「日の丸半導体」の凋落――
「科学技術立国・日本」の復活への道
[HRPニュースファイル347]転載
2012年7月27日
7月27日、富士通は半導体を生産する主力の三重工場を台湾企業に
売却する方向で交渉を始めました。
(7/27 日経「富士通、半導体の三重工場を売却 台湾社と交渉 」)
富士通は半導体製造部門を切り離し、ルネサスエレクトロニクス、
パナソニックとシステムLSI事業を統合。統合新会社は半導体の設計開発に
特化し、生産は外部企業に委託する予定です。
また、7月2日には、アメリカの半導体大手マイクロン・テクノロジーが、
日本の半導体大手で、今年2月に会社更生法の適用を申請した
「エルピーダメモリ」を買収すると発表しました。
その結果、世界のDRAM(記憶用半導体)業界は、業界首位の韓国の
サムスン電子、2位の韓国のSKハイニックス、米マイクロンという
3大メーカーが9割を占める状況となりました。(7/4 ロイター)
「エルピーダメモリ」は、経産省が旗振り役となった「国策企業」で、
1999年に日立とNECの半導体製造部門が統合され、2003年に三菱電機の
当該部門を吸収した日本唯一のDRAM専業メーカーでしたが、今年2月、
業績不振を理由に会社更生法を申請していました。
同じく7月2日、経営不振に陥っている日本の半導体大手
「ルネサスエレクトロニクス」は、国内19半導体工場のうち、
11カ所を3年以内に閉鎖や売却して整理する方針を発表。
一部工場は世界最大手の台湾TSMCに売却する方針です。(7/2 ロイター)
「ルネサスエレクトロニクス」はNEC、日立製作所、三菱電機の半導体事業
を設立母体とし、各地に分散している3社の工場をそのまま引き継ぎ、
十分な整理統合を進めて来ませんでした。
1980年代、「日の丸半導体」は世界市場で80%のシェアを席巻し、
「世界の工場」と謳われ、世界の半導体市場を制覇した「黄金期」を
迎えていました。
1990年、半導体売上高の世界シェアは、NEC、東芝、モトローラ、日立製作所
の順で、日本のトップ3社で、世界シェアの約3割を占めていましたが、
90年代半ばから、韓国と台湾のメーカーの急速な追い上げを受けました。
現在の半導体トップ3社は、インテル、サムスン電子、テキサスインスツルメント
で、この3社で、世界シェアの約3割を占めています。
(2011/12/6 EE Times Japan「2011年の世界半導体売上高ランキング」)
政府は1996年から5年毎に「科学技術基本計画」を策定。第一期(1996年~)
では政府研究開発投資は5年間で17兆円、第二期(2001年~)では同24兆円、
第三期(2006年~)では同25兆円を投下。第四期(2011年~)では同25兆円を
投資予定です。
⇒ http://www.jst.go.jp/tt/pamph/tt20120202-2.pdf
自民党政権時代から、政府は「科学立国・日本」の復活をかけ、1996年から
15年間で計66兆円の政府研究開発投資を行って来ました。
年間では防衛費と同じく、GDP1%相当の投資がなされ、半導体分野にも
多額の投資がなされて来ましたが、成果は必ずしも出ていません。
政府は研究開発の投資対象を再検討すべきです。
2011年に閣議決定された「第4期科学技術基本計画」では
「震災からの復興、
再生の実現」「グリーンイノベーションの推進」
「ライフイノベーションの推進」
「科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革 」が柱として
掲げられています。
⇒ http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/4honbun.pdf
しかし、今計画で力点が置かれている「再生可能エネルギー」は、例えば、
太陽光パネルでは、安値で世界市場を席巻する中国系企業に太刀打ちする
ことは容易ではありません。既にドイツやアメリカでも太陽光パネルメーカー
が相次いで破産、撤退しています。
グローバル社会の競争の中で日本が生き残る道は、今後とも
「科学技術立国」しかありません。
科学技術分野への投資は今後とも積極的に推進すべきですが、投資対象分野
は、日本の生き残りを懸け、戦略的重点化(投資対象分野の選択と集中)を
図るべきです。
幸福実現党は、交通革命、航空・宇宙産業、防衛産業、ロボット産業等の
科学技術で世界をリードする政策を掲げています。
政府も「科学技術イノベーション」を掲げるのであれば、新興国とコスト
競争を行なっているような分野にではなく、21世紀の潮流を予測し、
「新分野のフロントランナー」となり得る未来産業分野に思い切った
戦略的投資をすべきです。
(文責・黒川白雲)
執筆者:黒川 白雲 (53)
政務調査会長
公式サイト: http://kurokawa-hakuun.hr-party.jp/news/
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