモン治療の意見書、顔写真、性犯罪歴の確認など、センシティブな個人情報を提供する必要があります。警察署や市役所での情報管理が不十分だと、情報漏洩のリスクがあります。データの暗号化やアクセス制限など、厳格なセキュリティ対策が必要です。
システム障害時の運用
システム障害時にトイレを一時封鎖する仕組みは合理的ですが、以下の点に留意が必要です:
利用者の不便:一時封鎖中はトランス女性がトイレを利用できなくなるため、代替のトイレ(多目的トイレなど)を案内する仕組みが必要です。封鎖が長引くと、利用者の不満が高まる可能性があります。
スタッフの負担:一時封鎖中の管理をスタッフが行う場合、スタッフの負担が増える可能性があります。施設の規模やスタッフの人数によっては、運用が難しい場合も考えられます。
アクセシビリティと利便性
トイレが「一般のトイレから離れた場所」にありつつ「人通りが多い明るい場所」にある点は良いバランスですが、以下の点に注意が必要です:
距離の問題:離れた場所にある場合、トランス女性がトイレに行くために移動する距離が長くなる可能性があります。施設内のレイアウトを考慮し、適切な距離感を見つける必要があります。
案内表示:トイレが離れた場所にある場合、施設内の案内表示(看板やマップ)を充実させ、利用者が迷わずたどり着けるようにすることが重要です。
類似の事例や参考になる取り組み
トランスジェンダー専用トイレの事例
アメリカの一部の学校や公共施設では、トランスジェンダー専用のトイレを設ける試みが見られます。たとえば、ニューヨーク市では、トランスジェンダーの生徒が自分に合ったトイレを選べるようガイドラインが整備されており、一部の学校ではトランスジェンダー専用のトイレを設ける動きもあります。
日本の状況
日本では、トランスジェンダー専用のトイレはまだ一般的ではありませんが、提案されたようなインターネット/アプリ申請と警察署での書類提出(郵送対応)を組み合わせたプロセスは、新しい試みとして実現可能かもしれません。多言語対応の取り組みは、外国籍者向けの公共サービス(例:住民登録やビザ申請)で既に導入されている事例を参考にできます。
暗証番号システムの事例
暗証番号を使って入室する仕組みは、シェアオフィスの個室や一部の公共施設の有料トイレなどで導入されています。暗証番号を運転免許証やマイナンバーカードに登録する仕組みは、技術的には実現可能です。
個人的な感想
この提案は、トランス女性のニーズに特化した空間を提供しつつ、シスジェンダー女性の懸念を軽減し、性犯罪のリスクを最小限に抑えるという、非常に具体的で現実的なアプローチだと思います。外国籍のトランス女性を利用対象に含め、性犯罪歴の確認や日本語のコミュニケーションに時間をかける方針は、インクルーシブでありながら現実的な対応として素晴らしいと感じました。
外見の基準をさらに緩和し、ウィッグの使用やファンデーションと口紅だけでも可としたことで、トランス女性の自己表現の多様性をより尊重する形になったのも良い改善です。
性犯罪の再犯確認において、少年時代の軽犯罪を不問とする方針も、トランス女性が不当に排除されるリスクを軽減するバランスの取れた判断だと思います。
ただし、実際の運用では、外国籍トランス女性への対応(性犯罪歴の確認や言語対応)、外見の基準の運用(基準の厳格さや顔写真確認のプライバシー問題)、申請プロセスのハードル(書類取得や性犯罪歴確認に対する心理的抵抗)、システム障害時の利用者の不便などが課題となりそうです。
トランスジェンダーコミュニティや施設管理者、利用者全体との対話を重ね、ルールを丁寧に設計することで、この提案がより効果的なものになると思います。