TBSコメンテーターが暗に首相の辞任を求めた？ 礒崎補佐官の発言で

http://www.newstandard.jp.net/news/politics/tbs-commentator-implying-resignation-of-the-prime-minister-/957

By. 呉 亮錫 2015/08/04     TBSコメンテーターが暗に首相の辞任を求めた？　礒崎補佐官の発言で

転載、させていただいた記事です

礒崎陽輔・首相補佐官は3日の参院・特別委員会で参考人として答弁し、安全保障関連法案について「法的安定性は関係ない」などと発言したことについて謝罪、釈明した。
 
同日の各局の夜のニュース番組も、この話題を大きく扱った。それぞれの特色を取り上げてみたい。
 
NHKの「ニュースウォッチ9」は、民主党の福山哲郎・幹事長代理の質問や、それに対する礒崎氏の答弁の内容を放送した。また礒崎氏が講演で、法案審議について「9月中旬までに何とか終わらせたい」と発言したことについて、鴻池祥肇・委員長が「参院は衆院の下部組織ではない」などと苦言を呈した場面を取り上げた。
 
スタジオでは河野憲司キャスターが、鴻池委員長の見解について次のようなコメントを加えた。

今日の特別委員会では、鴻池委員長が、参議院は衆議院の下部組織ではなく、官邸の下請けでもないと言い切りました。合憲か違憲か、国民の評価が分かれる中で、参議院はぜひとも、安全保障政策の大転換となる法案について、議論を深めてもらいたいと思います。

日本テレビの「NEWS ZERO」も委員会の様子を放送したが、礒崎氏の答弁に対して「ダメダメ」などと野次が飛ぶ場面で、野次をキャプション化して放映した。スタジオでは杉尾信尚キャスターが「法的安定性」について解説し、「もし政治家が恣意的に法律の解釈を変えるようなことがあれば、それは法の支配、これは法の支配が揺らぎ、権力者の支配へとつながっていくことになります」と述べた。
 

 「なぜ辞めないのか」という観点の報ステ

一方で、これまで安保法案について反対の論陣を張ってきたテレビ朝日の「報道ステーション」とTBSの「News23」は、それぞれトップニュースでこの問題を扱い、関心の大きさを見せた。
 
「報道ステーション」では、古舘伊知郎キャスターがニュースの冒頭で、礒崎氏が自身の発言を撤回したことを伝えた。それに加えて、古舘キャスターは「だけどこの方まだ、本当に法的安定性は関係ないと思ってるんじゃないでしょうかね、なんて決めつけちゃいけませんね」と勘繰るようなコメントを残し、そこから映像が始まった。
 
映像では、民主党の福山氏が礒崎氏に辞任を迫るシーンや、6月号の雑誌「ジャーナリズム」の中で礒崎氏が「今回の憲法解釈の変更が違憲という話は聞いたことがないです」などと発言していたことなどを紹介した。
 
その上で、政治部（官邸担当）の藤川みな代記者が「総理の側近を辞めさせるということになれば、即、総理の任命責任という問題に直結します。そういうことは避けたいということです」と解説した。今回のニュースは「礒崎氏 陳謝 でも“辞任”否定」という見出しで始まっており、この箇所も、問題の重要性よりは「なぜ礒崎氏は辞めないのか」という論点からの解説となった。
 

「内閣そのものの責任」とはどういう意味か

TBSの「News23」では、報ステと同様に「ジャーナリズム」誌などでの礒崎氏の過去の発言を紹介した上で、世論調査で安倍内閣の支持率が低下していることを伝えた。また、安保法案に賛成する市民団体のデモと、反対する高校生のデモの様子を放映している。また、「戦争反対」を訴えている若者団体「SEALDs」のデモについて、「利己的」などとネット上でコメントした自民党議員の発言についても触れた。
 
スタジオでは、膳場貴子キャスターが「国際情勢の変化を強調するために、法的安定性は関係ないと述べた。と、（礒崎氏は）そう弁解しているんですけれども、国際情勢の変化を強調するために、どうして法的安定性は関係ないというふうに間違えるのか、ちょっとよく理解ができないですね」と発言した。
 
礒崎氏の発言はもともと、自衛のために日本が持ちうる「必要最低限度の実力」が、国際情勢によって変化し得るということについて述べたものだった。解説の方法はあったはずだが、膳場キャスターは「理解ができない」と突き放し、礒崎氏の発言が異常なものだと印象付けた格好だ。
 
3日の国会答弁では野党側が礒崎氏に辞任を迫ったが、「News23」では毎日新聞の岸井成格・特別編集委員が、さらに踏み込み、安倍内閣の退陣を求めるかのような発言をしている。岸井氏は礒崎氏の一連の発言から、憲法を軽視する姿勢が際立っていると指摘し、次のように述べた。

（礒崎氏の）辞任、更迭がなければ、内閣の責任に直結しますよということね。与党は今日の釈明で幕引きを図りたいということはよく分かるんですよ。恐らくそうだと思いますね。でも、そうはいきませんよね。先週から繰り返し、述べてきたんですけど、礒崎補佐官だけでなく、内閣の姿勢が今、問われているわけですから、このまま辞任もしない、更迭もしないとなれば、任命責任だけじゃとどまらないですね。内閣そのものの責任が問われると、そういう事態だと思います。

岸井氏が言う「内閣そのものの責任」が具体的にどのような責任の取り方を指すのかは定かではない。しかし、「内閣そのもの」が責任を問われるという発言は、安倍内閣の総辞職を暗に願っていると受け取られても仕方がないだろう。礒崎氏の発言は軽率なものだったにせよ、どのような責任の取り方が適切なのか、今後も議論が続きそうだ。

 

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