ミサイル4発を日本海に撃ち込むなど、北朝鮮が相変わらずの挑発を続けている。今回は実験を控えたようだが、同国は大陸間弾道弾(ICBM)や潜水艦から発射する弾道ミサイル(SLBM)の開発も行っている。米軍も北朝鮮が核兵器を搭載したミサイルでアメリカ本土を攻撃する能力を持っていると見ており、脅威が現実化するのは時間の問題となっている。
日を追って高まる北朝鮮の脅威に対して、アメリカ政府はこのほど、北朝鮮に対する政策の見直しを検討し始めたようだ。米ウォールストリート・ジャーナル紙が報じたもので、選択肢は北朝鮮を核保有国として認めるというものから、軍事作戦で金正恩政権を転覆させるというものまで含まれるという。トランプ政権への交代にともなって、アメリカがゼロから北朝鮮政策を再考し始めたことが分かる。
こうした姿勢からは、アメリカが、北朝鮮の脅威を、東アジアの問題からアメリカ自身の問題へととらえ直そうとしていることがうかがえる。いくら北朝鮮の核ミサイル開発が危険だからといって、これまではアメリカ本土が脅かされることは考えづらかった。しかし、同国がICBMの開発を本格化させる中で、アメリカも自国の安全保障の問題として、北朝鮮の脅威に取り組まざるを得なくなっている。
このことは、日本にとっても、北朝鮮問題をとらえ直す必要があることを意味している。
核抑止とは脅し合いである。もし北朝鮮が、本当にアメリカ本土を狙えるだけの核攻撃の能力を持つようになれば、アメリカは北朝鮮を容易に攻撃できなくなる。核兵器で報復される恐れがあるからだ。しかしその場合、アメリカの核の傘に守ってもらっている韓国や日本には、本当の危機が訪れる。「日本の防衛を放棄しなければ、サンフランシスコを火の海にする」と北朝鮮が脅してきた場合に、アメリカがそれでも日本を守るという保証はどこにもないからだ。
北朝鮮がアメリカ自身の問題になるという意味は、アメリカにとって、北朝鮮の核能力が完成する前に体制を崩壊させるか、あるいは北朝鮮を核保有国として正式に認めてしまうかという、二者択一を意味している。トランプ大統領は、中国に圧力をかけて北朝鮮問題に取り組ませたいと述べている一方で、選挙中には、韓国や日本が核兵器を持つことを容認することも示唆している。
北朝鮮の核問題は、同時に日本にとっても核問題なのである。今になってようやく、敵基地先制攻撃をめぐる議論が本格化し始めた。このこと自体は前進だが、実のところを言えば、現在はすでに日本でも核保有の議論が行われていておかしくない段階であることは認識しておく必要がある。たとえ周回遅れだとしても、国を守るための議論を本格的にはじめなければならない。
(著者のブログより転載しました。)
秋田で北朝鮮のミサイル攻撃を想定した全国初の演習実施