【お金は知っている】中国の習政権を笑えない? 消費増税強行は「超大型台風を前に雨戸を開ける」自殺行為
夕刊フジ / 2019年9月13日 17時11分
https://news.infoseek.co.jp/article/00fujipol1909130003/ より
超大型台風が相次いで日本列島を襲う。筆者も「台風銀座」の高知に帰省中に遭遇、車を走らせていると携帯電話が突如叫ぶ。「危険です。ただちに避難してください」。携帯向け警告は自治体ごとに行われるので、市町村境に差しかかるたびに繰り返され辟易したが、逃げたおかげで危ない目に遭わずに済んだ。
ところが、災厄が事前に予想され、天気予報並みに正確な警告が発せられても、突っ走ってしまう巨大機構が存在する。ほかでもない。10月に迫った消費税増税を強行する日本政府である。
外需は中国の景気減速に加えて、米国も製造業景況が悪化している。欧州では中国市場に依存するドイツ経済が失速、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に伴う混乱はこれから本格化しそうだ。国内の家計消費は停滞、雇用情勢も求人倍率が低下している。安倍晋三政権は10月から消費税率を10%に引き上げ、まさに超大型台風を前に雨戸を開けようとしている。
海外メディアでは、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は拙論と同様、増税は日本の自殺行為だと警告し続けている。「日本の消費増税、好調な雇用に冷や水」(WSJ電子版9月2日付)という具合で、経済専門紙としては当然の見解だ。
国内メディアの社説は消費税増税支持一辺倒という体たらくは相変わらずだ。日本経済のことなのに海外の経済紙の後追いとは何とも情けないが、日経新聞は消費税増税ショックをようやく懸念する解説記事を載せるようになった。
では、天気予報ならぬ景気の先行きに関する調査を行っている政府はどうか。
グラフは内閣府の「街角景気調査」結果の推移である。毎月の下旬、景気動向に敏感な業種の経営者や現場担当者など約2000人を対象に、3カ月前に比べて景気が良くなっているかどうかの判断を指数(DI)にする。製造業、非製造業とも昨年初めから低下を続け、製造業は最新の8月時点では2014年4月の消費税増税引き上げ後最低の水準まで落ち込んだ。非製造業は下げ止まったが、グラフが示す通り、非製造業は製造業に連動する傾向が強い。その基調に消費税率10%の圧力が加わる非製造業の景況悪化は避け難い。税率10%への増税は前回の8%引き上げ前に比べて駆け込み需要がさほど大きくないから、反動減の程度も軽いとする見方があるが、景況判断の水準は前回よりもはるかに悪い。しかも、同調査では景気下降の波が地方全域に及んでいることを示す。
首相直属の内閣府は景気悪化のデータをしっかりと収集しているのに、自身のボスには「消費税増税は避けよ」と警告メッセージを出さないのは、官庁エコノミストとしての矜持(きょうじ)はどこにあるのかと問いたくもなる。政府がそんなザマだから、共産党官僚が経済データを改竄(かいざん)し、6%台成長を誇示する中国の習近平政権を笑ってばかりいられない。(産経新聞特別記者・田村秀男)