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激動の東アジア――中国に「政治的統一」の口実を与えた台湾総統選

2012年01月16日 12時12分28秒 | リバティ 学園 幸福実現党 関連  

激動の東アジア―

―中国に「政治的統一」の口実を与えた台湾総統選

[HRPニュースファイル153] 転載

台湾の総統選が14日に行われ、現職の中国国民党(国民党)の
馬英九総統が、対立する最大野党の民主進歩党(民進党)の
蔡英文主席を破って再選されました。

対中融和政策によって経済的・政治的な関わりを深める
国民党と、台湾の主権と独立を志向する民進党――
その選挙結果は、東アジアと日本の未来に大きな影響を
与える可能性があります。

私、矢内筆勝は12日から台湾に入って総統選挙を取材し、
14日の投開票を見届け、帰国しました。

投開票日の天気こそ、現地は曇りと雨でしたが、選挙戦は
まさに“熱い熱い闘い”でした。

今回の投票率は実に74.38%。前回の選挙よりは下回ったとはいえ、
文字通り、台湾を二分する激しい選挙戦が繰り広げられました。

台湾総統選は、有権者が国家元首(総統)を直接選ぶ選挙です。

台湾総統選は、中国大陸から外来して長らく独裁政治を敷いてきた
「外省人」を中心とした「国民党」と、台湾出身の「本省人」を
中心とした「民進党」が「台湾の統治権」そのものを争う
選挙であります。

それだけに、その真剣さと激しさは、世界の選挙の中でも群を
抜いています。

選挙の詳しい背景や分析は、別途、ご報告させて頂きますが、
本日はそのポイントを簡潔にお伝えさせて頂きます。

今回の総統選挙の争点を一言で表せば
「『両岸関係』(台湾と中国との関係)をどうするか」の一点に尽きます。

これまで国民党が推し進めてきた中国との「経済的な一体化路線」
を継続するのか、それとも、民進党が主張するように、台湾の
「主権と独立を守る」べく、中国とは一定の距離を置くのか――
まさに、台湾人自らが「台湾の未来」を選択する選挙でした。

結果、馬英九総統が勝利し、台湾は今後4年間は確実に、経済的な
中国との連携を一層深めていくことになります。

それは同時に、中国が台湾への経済的支配を一層強め、
それをテコに将来、政治的な支配をも強めていく危険性の増大を
意味します。

例えば、馬英九総統は2010年、中国とのECFT(経済強力枠組み協定)
を結び、中国との経済交流を劇的に改善しました。

その結果、台湾の財閥や企業の多くが大陸(中国)に進出して
合弁企業や工場を設立、現在は約100万人の台湾人ビジネスマンや
家族が仕事で大陸で暮らしています。

それは確かに「台中経済交流」の深化ですが、見方を変えれば、
2300万人の台湾人の20人に一人が、すでに中国の経済的「人質」に
とられている、とも言えるでしょう。

そして、そうした「中台融和」の前提として存在するのが、
「92年コンセンサス」(九二共識/一中各表)と言われる
両岸関係に関する「政治的認識」です。

これは中国側が提案し、1992年に中台の交渉機関が確認したと
されるもので、
「中国は一つだが、その解釈はそれぞれ違っていてもよい」という、
極めて曖昧な相互認識のことです。

つまり、
「中国も台湾も、まずは『中国』は一つであることを共通の認識としよう。

しかし、中国が認める『中国』とは『中華人民共和国』であり、
台湾が認める『中国』は『中華民国』でいい。
とりあえず、そこから交渉や交流を始めよう」というコンセンサスです。

今回の選挙で、国民党は「92年コンセンサス」を前提に
「経済的な中台融和」を一層推し進めるとし、一方、民進党は
「92年コンセンサス」は「中国による統一(台湾併呑)に
つながる」として否定するスタンスで、今回の選挙を戦いました。

今回、国民党が勝利したということは、「『92年コンセンサス』が
台湾人による信任投票で認められた」という解釈を中国に許すことに
なったことを意味します。

既に現地では、国民党を支持するテレビ局等が選挙結果を
そのように解釈し、大々的に報道しています。

つまり、中国は将来、台湾を平和裏に統一するための恰好の口実、
強力な政治的武器を今回の選挙で手中に収めたことになります。

特に、中国の新国家主席に内定している習近平氏は、台湾に
近い福建省の省長を務めた経歴を持ち、さらに妻の母方の叔父は
台湾に暮らしていると言われ、台湾の財閥とも深い繋がりがある
と推測されます。

当然、その経済力・政治力を武器に、虎視眈々と自らの手で
台湾統一を仕上げようとするはずです。

そうした中国に対して、果たして馬英九総統が経済的、
政治的に対峙し、台湾の主権と独立を維持することができるのか――

「民主国家」としての台湾の存在は、日本にとってまさに「生命線」です。

もし、台湾が中国に併呑されるようなことがあれば、中国は
台湾海峡を封鎖し、シーレーンを抑えて日本の資源を断つことが
できます。

そして中国は、台湾を太平洋進出のための軍事基地、「不沈空母」
となし、尖閣諸島、沖縄侵攻を進めていくことが予測されます。

その段階で、日本は中国の属国化を余儀なくされるでしょう。

すなわち、日本と台湾は「一心同体」の関係にあるのです。

私たち日本人は台湾に決して無関心であってはなりません。

台湾の今後4年間を担う国民党・馬政権と中国の動きを
注意深く見守り、日本は、かつての宗主国として、あらゆる経済的、
政治的な支援と手段を講じ、台湾の自由と独立を支援していくべきです。

「天は自らを助くる者を助く」――その格言は国家においてもあてはまる、
永遠の真理でもあるのです。

(文責・矢内筆勝)

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