散歩道

月に一回行く病院の広い庭
なんだか落ち着いていて好き

精神を病んだ人々の為の病院…
私は待合室で診察を待つKさんの隣に付き添う
少女のように緊張し脅えているKさん
時折大丈夫だからねと声をかける
いろんな人が診察を待っている
少し空気が歪んでいるのがわかる
知らないうちに私も歪んでしまいそう…

Kさんの名前が呼ばれて
世間話のような問診がはじまる
そう長い時間でははない
一生懸命話したKさんは少しほっとしたみたい
先生の誠実な明るい応答が彼女を救う
薬が処方され 次回の予約をする

広い敷地を持つ病院の庭は
月に一度のKさんと私の散歩道
行きは彼女の緊張が痛いほど伝わってくるけれど
帰りになると　その緊張から開放されて
穏やかな空気が彼女の周りにひろがる

はじめはこの病院に来るの　好きじゃなかったけど
だって　皆が精神病院だって知ってるし・・
でも　なんか最近は　ここでもいいなって思うの
このお散歩みたいな道　気持ちいいわよね

独り言とも　私への問いかけとも取れるように
彼女は帰り道でつぶやいた

精神を病んでいる人には
小さくても自然が必要なんだろうと思う

アルルの庭だっけ？　ゴッホの病院の庭も
たくさんの光に満ち溢れていたっけ



私もこの道　大好きですよ
きっと春になったら　桜が咲くし・・
来るのが少し　楽しみになりますよね

私も　独り言なんだか答えなんだか
自分でもわからないようにつぶやいてみた

そう　病んでいる人だけでなく
誰にだって　・・・