幸福実現党
江夏正敏の闘魂メルマガ vol.53
2015年11月3日発行
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江夏正敏 幸福実現党
政務調査会長のオフィシャルブログ
http://enatsu-masatoshi.com/
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1、江夏正敏の「闘魂一喝!」
「日本の漁業は復活できる」
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前回のメルマガで、日本の漁業が衰退している大きな要因として“乱獲”の問題があると指摘しました。
では、どのような施策を行えば、日本の漁業が復活するのかを述べていきたいと思います。
●魚を計画的に獲りましょう
今回の結論をざっくりと簡単に言うと次のようになります。
「現代は昔と違って、魚を獲る技術がとても進化したので、根こそぎ魚を獲ってしまいます。
昔から『親の仇と魚は見つけたら獲れ』と言われているように、どんな小さな魚でも、魚がいたら全部獲ってしまうのです。まあ、漁師の本能と言ってしまえば、それまでですが。
そこで、日本近海を巨大な“いけす”と考えてみましょう。その中の魚を全部獲ってしまったら、次世代の卵を産むことすらできません。
その結果、その“いけす”には魚がいなくなってしまいます。
ですから、必要な分だけ獲って、残りは産卵させて、魚の量が一定になるようにコントロールすれば、ずーっと長く漁業ができます。
年間の漁獲枠を決め、魚が大きくなるまで待って、一番おいしい時期に獲れば、高く売ることができるし、消費者もおいしい旬の魚を食べられます。
また、計画的に魚を獲るので、浜での加工場も、万遍なく稼働できて無駄がなくなります。一気に水揚げされて、腐らせたり、餌用に回される心配がなくなります。
また、魚を買うバイヤーも、計画的に仕入れができるので、値段が安定します。
さらに、漁業者にとっても大漁で値崩れさせることなく、売り手の意思で、売値を主張することができます。
安く買い叩かれそうならば、その日の漁獲量を減らせばよいのですから。
もともと、年間の漁獲枠は決まっているので、安く買われそうな時に、その日の漁獲量を増やす必要はないのです。
つまり、漁獲量の枠をしっかりと決めて、計画的に資源が無くならないようにコントロールすることで、
漁業者も、小売業者も、消費者も、旬な美味しい魚を適正価格で楽しむことができるのです」
●ノルウェーの例
ノルウェーでは「個別割当方式」で漁獲できる数量が船ごとに厳格に決まっています。漁船は豪華で大型化していて快適と言われています。
例えば、一度に1000トン獲れる場面であっても、その半分以下しか獲らないようです。漁師さんは、価格が下がらないように分散して水揚げをしたいと考えているからです。
われ先に自分の腕にものを言わせて魚を獲ろうとする日本とは、かなり考え方が違うようです。
●たくさん獲ってもさばき切れない
魚を一度にたくさん獲っても、浜での加工処理工場がさばき切れません。冷凍や加工の処理が追いつかなくなるのです。
計画的に漁をすれば、特定の日に集中することがないために加工処理工場の稼働日数が増えて仕事が安定します。その結果、鮮度を含む品質向上にもつながっていきます。
●日本では「よーいドン」で一気に獲ってしまう
一方、日本の場合は、同じタイミングで漁船が競って漁に出るので、水揚げのタイミングも集中することが多く、
魚価が下落するだけではなく、水揚げした魚の加工日数がかかるので鮮度が落ちてしまいます。
魚価が安いだけではなく、できた加工品の評価も落ちて安くなってしまうのです。味が悪くなるのです。
このような状況で加工された水産物を食べたら消費者は離れて行ってしまいます。まさしく負の連鎖です。
●科学的に考えた漁獲枠を決めよう
いままでの議論で、何となくお分かりになったと思います。
まず日本の漁業で必要なことは、科学的にどのぐらいの量の魚を獲っても、資源が減らずに増えていくのかを調べることです。
その科学的な知見に基づいて、年間の漁獲枠を決めるのです。この科学的な漁獲許容量をABCと言い、厳格な漁獲枠をTACと言います。
実は、日本ではABC以上のTACが設定され、漁期にさらに増枠するという信じられない施策を行っているようです。これでは資源が枯渇していきます。
●分かれ道―「オリンピック方式」と「個別割当方式」
日本は漁獲枠(TAC)を決めたとしても、「オリンピック方式」を採用しています。ここが分かれ道です。外国では、「個別割当方式」なのです。
「オリンピック方式」とは、実力主義のことです。簡単に言えば「早いもの勝ち」なので、漁師の間で競争です。
漁期が始まれば休むことなく価値が低い小魚であっても獲り続けます。値段が安いのに。できるだけ一度に多く獲らないと、他の漁師さんに負けるので、一気に港に持ち帰ります。
浜では冷凍や加工が追い付かず、漁期は短く、雑に魚が扱われてしまいます。大量の魚があるので値崩れします。
