ガンマ線バーストのほとんどは、非常に質量が大きい星の核が崩壊したときに発生する高エネルギーの放射線と考えられている。
新しいコンピューターモデルでシミュレーションしたところ、6500光年以内で発生したガンマ線バーストが地球に届けば、オゾン層を破壊して酸性雨を降らせ、地球寒冷化を引き起こす恐れがあることが示された。
オルドビス紀(4億8800万~4億4300万年前)の終盤、繁栄していた海洋生物の70%が大量絶滅したのはこういった天災が原因だったかもしれない。
アメリカ、カンザス州にあるウォッシュバーン大学の天体物理学者で、研究を率いるブライアン・トーマス氏はそのように考えている。また、今回のシミュレーションは、大規模なガンマ線バーストが約10億年ごとに地球への到達範囲内で起きる可能性も示唆している。ただし、放射線が地球に真っすぐ向かわなければ影響はない。
「現在、いて座方向に8000光年の距離にある大質量星WR104が潜在的な脅威だ」とトーマス氏は指摘する。しかし、他の天体物理学者たちにこれといった動揺はない。「この研究は、近距離でガンマ線バーストが起きたらどうなるかを示しているわけだが、科学者はよくそのような考え方をするものだ」と、NASAの天体物理学者デイビッド・トンプソン氏は言う。同氏はフェルミ・ガンマ線天文衛星のプロジェクト副責任者でもある。
また同氏は、将来ガンマ線バーストが地球にもたらす危険を次のように例えている。「自宅の物置きでホッキョクグマと出くわすようなものだ。可能性がないわけではないが、限りなく小さいので心配しても意味がない」。
カンザス大学の古生物学者ブルース・リーバーマン氏は2004年、ガンマ線バーストがオルドビス紀の大量絶滅を引き起こしたという理論の構築に協力した。ただし、今回の研究には参加していない。
リーバーマン氏によると、一般に氷河期の到来が大量絶滅の原因と考えられているが、その説には疑問の残る部分があり、「大量絶滅を伴わない氷河期も複数あった」と指摘する。しかも、オルドビス紀の氷河期は比較的短く、わずか50万年ほどで温暖な気候に戻った。まるで、何か異常な出来事が氷河期を引き起こしたかのようだ。
今回の研究を率いたトーマス氏と同氏の指導教員だったエイドリアン・メロット氏はこれまでに、オルドビス紀の大量絶滅の最中に南極の上空で、宇宙からなんらかの衝撃を受けたときに匹敵する高レベルの紫外線が降り注いでいたことを突き止めている。
そしてリーバーマン氏は、カブトガニの仲間の節足動物である三葉虫が絶滅したのはオルドビス紀の出来事に関連していると考えている。三葉虫のほとんどは海底の泥の中で暮らす。しかし、一部の種は若い時期を浅瀬に浮いて過ごすため、紫外線にさらされやすい。ただし、リーバーマン氏もNASAのトンプソン氏と同様、「将来のガンマ線バーストを心配して夜も眠れなくなるようなことはない」と話す。
同氏は今回の研究を、宇宙の中で地球が弱い存在であることを指摘したものと評価している。「この研究は自然淘汰や適応といった事柄について新たな視点を与えてくれた」。
この研究をまとめた論文は、「International Journal of Astrobiology」誌に提出された。
Illustration courtesy NASA/CXC/M.Weiss
天文学者の間では、ガンマ線バーストは通常、大質量星が燃料切れを起こして崩壊するときに発生すると考えられている。
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