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発行日:4/30
宮崎正弘の国際ニュース・早読み <北朝鮮のミサイル発射は日韓は当然ながらロシア極東軍も警戒態勢を取っていた
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)4月30日(日曜日)
通算第5273号
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北朝鮮のミサイル発射は「自爆」という結果だったが
日韓は当然ながらロシア極東軍も警戒態勢を取っていた
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北朝鮮は4月29日、早朝にミサイル発射実験を行った。
平壌の北東、北倉から発射された中距離弾道ミサイルは「KN17」と米軍はみており、これは失敗したとはいえ、空母キラーという異名をとる。
おりしも米空母カールビンゾンが、対馬沖から日本海へ入った、そのタイミングを狙っており、そのうえ格別に留意すべきは、ミサイルは北東へむかって発射されたことである。米軍筋は、ミサイルは44キロ飛翔し、北朝鮮領内に落下したと分析した。
四月にはいって、5日、16日、そして今回は三回目だが、いずれも失敗した。
失敗は北朝鮮の技術的貧困、あるいはミサイルの欠陥からくるものか、あるいは意図的に失敗させてはいるが、ある目的のために一連の実験ではないのかとする見方もある。
すでにオバマ政権の時代に、ミサイルを電波妨害で破壊する研究が開始されているが、その研究成果の報告はまだ出ておらず、北のミサイル失敗は米軍が妨害電波を出したからという観測もあるが、ミサイル内部の電子命令系統は、外側から隔絶された設計になっている。
したがって米軍の電波妨害が成功しているとは考えにくいのではないか。
むしろ北東へ飛ばすと、その先は日本海ではなく、ロシアである。
ロシアへ向かわせ、途中で自爆させているのだ。つまり技術力が格段に向上していることを北朝鮮は見せつけ、米国、韓国、中国ばかりか、ロシアに示威したとい解釈も成り立つ。
おりからNYの国連では安保理事会が開催され、ティラーソン国務長官は「深刻な危機」と分析し、ロシアや中国との論戦の最中だった。
中国の王毅外相は「問題解決の鍵は中国にはない」と盛んに逃げをうった。ティラーソンは「話し合いは意味がない。過去に何回も騙されている」という意味の発言をした。
この直後に、北のミサイル実験のニュースが飛びこんで、中国が主張していた「平和的解決」も国連安保理事会の緊急会合では虚しく聞こえた。
ロシア代表はガジノフ外務次官で、「もし米軍が先制攻撃を行えば、破局を迎える」と横やりを入れていた。
またロシアは中国とともに「六者協議」を再開して話し合いを続けるべきと主張したが、安倍首相は訪問先のロンドンの記者会見で「六者協議再開という環境にはない」と、楽観的観測を否定した。
▼日本では警戒、監視態勢つよまったが
「この状況は戦後最悪の危機である」と有力政治家の発言が続く。
日本ではミサイル発射ニュースの直後から、「安全確認」を目的に東京の地下鉄は十分間、停車した。
ほかに北陸新幹線も停車して、被害を避ける準備に入った。
すでに秋田県男鹿半島などでは避難訓練が行われており、日頃の平和ぼけから防御への頭に切り替えが行われつつある。
地下鉄の場合は、地下シェルターとしての態勢がとれるか、どうか。いや地下鉄の構造に、そういう能力があるのか。鉄道にしても、ミサイル被害がもしでた場合、いかなる措置を必要とされるか、政府は具体的検討に入った。
ミサイルは失敗しても、その自爆あるいは自壊場所によって、残骸が墜落する危険性を伴い、あるいは日本海であってもイカ漁船などが操業中の海域に落ちれば被害が出る。
陸続きの朝鮮半島から中国、ロシアの国境付近も、落下の危険性の潜在的ポイントとして加えておくべきだろう。
じつは4月29日の北朝鮮ミサイルは失敗したが、落下を警戒してロシア極東では警戒態勢が取られていたのだ。
極東防空識別圏内で「アラート」が発せられ、東部軍区(ハバロフスク)ではS400対空ミサイルシステムが稼働した。
「ミサイルの残骸が露西亜領内に落下する危険性に備えた」とビクター・オゼロフ(ロシア連邦上院軍事委員長)が発言した(アジアタイムズ、4月30日)。
一連の北朝鮮擁護発言をくりかえしてきたロシアとて、政治的思惑と世界政治の攪乱、アメリカ主導への当てつけ、トランプ外交への妨害などが目的で、計算づくでなされた政治発言はロシアの地位回復を企図した政治的ジェスチャーである。
そして、矛盾するかのように極東ハバロフスク軍区の警戒態勢入りがなされている。