ナチス以上の弾圧を行う中国政府 国連で「ウイグル問題」をスピーチ【寄稿・幸福実現党及川幸久】
2018.08.24
スイス・ジュネーヴで開催中の「国連人種差別撤廃委員会」で、黙殺されてきた中国政府によるウイグル人弾圧に焦点が当たり、各国のメディアがこの問題を大きく取り上げ始めている。
世界の流れを変えたとも言えるこの委員会で、本欄で連載を寄稿する幸福実現党外務局長の及川幸久氏が、NGO枠として、ウイグル問題の解決を求めるスピーチを行った。本欄では、そのレポート寄稿を掲載する。
なお、及川氏は今月26日、赤坂の幸福実現党党本部にて、本件についての報告発表を行う予定だ(参加登録フォーム https://ssl.form-mailer.jp/fms/aa42153c581613 )。
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「中国のウイグル自治区では、数十万、いや、数百万人が"再教育キャンプ"という強制収容所で拷問を受けている」。
7月末、トランプ政権のペンス副大統領は、ワシントンで行われた宗教的自由を推進する大会で、前ぶれなく中国の人権弾圧を非難しました。
その内容は、チベットでも香港でもなく、ウイグルでした。
この発表が世界に衝撃を与えた10日後、ジュネーヴの国連で人権に関する委員会の会合が始まり、中国の人権状況がテーマに取り上げられました。この委員会で中国の人権問題が取り上げられるのは9年ぶりのことでした。
その委員会に、NGOとして参加し、スピーチをすることができました。ウイグルの再教育キャンプの正体についてです。
今回の寄稿は、この委員会参加についての報告です。
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20年前から蹂躙されてきたウイグル人
マスコミがあまり報道しなかったので、国際社会が気づいてこなかったのですが、中国はウイグル人弾圧を過去20年間ずっと行ってきました。
例えば、4年前、新疆ウイグル自治区の西南部にあるヤルカンド県で、イスラム教のラマダンが明けた夜、男性達がモスクに行っている間に、残った女性や子供を中国警察が理由なく銃殺。怒った男性達が警察に行くと、彼らも銃殺されました。この事件をきっかけに、ウイグル人の抗議デモが起こると、今度は軍隊が発砲。これは「ヤルカンドの大虐殺」と言われています。
そして、昨年から事態はエスカレートしています。それが、冒頭に触れた再教育キャンプです。
ペンス副大統領は、このキャンプについて次のように指摘しました。
「24時間寝かせないで、洗脳、拷問する。その目的はイスラム教の信仰を捨てさせることだ」
世界ウイグル会議の総裁として、反中国共産党の運動を行っているドルクン・エイサ氏のご母堂もここに強制収容されました。しかも77歳という高齢で。
エイサ総裁はこう言っていたそうです。
「習近平よ、私の母をすぐに殺してくれ。そのために銃弾のコストがかかるなら、私がその金を払うから、すぐに殺してくれ」そして、最近、逝去されたことが判明しました。
国連で訴えた、民主主義の"落とし穴"
国連の委員会は、まず始めに、8月7日、人権問題に関わるNGOの意見を聞くセッションを持ちました。中国の人権状況を報告する約30のNGOが報告書を提出し、そのうち十数の団体がスピーチを行いました。
私はこのスピーチの中で、再教育キャンプの情報に加えて、以下のように報告しました。
- 中国の人権弾圧の特徴は、ISISのような自爆テロや少数民族の独立運動を防ぐために、反テロ法、反国家分裂法、過激派取締法などの法律を作り、ウイグル人を「合法的に」強制収容していること。こうした悪法が横行している。
- 憲法も法律も人間が作ったものだ。人権の根拠を人間がつくった憲法・法律に求めると、中国政府による人権弾圧は、自由と民主に基づき、すべて合法だということになる。
- 自然法では、「神が人間に人権を与えられた」という考え方をとっている。人間が作ったものの上に神がいて、人間は神の子であるから尊い存在。機械の部品のように、不良品は新品と替えればいい、というものではない。これが人権の根拠である。だからこそ「自由・民主」に加えて、「信仰」を国家理念とすべきである。
ナチスを超えるウイグル弾圧
再教育キャンプの最大の問題は、そこに強制収容されている人数です。
国連の委員会でスピーチをした他のNGOは「100万人」という人数を出していましたが、どうも、これよりはるかに多いようなのです。
ペンス副大統領は「数十万から数百万人」という言い方をしました。日本ウイグル連盟代表のトゥール・ムハメット氏は、「推定300万人」だと言っています。
ナチス・ドイツが終戦時に、アウシュヴィッツを含む強制収容所に収容していたのが、合計71万人と言われています。ウイグルは、その数倍かもしれません。
さらに、ムハメット氏は、「再教育キャンプの中に、焼却設備ができている。死体を次々に焼却するのはナチスのやり方そのものです」と言っています。
6時間に及んだ国連と中国のバトル
私たちの訴えを受ける形で、この委員会は8月10日と13日、中国政府代表団を呼んで、議論しました。
まず、中国政府側は「中国では、(チベットやウイグルのような)少数民族も漢民族と全く同じ自由と人権を享受している」「中国経済が大繁栄したことで、少数民族も生活水準が上がり、幸福を享受している」と主張しました。
その後、私たちNGOの話を聞いた国連の委員たちが、このような質問をしました。
「我々は、信頼できる情報を大量に得ている。それらによると、再教育キャンプに100万人が収容され、ウイグル自治区全体が大規模な強制収容所になっている。そこは秘密主義で覆われ、一切の人権がない。この点について詳細な報告をしてほしい」
中国政府側の答えはこうでした。
「100万人の強制収容は事実ではない」「再教育キャンプは、軽犯罪者やテロリストになりそうな者を再教育し、更生させる、職業訓練センターだ」
その答えに対して、国連委員は「100万人が事実でないのなら何人なんだ」「何の法律に基づいて行っているのかを示してくれ」とさらに突っ込んだ質問をしました。
このように、国連 vs. 中国政府のバトルは6時間に及びました。しかし、時間切れとなり、中国側に逃げられた印象を残しました。
一つの大きな成果はこの議論をCNNやBBCなどのマスコミが大きく報道したことです。初めてウイグルの人権問題が国際世論の俎上に載せられ、中国への批判が集まったのです。
残念だったのは、国連が中国を攻め切れなかったことです。私は、その理由を「『自由と民主』だけでは中国を変えられない。そこに『信仰』が必要だ」と痛感しました。
しかし同時に、ウイグル人だけでなく、中国で人権を奪われている人々が解放される日が来ることを、私は確信しました。
筆者 及川 幸久
(おいかわ・ゆきひさ) 1960年生まれ。上智大学文学部、国際基督教大学行政大学院修了。米メリルリンチ社、英投資顧問会社勤務を経て幸福の科学に出家。2012年より幸福実現党外務局長を務める。YouTubeに「及川幸久のトランプ・チャンネル」、Twitterでは「トランプ和訳解説@及川幸久」を開設し、トランプ情報を伝えている。著書に『あなたも使いこなせる トランプ流 勝利の方程式 ―考え方には力がある―』がある
及川幸久著 幸福実現党刊
【ニュース】中国のウイグル人弾圧について及川幸久氏が国連でスピーチ【ザ・ファクト2018 08 24】