かわいいのは名前だけ?ピケティの問題は何か[HRPニュースファイル1276]
http://hrp-newsfile.jp/2015/2027/
文/HS政経塾スタッフ 赤塚一範氏
先月来日したピケティが人気です。まずピケティがこれ程ブームになる理由の一つが資本主義の矛盾を突いたからだと言われています。
クズネッツが1913年~1948年の資本主義が所得格差を縮めたと実証したのに対し、ピケティはより広い範囲でデータを集め、資本主義が格差を縮めたのは一時のことで、基本的に格差を拡大するのが資本主義だと実証したことにあります。
◆ピケティ理論とは
ピケティの理論の根幹は資本収益率rが経済成長率gよりも常に高くなり格差が拡大するというものです。そして特に、少子高齢化が進展し、低成長にあえぐ先進諸国では格差の影響はより甚大になるというのです。
ピケティは次のように言います。「ほとんど停滞した社会では、過去に蓄積された富が、異様なほどの重要性を持つようになる」「だから成長―特に人口増加―の鈍化こそが、資本が復活をとげた原因だ」(『21世紀の資本』〈ピケティ著〉より)
日本を例に出せば、GDPはこの20年間、変わらずだいたい500兆円です。しかし国民の金融資産は1994年度末にだいたい1200兆円弱であったのが、2014年には1600兆円以上に成長しています。GDPの成長率は0%に対し、資産の成長率は30%です。
GDPは国民に給料や利子、配当などを通して国民や企業に分配されますが、GDPに対して資産の割合が大きくなりすぎている場合、富は資産を持っている人には多く分配され、労働者には少ししか分配されないという状況になります。
そして、資産が蓄積されればされるほど格差は拡大するのです。つまりピザは毎年10枚しか焼かれないのに、年を経るごとに、資産を持たない人の取り分が小さくなっていくイメージです。資産家は6枚、7枚と年を経るごとに多くとれるのに、労働者は4枚、3枚と減っていくといった感じでしょうか。
◆金持ちの財産は侵害しても良いのか
この分析自体はある意味正しい側面もあるでしょう。このようなゼロ成長でのパイの取り合いの世界観において、ピケティの言うように持たざる者はより貧しくなるしかない世界ならば、資産や相続財産に高い累進度の課税をすることは、正統化されてしまいます。
それも一国だけで課税すると、金持ちは海外へ逃避してしまうので、ピケティは国家同士で協調して課税することを提案しています。ピケティ自身はこれを非現実的であるとしているものの、近年、国際的に強調して課税する動きが強まってきていることは事実です。
しかし、平等な分配が実現する世界は幸福なのでしょうか。資産や相続財産に対する課税を強化するということは、国民の私有財産に対して国家が介入する度合いが増すと言うことを意味します。
文明社会では、財産が無ければ何もできないと言う意味で、私有財産は自由の根幹です。確かに、貧しい人たちからすると、豊かな一部の金持ちの私有財産を侵害しても何も問題ないように思うかもしれません。
しかし、近代文明は、国家の権力をいかに制限するかという歴史です。一部の金持ちの権力よりも国家による権力の方がはるかに大きく恐ろしいのです。
国家が自由にお金持ちを迫害できる社会は、誰も国家に逆らうことのできない社会となるでしょう。お金持ちの資産を守ることが貧しきものの自由を守ることに繋がる、このことを忘れてはいけないのです。
◆統計学では未来はわからない
ではどうすれば貧しきものも豊かになれるのでしょうか。問題はピケティがゼロ成長を当然としている点です。
ピケティは次のように語ります。「たとえ成長が維持できるとしても、年率1~1.5%を上回ることはもうないということだ。ヨーロッパが謳歌した「栄光の30年」(1945年~75年)のような年4~5%の高度成長は、もはや望むべくもない。」(トマ・ピケティの新・資本論)
ピケティのこの発言を見て、私は何と夢も希望もない考え方だろうと思います。ピケティの問題は統計学を重視しすぎ、現状の延長で考えることを当然としている点にあります。
ピケティは過去300年間、20か国にわたる資料を集めて分析をしていますが、結論は現在の低成長が将来にわたって続くということです。マルクスの時代には統計学はそれほど発達していませんでしたが彼も同じ間違いをしています。
マルクスが生きた時代は、綿織物などの軽工業、製鉄所などの重工業を中心とした社会で、綿畑で綿を摘んだり、工場で糸を紡いだり、鉱山で穴を掘る労働者を見て、その延長で資本主義の暗い未来を想像しました。
しかし、その後の世界で起こったことは、重化学工業の発展、サービス産業など第三次産業の発展、生産性の劇的な向上です。その過程で単なる作業的労働が価値を生んだ時代から知識や智慧が価値を生む時代への変化し、労働者の待遇は劇的に改善しました。
