「LGBT法」世界大混乱。欧米諸国でも、イスラム諸国は猛反発。(釈量子)【言論チャンネル】
「LGBT法」世界大混乱。欧米諸国でも、イスラム諸国は猛反発。【前編】
幸福実現党党首 釈量子
世界ではアメリカの、特にリベラルな民主党的な価値観を受け容れない、受け入れたくない国との価値観の対立が深まっています。
その代表が、「LGBTQ」に関する考え方です。
岸田首相は、サミットで、「LGBTへの差別を禁じる法律がないのはG7で日本だけ」「日本は遅れている」というイメージづくりの中で「日本もちゃんとやっています」と内外にアピールする狙いで国会に法案を提出しました。
アメリカでも、国を二分する激論が起き、イギリスでは行き過ぎた部分についての揺り戻しも起きています。
岸田政権による、点数稼ぎ狙いの法律をあえてつくる必要はないのではないでしょうか。
◆日本の状況
日本の各党の法案を見てみます。
サミット開幕当日5月19日に、国会に提出した与党案があり、その後、立憲・共産が共同で対案を出しました。これは2年前の2021年に超党派の議連でまとめたものです。
そして26日に日本維新の会と国民民主党案が提出されました。
争点となった文言ですが、立憲・共産の(2021年超党派議連の法案)には、「性自認」という言葉がありました。
「自分自身の性別をどのように認識しているか」、生物学的には男性でも、自分が女性だと認識しているならそれを認めるということです。
しかし自分の認識だけで性別を決められるなら、本気で悩んでいる人と、自称女性の「変態」男性との区別がつきません。アメリカでは女性刑務所で自称女性のトランス男性によるレイプが起きています。
そこで自公案では今回、「性同一性」ということばにして、ある程度、客観性を持たせようという狙いがあります。
しかし、「性同一性」の客観的な要件は法案に書かれておらず、実際には「性自認」との違いはありません。
維新と国民民主は「ジェンダー・アイデンティティ」と、煙に巻いた感じです。
また21年超党派案の「差別は許されない」という言葉も、訴訟の乱発などに繋がらないよう自公は「不当な」という言葉をつけて、配慮したような体を取っています。
しかし、何が不当なのか客観的な要件がなければ、この法律を根拠とした訴訟リスクは無くなりません。
そうこうしている間、保守を中心に「女性の権利侵害」という声も大きくなり、「維新と国民」は「全ての国民が安心して生活できるよう留意」、さらに自公案が「学校でLGBTQ教育を行う」と踏み込んだのに対して「保護者の理解と協力」という文言を追加しました。
6月の会期末までに自公政権で押し切ろうと思えば押し切れる状況ですが、自民党支持層である保守派の反発を招く可能性も高く、成立の見通しは不透明です。
特に、海外では深刻な事態や揺り戻しもみられます。
◆アメリカ
まず、アメリカでは、バイデン政権と共和党支持者の間で、激しく対立しています。
NYで自殺企図のある11歳の女の子が、学校のカウンセラーに相談したところ「性転換手術(現在は性適合手術)」を勧められて保護者が驚いたという話はよくあると現地の方から聞きました。
子供が親の同意なしに、医師やカウンセラーのもとに行き、「性別転換手術」を勧められてしまうことは、合衆国憲法で「男女差別が禁止」されているのに加え、いま22の州では「公共施設における性自認に基づく差別を禁止する法律」があるからです。
一部保険業者や州のメディケイドプログラムは、補助金を使った医療でトランスジェンダーを差別することを禁止しています。
そのため、こうした州では、「性別転換手術」を含む、トランスジェンダーに考慮した医療へのアクセスを積極的に進めている、というわけです。
特にアメリカで激しい論争になったのが「思春期抑制剤」です。思春期が来るのを遅らせるホルモン療法で、性別転換手術の前に考える時間を持つために投与されるようです。
しかし、「不妊を招く恐れ」もあり、副作用について十分な研究もなされていないとして、利益主義の製薬会社への批判が巻き起こりました。
子供は「男の子には、女の子に生まれた可能性があるし、女の子は男の子かもしれない」と教えられ、実際に自分の性別に違和感を感じる子供も増えています。
こうした教育や社会風潮に「おかしい」と感じる世論を代表しているのが、トランプ元大統領です。
「子供たちに押し付けられている左翼的ジェンダーの狂気は、児童虐待行為です。私が次期大統領となったら初日にジョー・バイデンの残酷な政策を撤回し、いわゆるジェンダー・アファーミングケアという、子供に思春期ブロッカーを与えて身体外観を変え、未成年の子供に最終的に手術を施す馬鹿げたプロセスを撤回するつもりです。」
手術で卵巣や精巣など性腺を取れば、元の性には戻れません。特にホルモンは、血管のしなやかさを保つ働きなど生命を維持するために不可欠なので、命に直結します。
◆イギリス
イギリスでは7月から、「新しく建設する公的建造物は男女別のトイレを設けることを義務付ける」ことになりました。揺り戻しが起きています。
ケミ・バデノック女性・平等担当相は、「女性が安心できることは重要」と説明しています。
イギリスの小学校では男女共用トイレが増えた結果、トイレを怖がって学校を休む女子生徒がいたり、中にはトイレに行きたくなくて水も飲まない子もいるとして、数年前から問題になっていました。
保護者の多くは、子供の学校で変更が行われる前に相談を受けなかったと述べています。
日本でも、すでに愛知県豊川市の小学校では「みんなのトイレ」という名称で、「個室化、多様化に配慮」したトイレへのリフォームがなされ、入口は男女一緒で、男女共用もしくは男女別の個室が設置されています。
豊川市で小学生向けの塾に勤務する講師の方によると、小2の女子が「学校のトイレは気持ちが悪い。男の子は男の子にしてほしい」という声があったということで、「一体誰がトクするのか疑問だ」ということでした。
また同じ地域の元小学校校長も「腕白盛りの男子がふざけて女子トイレをノックしただけでおおごとになった。子供や親御さんへのアンケート調査など、丁寧に声を聴いて対応すべき」といいます。
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