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沖ノ鳥島周辺が戦場に?膨張する中国の「核心的利益」、日本の最南端を守れ。国連海洋法条約、スプラトリー諸島、プロジェクト2049研究所、A2AD。(釈量子)【言論チャンネル】
https://youtu.be/RF6Z6P37kNM
(8月20日収録)
幸福実現党党首 釈量子
◆中国船が沖ノ鳥島付近で不穏な動き
尖閣諸島周辺で中国が不穏な動きを見せていますが、我が国最南端の沖ノ鳥島付近にも脅威が迫っています。
今回は、沖ノ鳥島を狙う中国の動きと、この海域の重要性について考えてみます。
7月9日、海上保安庁の巡視船が沖ノ鳥島北北西310 キロメートルで、中国の海洋調査船が海中にワイヤーのようなものを投入しているところを発見しました。
翌10日には、観測機器のようなものを引き上げている様子が確認され、現場と外交ルートを通して「我が国の排他的経済水域において、事前の同意のない調査活動は認められない」と中止を要求しました。
しかし中国は、これを無視しています。
中国がやっているのは、海底の地形、水温、潮流などのデータの収集ですが、実際のところは、潜水艦を展開するための軍事的な調査です。
◆沖ノ鳥島の概要
沖ノ鳥島は、東京から1740キロメートル離れた我が国最南端の領土で、周囲11 キロメートルのサンゴ礁でできた「環礁」で面積は4.9平方キロメートルです。
大正11年(1922年)に日本の調査船が測量して、どの国にも領有権が主張されていないことを確認したうえで、昭和6年(1931年)、東京都に編入しました。
その後、戦争がはじまり、終戦後は米軍の統治下に置かれましたが、昭和43年に小笠原諸島返還協定によってアメリカから返還されました。
ところが、日本の領土に編入した時点で6つあった小島が、北小島と東小島の2つしか残っていませんでした。
国際的な海のルールとして1982年に「国連海洋法条約」が採択されると、「排他的経済水域」(EEZ)を設けて、資源開発などの主権的権利と、海洋調査などの管轄権を持てるようになりました。
沖ノ鳥島が海没すると、日本の国土面積を上回る約40万平方メートルの排他的経済水域を失います。
政府は1987年から「護岸工事」を行い、島の周囲を半径25メートルのコンクリで固め、鉄製の波消しブロックで囲みました。
さらに平成11年には錆びないチタン製メッシュで覆い、日本は、「国際法」の枠の中で保全をしています。
◆沖ノ鳥島は、岩か、それとも島か
ところが2003年に突如、中国は、「沖ノ鳥島は国連海洋法条約の『島』ではなく『岩』にすぎない」と言い出しました。
国連海洋法条約121条の「1項」に、「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」とあります。
沖ノ鳥島は、満潮時にも頭を出し、さらに保全工事でも、ちゃんと海水に接する構造にしています。
同2項には、島も他の領土と同じように「領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用される」とあります。日本は沖ノ鳥島を島として、日本の国土よりも広いEEZを持てるわけです。
ところが同2項には「3項の場合を除く」という条件があり、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することができない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」とあります。
中国は、「だから沖ノ鳥島は岩だ、EEZに当たらない」と言ってきました。ただ、沖ノ鳥島は日本の領土であることは認めています。
領土の場合は12海里の領海を持つことはできますが、島でなければ広大なEEZは主張できなくなります。
「国連海洋法条約」は各国の妥協の産物でできた経過あり、それぞれの国が勝手な解釈ができるような矛盾した内容を含んでいます。
121条で「人間が住んでいるかどうか」は、その国が島で何をするか、その国の主権の問題です。現状変更されてしまうなら、断固とした主張を言い返さなければいけません。
◆中国が「南シナ海」でやったこと
1988年3月14日、スプラトリー諸島(中国が言う南沙諸島)のジョンソンサウス礁(中国が言う赤瓜礁)で、中国とベトナムのにらみあいがありました。
ベトナム海軍の兵士が上陸して測量し、ベトナム国旗を掲げたところ、中国軍が艦艇からボートを出してベトナム兵70名以上を銃撃して殺害しました。
その後、中国は赤瓜礁に高脚屋という「掘っ立て小屋」を建てて領有権を主張し、満潮時には1,2メートルも水没する岩礁を埋め立て、人工島を建設して軍事拠点化していきました。
ちなみに、沖ノ鳥島は水没することはありません。
2016年フィリピンは、中国が人工島を建設することは、国際法に違反すると提訴しましたが、オランダ・ハーグの国連の常設仲裁裁判所は中国の主張に「法的根拠なし」との判断を示しています。
しかし、中国はその判断を認めませんでした。
◆沖ノ鳥島の戦略的重要性
中国が沖ノ鳥島を狙う理由は、ずばり戦略的な問題からです。
アメリカのシンクタンク「プロジェクト2049研究所」は、2020年から2030年の間に、中国が尖閣諸島と台湾を「同時」に軍事侵攻する可能性が高まっていると警鐘を鳴らしています。
沖ノ鳥島は、沖縄、台湾、グアムからほぼ等距離の位置にあり、アメリカと中国の双方にとって、重要な戦略ルートになるわけです。
台湾有事となれば、横須賀の米軍基地から第七艦隊空母機動部隊とグアムの原子力潜水艦が台湾に接近します。
中国はそれを阻止するために、機雷を敷設したり、潜水艦を展開しようとしています。すでに水中では米中の激しい「つばぜり合い」が展開されていると考えられます。
中国にとって、沖ノ鳥島近海は原子力潜水艦の「ハイウェイ」であり、台湾海峡を通らずに太平洋に抜け、米国本土を核で攻撃することが可能です。
すでに2011年6月には、中国海軍艦隊11隻が沖ノ鳥島から米軍基地のあるグアム島に至る海域で、大規模な軍事演習を行っています。
また、沖ノ鳥島近海は、海上輸送路として南シナ海のシーレーンが封鎖された時の迂回路になります。
日本にとってもオーストラリアから石炭などエネルギー資源や鉱物資源も輸入している沖ノ鳥島近海は非常に大事です。
◆日本は何をすべきか
すでに日本政府は、沖ノ鳥島に灯台を設置したり、海洋温度差発電やサンゴの移植などの試みも始めています。
最近の沖ノ鳥島海域で勝手に調査する中国船に対しては、取り締まりが可能になる法整備の検討に入っています。
日本は憲法を言い訳に、これまで最悪の事態に備えることを放棄してきたのですが、「まず自分で守る努力もしなければ、誰も守ってはくれない」という原則に立ち返るべきだと思います。
幸い米軍は、2019年5月に「海洋圧迫戦略」を打ち出しています。
具体的には、「第一列島線」(日本―台湾―フィリピン)で中国軍を封じ込め、また、長射程の対艦ミサイルを分散して、「中国艦隊」の「船を沈める」という方針を柱にしています。
台湾とオーストラリアも対艦ミサイルの保有を決めており、日本も「台湾有事は日本の有事である」ことを明確にし、米軍の戦略と一体化させるべきです。
また、アメリカ国防省は「インド太平洋戦略報告書」で台湾を「国家」と表現していますが、日本も日台交流基本法の制定を急ぎたいところです。
日本が中国の言いなりになってひれ伏したならば、「地球としての正義」が崩れることは間違いありません。
自国の平和のみならず、自由・民主・信仰の価値を守るためにも、「地球的正義」の観点に立ち、沖ノ鳥島の重要性について、考えを深めていく必要があるのではないかと思います。
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執筆者:釈 量子
幸福実現党党首
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