漁業者も、水揚げされた魚を処理する冷凍加工業者も、必要以上に大きな設備と人員を短期間でそろえないとさばき切れません。
効率が悪く、多くの無駄が発生し、しかも魚の値段が安いままです。これではいけません。
●個別割当方式とは
「個別割当方式」とは、漁業者や漁船ごとに、個別に年間で漁獲できる魚種ごとの数量を、科学的根拠に基づき明確に規定する制度です。
ですから、焦ることなく、計画的に自分のペースで漁をすることができるのです。そのメリットを片野歩氏の意見を参考に並べてみます。
(1)資源が回復し安定する。
(2)小型の魚や“大漁”水揚げが回避され、魚価が上昇し水揚げ金額が増加する。
(3)価値の高い旬の時期に獲ることで、美味しい水産物の供給が増え、魚離れを防ぎ、需要を増加させる。
(4)価値のある原料が増えることで、付加価値の高い水産加工品の比率が高まり、水揚げ金額だけでなく、加工業者の売上げも増加する。
(5)漁業者の労働条件が大幅に改善する(給与の上昇、休暇取得が容易になる、利益が出ることで漁船の設備が良くなる、若者の就労が増え後継者不足の問題が解消する)。
(6)水揚げ地が水産資源とともに再生し、加工・冷蔵・物流等様々な産業が生まれる。
このように余裕を持って漁業に取り組めるようになります。専門的にはIQ、ITQ、IVQなどの割当の方法がありますが、ここでは述べません。
●資源管理あってこその漁業
漁業者にとって大切なことは、水揚げ金額が多いことです。
一度に他の漁船とともにたくさんの獲物を獲って「大漁」になっても、価格が下落したのでは利益向上につながりません。やはり、産卵する魚の資源は必ず残しておくべきです。
日本のように、種火が消えたことに気付いてから慌てて火をおこすようでは、回復までに必要以上の時期を要し、多大な経済的な損失と水揚げ地の疲弊が起きてしまうのです。
資源管理あってこその漁業に発想を変える時が来ています。
これからは「いかにたくさん獲るか」の腕の見せどころではなく、決められた数量の中で、「いかに水揚げ金額を増やすか」が腕なのです。
水揚げが分散することで、鮮度面でもより良い状態が保てます。そして加工場の稼働率・稼働日数も増加します。
大漁旗を振って大漁を崇め、一つの資源を獲り尽くしても、次は別のターゲットに向かって、それも獲り尽くしてしまい、最後は獲る魚が全ていなくなってしまうことが怖いのです。
●漁業者を納得させるために
とはいえ、漁獲枠を厳しく設定した場合、漁師さんの生活が一時期でも苦しくなります。その場合、「収益納付」で解決します。
資源管理実施の初期の2~3年程度に資源回復と増大を目指して漁獲量の削減を行う場合、行政はこれらの漁業者の漁獲量削減による収入減に対して、補填または融資を行います。
将来において計画通り資源が回復し、漁業者の収入が現在の水準を超えた場合、その分を対象として適切な割合を行政当局に返還させるというものです。
これにより万が一、資源が予想通り回復しなかった場合でも、漁業者に対するリスクはなく、積極的に資源の回復措置に参加できるのです。
●政治家の胆力
日本の漁業を復活させるためには、まず乱獲が大きな原因であることを知らしめねばなりません。
その上で、漁獲枠を科学的に設定し、漁業関係者に対して、個別割当方式の方が長い目で見て得をすることを説得しなければならないのです。
漁師さんたちも、今を生きるために必死です。その漁師さんのためにも、政治家は、本当に幸福になる政策を、根気よく訴えながら、断行しなければなりません。
待ったなしの崖っぷちに日本の漁業は追い込まれているのです。
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2、編集後記
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今、地域政策を全国を回りながら考えています。
地方には、いろいろな問題もありますが、素晴らしさも多くあります。
その素晴らしさを形にするのは、人だと痛感します。
人材がいれば、可能性が広がります。
その人材は、企業家精神を持っている人です。
道を切り開くことに喜びを感じる人が多くなることを切に願います。
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◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール
1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、
HS政経塾・塾長等を歴任。
幸福実現党幹事長・総務会長を経て、現在、政務調査会長。
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◆ 発行元 ◆
江夏正敏(幸福実現党・政務調査会長)
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・江夏正敏の「闘魂一喝!」 「“大漁旗”が日本の漁業を衰退させる!?」
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