マイナンバー法改正案が成立 マイナンバーの本当の狙いとは?
幸福実現党政務調査会 小川佳世子
◆システムの欠陥が露呈するマイナンバー
「便利になる」「行政効率が高まる」などとアピールしているマイナンバーカードですが、早くもシステムのほころびが出て来ています。
マイナンバーカードを使って、コンビニで住民票の写しや戸籍証明書などを受け取ろうとしたところ、別人の証明書が発行されるという不具合が、全国各地で報告されました。
また、マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」を使ったところ、まったく別人の情報が登録されていたというトラブルも相次いでいます。
このトラブルは、2021年10月以降に少なくとも7300件も確認されているとのことです。
自分の病気や通院の履歴を他人に見られる可能性もありますし、他人の医療情報をもとに薬が処方されたら健康被害が出る可能性もあります。
さらには、給付金や補助金などを受け取る銀行口座が、まったく別人のマイナンバーに登録されるというトラブルが6つの自治体で11件確認されたということです(5月25日時点)。
河野太郎デジタル大臣は「十分なセキュリティ対策に取り組んでいる」と強調して、マイナンバーカードを取得するようにアピールしていましたが、セキュリティ以前の大問題です。
◆法改正でマイナ保険証に一本化
こうした欠陥だらけのシステムを修正しないまま、政府は、マイナンバーのさらなる普及を急ごうとしています。
まずは「マイナンバーカードを作ったら最大2万円のポイントをあげます」というキャンペーンです。もちろん、このポイントの財源は私たちの税金です。
それでもカードの取得をためらっていた人に対して、政府はさらに強硬な手段に出ました。
「現在の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化します」という方針を打ち出したのです。
日本は国民皆保険の国ですので、健康保険証なら国民全員が持っています。保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化するなら、事実上、カードの取得の義務化と同じになります。
そしてこのたび、現在の保険証を廃止して「マイナ保険証」に一体化することを盛り込んだ、いわゆるマイナンバー法改正案が成立しました。これにより、正式に現在の保険証の廃止が決まります。
このたびの改正案には、行政機関が把握している個人の銀行口座をマイナンバーに登録するというルールも盛り込まれています。
国民の側から「登録を拒否します」返事をしない限り、自動的に口座番号とマイナンバーが紐づけされてしまうのです。
◆マイナンバーの本当の狙いは貯金税
実は、この「銀行口座が登録される」ということがマイナンバー制度の一番の狙いです。
政府は「補助金や給付金も、マイナンバーカードと銀行口座が紐づけられていれば早く振り込まれますよ」と訴えますが、一方で、銀行口座の情報が把握されれば、個人がどの程度預貯金を持っているかも分かるのです。
今までのマイナンバーの制度では、給料や年金収入など、個人がいくらもらっているかは分かっても、貯金や資産をどの程度持っているのかは分かりませんでした。
銀行口座が紐づけられ、情報が把握できるとどうなるでしょうか。
例えば、昨年度、急に物価高が進んだので、収入が少ない世帯は生活が苦しくなるだろうということで、5万円の給付金を出すという施策が取られました。
しかしながら、高齢者のなかには、現在では年間70万円ほどの年金収入しかなくても、若い時に自営業などをしていて、その時に持っていた土地や建物を売って得た預貯金が1億円ほどあるとしたら、余裕のある生活を送ることができます。
そうなると、マイナンバーで資産状況も把握したうえで、給付するかどうかを決める、という施策を取ることも可能になります。それどころか、「そんなに多くの預貯金があるのなら、税金を負担してください」という議論が出てくるかもしれないわけです。
もともと、マイナンバー制度を作った理由は「公正な給付と負担」にありました。
いわゆるマイナンバー法の第一条には、「行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図る」とはっきり書かれています。
ポイントは「負担」という文言です。つまり、「お金を持っている人には、それ相応の税金の負担をしてもらいますよ」ということです。
政府からお金をもらいやすくなるということは、反面、取られやすくもなるということです。
「貯金に税金をかけるなんて、そんなこと」と言いたいところですが、預貯金など資産への課税の必要性を訴える識者もいます。
さらに、財務省の財政制度審議会の議事録などを見ると「マイナンバー制度の活用などで、様々な資産の捕捉をしっかり行って、真の意味で負担能力に応じた負担を実現していくことが大切である」などという議論が交わされています。
つまり、預貯金をたくさん持っている人はたくさん税金を負担してくださいね、ということです。
お金を持っている人に負担してもらおうということは一見、正しいようにも見えますが、それまで真面目に一生懸命働き、収入のなかから税金も払い、コツコツ貯めた預貯金や資産を老後に税金で取られる社会になれば、真面目に働く人がバカを見ます。
◆財産の自由を守ることで国民の自由を守る
私たち幸福実現党は、収入や貯金を含む個人情報を政府が把握しようとするマイナンバー制度には反対しています。
それは、政府がこのような個人情報をもとに課税できるようになったら、国民の財産や自由は簡単に奪われるからです。財産の自由を守ることが、行動の自由や思想・信条の自由を守ることにもつながるのです。
幸福実現党の大川隆法党総裁は、マイナンバーについて、国民の収入について、全部、国が一元管理できるようになろうとしていると指摘し、「ある意味で、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』で描かれた未来社会に似た感じの「監視社会」に近づいているような気が、しないでもありません」(『政治哲学の原点』)と警鐘を鳴らしてきました。
さらに、マイナンバーのねらいは「貯金税」の導入であることも指摘しています。
そもそも、なぜ多額の税金の徴収が必要になるかといえば、政府が余計な仕事をし過ぎているからです。
最近では、コロナや物価高など、何かあればすぐに政府は補助金や給付金を出すようになりました。
しかしそもそも、物価高だからといって全員一律に給付金を出す必要はありませんし、コロナ対策として、必要以上に自由を制限しなければ、経済へのダメージも最小限にとどまったはずです。
私たち幸福実現党は、人間の幸福にとって、自由はとても大切なものだと考えています。自由があるからこそ、努力して道を開き、幸福をつかみ取っていくことができるからです。
政府に面倒を見てもらうことを望む人が多ければ、私たちの自由は奪われます。
目の前の便利さやメリットではなくて、自由を守ることを選ぶべきなのです。