ピケティはマルクスと同じように現在の産業構造が将来も続くと考えているのでしょう。ピケティにはきっと、鉄腕アトムのような世界、ドラえもんに出てくる22世紀のような世界は想像できないのです。
しかし、私たちが目指すべきはそのような夢のある方向にあるのです。そのような社会に向かって現在ある資産を投資していくことでお金は循環し、経済は成長路線に向かいます。
そして現在、世界が求めているのはそのような未来ビジョンを持ち、実現していく気概のあるリーダーです。幸福実現党は、夢の未来を目指して邁進して参ります。
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要注意“ピケティ”ブームに備えよ!【前編】[HRPニュースファイル1268]
「要注意“ピケティ”ブームに備えよ!」【後編】[HRPニュースファイル1269]
中国の100年計画 毛沢東はいまだに生きている!? 2015.02.12
ピケティ・ブームはアベノミクス行き詰まりが背景 “実践的でない”と米識者批判も
- 更新日:2015年2月3日 http://newsphere.jp/politics/20150203-4/
経済学書としては異例の世界的ベストセラー、『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティ氏が来日し、講演会や政治家との会談を行った。同書の日本語訳は昨年12月に出版され、10万部を超える売れ行きだ。
同書は格差について、過去300年分のデータをもとに「資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」ことを論じる。同氏は資本主義を支持しつつも、結果的に生じる持続的な格差に対し、より民主主義的な支配の回復を説く。同書では、グローバルな資本に対する累進課税を提案している。
同氏の来日は、フィガロなど地元フランス紙や、米メディアも報じている。背景には、アベノミクスへの行き詰まり気配、打開策への期待があると見られている。
◆ピケティ氏が日本経済について語ったこと
ピケティ氏は日本の経済について、4日間の日本滞在中に、以下のようにコメントしている。アベノミクスや消費増税には懐疑的のようだ。
・アベノミクスの潜在的なリスクは、資産インフレ。物価を上昇させるなら賃金を増やすしかない
・一国の年金の運用方法として、リスクの高い投資や複雑な金融派生商品がふさわしいかは疑わしい
・消費増税は、日本の不平等を改善するのに適切な方法ではなかったと思う
・若い世代や低収入者の税負担を減らし、資産税や富裕税といった税は累進制にして税率をあげるべき
・雇用形態や男女による待遇の違いが、少子化のような日本の将来を左右する大きな問題の原因になっている
WSJは、政治主導のアベノミクスに対し、「ピケティ氏の著書を参考にすることもできるはず」との見方を示した。
◆ピケティ氏への厳しい批判も
一方、日本の金融に詳しいスティーブン・ハーナー氏は、フォーブス誌で、ピケティ・ブームとも言える現状に対し、「アベノミクスが行き詰まりの気配を見せ、日本の知識人は新しい道を探っている」ことが背景にある、と指摘した。
同氏は、ピケティ氏のアイデアを、日本にとって実践的な妥当性をもたない、と一蹴。「どの提案をとっても状況を悪化させるだけだ。彼の講演が早く忘れ去られることを祈る」と酷評した。
◆民主党は“完全に合致”?
なおピケティ氏は経済成長に反対しているわけではない。むしろ、大学への投資や、生産性と革新性の向上、人口増加などで成長を刺激することが必要だとしている。民主党の岡田代表との会談では、格差拡大への問題意識とともに、これらの見解についても意見が完全に合致したという(フォーブス)。
安倍首相は、ピケティ氏が提案するグローバルな資本課税強化について、「導入にあたって執行面で難しい」と否定的な見解を述べていた。
ピケティ氏も困惑? 日本だけ格差縮小、と米紙指摘 景気後退などが影響か
- 更新日:2015年2月12日 http://newsphere.jp/economy/20150212-2/
- ◆日本は格差是正よりも景気回復を ピケティ氏は、「日本は例外的に格差が少ないのでは?」というWSJの疑問に対し、「(1990年代初めよりは)2012年の上位1%のシェアは大幅に上がっている」と指摘。2009年以降の横ばい・縮小傾向については「景気後退の影響かもしれず、長期的な傾向を反映した数字ではないかもしれない」と見解を述べた
ただ、日本で言えばトヨタのようなところが、資本力があるからといえども、失敗しないとは限りません。
国が一人で興り、一人で沈むのであれば、民間企業ですので経営者しだいでどうにでもなります。
上記のような企業を、政策の誤りで潰すようなことがあれば、信じられないような経済的打撃があると思いますね。