トランプ氏の安倍首相への発言は「暴言」か「冗談」か… 国民は情報の真偽を見抜く力が必要
ケント・ギルバート ニッポンの新常識
カナダ東部シャルルボワで開催されたG7(先進7カ国)首脳会議で、移民政策を議論中、ドナルド・トランプ米大統領が安倍晋三首相に対し、「私が(日本に)メキシコ人を2500万人送れば、君はすぐ退陣することになるぞ」と語ったという。欧州連合(EU)職員を取材した、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が15日報じた。
日本の複数のメディアは、この発言を「暴言」と表現した。しかし、いくらトランプ氏でも2500万人ものメキシコ人を日本に送り出すことなど不可能だと、誰でも分かる。
私は、トランプ氏と安倍首相が非常に親密なうえ、日本での安倍政権の盤石さをトランプ氏が熟知するからこそ言えた、「冗談」として捉えた。この件を伝えるAFPの記事は、「G7は険悪な雰囲気の中で閉幕した」「混乱のうちに終了した」などと表現していた。
この記者は、トランプ氏がよほど嫌いなのだろう。
本コラムを含めて、新聞や週刊誌、雑誌や書籍などのメディアが、記事に主観的評価を書くことは「表現の自由」として認められている。それどころか、捏造(ねつぞう)した事実を、真実のように報じることも「表現の自由」の一部だ。もちろん、捏造が名誉毀損(きそん)や信用棄損、業務妨害などに該当する場合は、被害者から訴えられ、刑事上や民事上の責任を負う場合もある。だが、少数意見を国民の総意のように報じたり、捏造した事実を「真実」のように報じること自体は、違法ではないのだ
テレビ局など放送事業者の場合、日本では放送法第4条で「政治的公平性」を要求されている。だが、現実の放送が偏向三昧(ざんまい)であることは周知の事実だ。米国では放送事業者も政治的公平性を求められない。
弊害もあるが、民主主義国家の証明である「表現の自由」の制限は必要最小限でなければならない。だから、国民はメディアリテラシーを磨いて、情報の真偽や発信者の意図を見抜く必要がある。その能力がなければ民主主義国家の「主権者」として責任を果たせない。
米国では、高校の授業で「メディア情報をうのみにするな」と教えられる。その教育が行われない日本では、「メディアもウソをつく」ことを理解していない情報弱者がまだまだ多い。
余談だが、ロックバンドの楽曲の歌詞に過剰に反応して「2度と歌うな」などと主張するファシストたちを、いつも「表現の自由」を声高に叫ぶメディアや人権派弁護士たちは、先頭に立って批判すべきである。
■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など