このため、日本は、打撃力の使用を伴う作戦は米軍に一任し、中国が保有している対艦弾道ミサイルと対地攻撃能力に対抗できる対艦ミサイルの長射程化(500キロ以上の射程でトマホークと同じ大きさになる)、同ミサイルへの対地攻撃能力の付加が重要であり、米軍の作戦との一体化も考慮して、地上配備型の精密長射程ミサイルの開発・装備化(射程1000キロ)に注力しなければならない。

 また、速やかに核兵器に代わると言われている「極超音速滑空ミサイル」やその性能に近い極超音速ミサイルの開発・装備化に着手すべきである。

 この際、日本に300キロ以上飛翔する弾道弾を持つことに反対する米国、韓国、日本国内の一部の勢力が存在することに配慮し、周到な論理的裏づけを用意しなければならない。

7 継戦力・抗堪力の強化

 国民、マスコミ、政治家の抵抗感は強いであろうが、対中国抑止まで考えた防衛戦略が今、日本に必要である。

 国民の生命財産や政経中枢、自衛隊施設の防護のための抗堪力の確保や人員・装備・弾薬などが圧倒的に不足している自衛隊の継戦力の向上、また、例えば米空軍が日本に残留し戦い続けるための基盤である民間飛行場を含めた戦う体制の整備は、まさに喫緊の課題である。

 それらの防衛体制を整備するために、今、国会が閉会中審査をやるならば、すぐに防衛費をGDP(国内総生産)2%以上にする手立てを考え、実行に移すことである。そして、財務省主導ではなく、防衛省主体(NSC)で体制を再構築しつつ、かつ、運用していくことが肝要である。

 これらの提言は、主要なポイントだけを列挙したものであるが、筆者の実務経験を通じた一種の警告である。

 非現実的であると考えられるであろうか。もし、非現実的で、実現が不可能であるとするならば、日本はもはや今後の厳しい安全保障環境で生き抜くことはできないだろう。