円高が急進したのはなぜか
中野雄太さんのブログの転載ですhttp://blogs.yahoo.co.jp/yutasteve/archive/2010/8/26?m=lc 最近は、ドルとユーロが弱含みとなっています。 そして、同時進行で円が高くなっている現象が続いています。
しかし、日本では株価が低迷が追い討ちをかけているのに、なぜ円が買われるのでしょうか?しかも、ここに来て長期金利が0.8%を割り込んだというニュースも流れてきました。今回は、この原因を私なりにまとめて見ました。
まず、株価の低迷は今に始まったことではありません。
菅政権になってからは下降トレンドです(下のグラフ参照)。
これは、現政権が経済政策に無策であることにつきます。
これだけ円高が急騰しているのに、状況を見守るしかできないような政権です。いかに実体経済が分かっていないかの証拠でしょう。
加えて、日本では大企業のほとんどが輸出企業となっています。急激な円高は会社の収益を圧迫することで、輸出関連株が売りに出されているとのこと。円高であれば、輸入関連企業の株価が上がってもよさそうですが、現時点では売りが先行しているということでしょう。
円高となっているのは、日本がデフレ基調にあるからでしょう。理論的にも、ドルに対して物価が低くなれば、為替レートは増価します。これは極めて単純なモデルから導かれる結論です。さらに、長期金利が下落したということは、同時に価格は上昇しているということです。株式市場が低迷している状態では、投資家は株を保有するインセンティブは低くならざるを得ません。そうであれば、安全資産である国債に向かわざるを得ません。日本の株式市場は95%程度が国内で調達されています。現時点の最大の株式保有者は機関投資家です。彼らの資産構成が、株を売り国債を買うという行動となっているのでしょう。
ただ、利回りは低下しているので、もう一つ利子平価条件で日本債券の利回りがドルやユーロ建て資産の利回りを上回っているということが考えられます。この場合、為替レートは今よりも円安になると投資家が予想しているということが前提です。
たとえば、現在日本の新発10年物国債の金利が1.5%、米国の金利が2.5%だとします。為替レートを考慮しなければ、普通の人なら米国債を買って運用したほうが有利となります。たとえば、日本国債を売って米国債を購入すれば、金利差1%の利ざやが生まれます(もちろんかなり単純化したケースであるが)。しかし、標準的な国際経済学では、利子平価条件という定義があります。この場合、日本の国債利回りは、米国債の利回り+為替レートの予想変化率の和で求めることができます。この例では、現在の為替レートは85円、予想為替レートが90円だとします。その結果、日本国国債の利回りは8.4%=0.084=0.025+(90-85)/85となり、日本国債の利回りが米国債の利回りを上回ることになります。そうなれば、投資家は「円買い」をするようになります。実は、現在の円高の進行には、上記のような行動を投資家がしていると推測できます(もちろん、予想為替レートは簡単には決まらない)。
一方、アメリカの景気も芳しくないようです。
特に8月に入ってからは一気にダウが下落し、1万ドルを割ってしまいました。
これは、アメリカの中古住宅販売個数が激減したことによるものです。
FRBのバーナンキが積極的金融緩和を行っていますが、アメリカ市場とてまだ不況を脱することができないという厳しい現実があります。P・クルーグマンは、「アメリカは今年後半から不況が深刻化する可能性がある」ことを指摘していますし、現在のバーナンキの政策は「銀行家としての視点」にこだわっているとして、皮肉をこめた批判をしています。クルーグマンの意見がどれほど影響をしているかは定かではありませんが、投資家はアメリカが更なる追加的金融緩和を行うと読み込んでおり、日米間の長期国債金利差がなくなると判断し、ドル売りを加速しているようです。もちろん、先ほどの利子平価条件が効いていると思われます。
欧州市場は数が多いので明記しませんが、ただ共通して見られるのは8月に入ってから軒並み各国の株式市場は下落しています。ギリシャ危機の影響が徐々に欧州全体にも波及しているのではないかと思われます。同時に、各国は厳しい財政規律を要求されているために、どうしても緊縮財政とならざるを得ません。財政赤字は対GDP比3%内、長期債務は対GDP比60%内を守れなければ、ユーロを離脱しなければいけません。これは、決して経済学的な根拠はありません。ユーロという共通通貨を維持するための基準値にしか過ぎません。加えて、欧州全体では、ユーロ加盟国は独自に金融政策を行えません。ECB(欧州中央銀行)が利下げを実施しない限り、金融緩和を通じた不況対策ができないという現状です。その結果、ユーロ売りが進んでいると考えられます。
以上、上記のさまざまな要因が重なって、円高が進んでいると思われます。もちろん、あくまでもかなり単純なモデルを使っての分析であることは言うまでもありませんが。いずれにしても、円高と株安の原因は理解できるのではないでしょうか |
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