地域の特色を活かした生涯現役モデル構築を!――農業編[HRPニュースファイル1470]
http://hrp-newsfile.jp/2015/2371/
文/幸福実現党・鹿児島県本部 副代表 兼 HS政経塾 4期生 松澤 力(まつざわ・いさお)氏
◆高齢化・後継者不足で増加する耕作放棄地
農林水産省によると、日本の耕作放棄地は20年前に比べて約8割増加し、農地全体の1割を占める約40万ヘクタールにまで達しています。これは滋賀県の面積に匹敵する広さです。
農家の高齢化や後継者不足などによる離農が原因とされています。一度農地を使わなくなり耕作放棄地となってしまうと、土壌が荒れてしまい、再び農地として活用することが困難になってしまいます。
また、同じく農林水産省のデータでは、現在の農業従事者数は約227万人で、平均年齢は約67歳となっており、今後数年で70万人以上の農業従事者が引退するとの試算もあります。(8/4日本経済新聞)
2014年度の食料自給率(カロリーベース)も5年連続で39%となるなど、日本の食料自給率は先進国の中で最低水準が続いております。(8/7日本経済新聞)
今後の農業の課題として、農地集積などによって大規模で効率的な農業生産体制を構築していくとともに、意欲のある高齢農家の方々が、生涯現役で農業を続けていける仕組みを構築することも必要であると考えます。
◆年間120万人が訪れる農産物直売所「さいさいきて屋」
農業の厳しい現状の中、愛媛県今治市に高齢・小規模農家の方々が活躍されている農産物直売所があります。
それが、カンブリア宮殿(テレビ東京)でも特集された「さいさいきて屋」です。商圏人口が10万人にもかかわらず、この直売所には年間120万もの人が訪れ、売上高は年間27億円に上ります。
販売されている商品は、新鮮な旬の野菜・果物や地元名産品の柑橘類、瀬戸内海の魚などの食材が多数並びます。併設されているカフェでは、巨大な今治のイチゴが山盛りになっているケーキも非常に人気です。
地元客だけでなく、県外からわざわざ泊りがけで買いに来る方もいるほど活況な直売所ですが、この農産物直売所づくりには、高齢化する農業を逆手に取った独自の仕組みがありました。
◆農家の「やる気」が原動力!
農産物直売所「さいさいきて屋」に出荷する農家約1,300人のほとんどは、高齢・小規模・兼業農家の方々です。
少量生産の農家に「きゅうり一本でも出してほしい」と呼びかけ、JAおちいまばりの企画により2000年に小さな直売所としてスタートしました。
すると、自分たちで育てた新鮮な農産物に値段を設定し自身の名前を付けて販売する喜びに、農家の方々が目覚めました。
また、市場に出荷したくても農産物の出荷量や規格などのハードルに苦しんでおられた少量生産の農家の方々に、販売できる道を開くことになりました。
現在では、農家の方々が直売所で少しでも良い売場を確保しようと、早朝から行列ができるようになっています。
高齢農家の中には、直売所から毎日配信される自分の商品の売上メールが届くことをとても楽しみにされている方がいるほど、農産物直売所の事業を通して、高齢・小規模・兼業農家の方々に「収入」と「生きがい」を提供しています。
農家の方々の「やる気パワー」が、農産物直売所「さいさいきて屋」の活況を支えています。さらに、生きがいを持って仕事をされている農家の方々の姿を見て、若者が農業に参入するケースも増えています。
◆農家と地域にも愛される直売所
「さいさいきて屋」では、出荷農家が夕方売れ残った商品を持ち帰るルールになっています。
ただ、出荷農家の収入を出来る限り上げるため、直売所としても「売れ残りゼロを目指す」取り組みを行っています。
その取り組みは、売れ残りの野菜をパウダー加工する工房の建設や地元の幼稚園・小学校に直売所の商品を使った料理や食材を提供し、販路拡大することなどがあります。
また「さいさいきて屋」では、買い物に不便な近隣の離島などに暮らす高齢者の方々の手助けのためネット通販も始めています。
さらに、直売所へ出荷をしたい離島の農家の方々の支援のため、島ごとに決まっている商品回収所に納品された農産物については1ケース100円で商品回収を行っています。
このような様々な取り組みを通して、農家と消費者を結び、お客様だけでなく農家・地域の方々にも愛される農産物直売所づくりを行っています。
◆超高齢社会に備えた生涯現役モデルづくりを!
今回は、愛媛県今治市の農産物直売所「さいさいきて屋」における画期的な運営方法と農業分野の生涯現役モデルづくりへの新しい取り組みについて書かせていただきました。
日本では団塊の世代が75歳以上になる10年後、平成37年には超高齢社会が到来するとも言われております。今後、年金・医療・介護などの社会保障費が年々増大していく中、各地域・業界においても、特色や強みを活かしながら、元気でやる気・経験を持っておられる高齢者の方々が生涯現役で仕事ができる働き方を創造していくことは非常に重要であると考えております。
今後も日本の未来の発展のため、生涯現役社会構築に向けてもさらに努力して参ります!
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