https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20200518-00178960/
5/18(月 一部転載
バッタの巨大な群がアフリカから波状攻撃のようにアジアに迫っており、6月にはさらに大繁殖することが警戒されている。
バッタ巨大群の第二波
国連は4月、アフリカでのバッタ大発生が食糧危機をもたらしかねないと「最高度の警戒」を各国に促した。
東アフリカでは2月初旬、サバクトビバッタの大群が発生。サバクトビバッタは定期的に大発生し、1平方キロメートルにおさまるサイズの群でも約4000万匹がおり、これだけでヒト3万5000人とほぼ同量の食糧を食べるといわれる。
中略
サバクトビバッタは降雨量が多いときに大量発生することが知られている。2月の大発生は、昨年末に東アフリカで例年にない大雨が降ったことが原因だった。
その第二波がすでに大繁殖しているため、FAOは6月までに東アフリカだけでバッタの数が400倍に増える可能性があると試算しているが、6月に大繁殖すればさらに爆発的に増えることが懸念されているのである。
中国が熱心な理由
このバッタ大発生は世界の食糧価格にも影響をもたらすとみられ、FAOは各国に1億1000万ドルの協力を求めている。しかし、コロナ蔓延にともなう経済停滞により、支援の動きは鈍い。
そのなかで例外的に熱心な国の一つが中国で、とりわけパキスタン支援に積極的だ。中国は2月末にはパキスタンに専門家チームを派遣。3月には5万リットルの殺虫剤と15基の噴霧器を送っていたが、バッタの群の第二波がパキスタンに迫った4月半ばにはこれに30万リットルの殺虫剤と50基の噴霧器を追加した。
これに加えて、中国有数のネットプロバイダーの一つチャイナ・エコノミック・ネットは、両国の専門家が遠隔会議と情報共有を行うためのプラットフォームを提供する計画を進めている。
中国が熱心な理由の一つは、パキスタンがもつ地政学的重要性にある。パキスタンは中国からインド洋に抜けるルート上にあり、「一帯一路」の拠点国の一つだ。このタイミングでパキスタンを支援することは、パキスタンの安定が中国にとっても利益になるからだけでなく、パキスタンに恩を売り、中国の影響力を強める効果もある。
「一帯一路」を駆けるバッタ
その一方で、パキスタンでのバッタ対策には、中国自身を守る意味もあるとみてよい。パキスタンで大繁殖すれば、中国にもサバクトビバッタがやってきかねないからだ。
サバクトビバッタは風に乗って1日に150キロ近く飛ぶが、標高の高いヒマラヤ山脈を超えることは難しく、パキスタンから中国に直接飛来することはこれまでも稀だった。
しかし、南米原産のヒアリが日本で繁殖しているように、ヒトやモノの移動が虫の移動を促すことは、これまでにもあったことだ。上海税関は4月24日、梱包用木箱からサバクトビバッタが初めて発見されたと発表した。
この荷物の出発地は「西アジアの国」としか発表されておらず、パキスタンとは限らない。
しかし、中国が猛烈にアプローチするパキスタンからは、中国に年間18億ドル以上の物資が輸出されているため、今後サバクトビバッタが人間によって中国に持ち込まれる可能性は否定できない。
だとすると、中国がパキスタンでバッタ対策を強化することには、自衛の意味があるとみてよい。
サバクトビバッタは「一帯一路」によって移動を促されているのである。
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