コロナ禍、次なる危機はエネルギー問題。世界中で高まる戦争リスク(釈量子)【言論チャンネル】
コロナ禍、次なる危機はエネルギー問題。世界中で高まる戦争リスク 2020.04.22
幸福実現党党首 釈量子
◆極めて低い日本のエネルギー自給率
今回はコロナ・ショックにおけるエネルギー安全保障体制について考えていきたいと思います。
エネルギー安全保障とは、海外でもしもの危機があった時、電気や石油など、生活に必要なエネルギーを安定供給する体制づくりで、特に日本の場合、自給率が低いのが食料とエネルギーと言われております。
世界的に経済活動が自粛されており、日本においても電力需要は間違いなく減少していますが、需要がいくら減っても、電気を途絶えさせるわけには絶対にいきません。
いま重篤な肺炎症状の為に、人工呼吸器など医療機器は不可欠で、電力の有無が生死を分けることになってしまいます。
またテレワークで在宅勤務が主流となっても、電力は必要不可欠ですし、金融や交通産業等、多くの産業でIoTが進んでおり、全て電力が必要となります。
◆中国共産党の危険な体質
コロナウイルスの感染拡大で誰の目にも明らかになってきたのが、中国共産党の危険な体質です。
全世界に感染拡大させた元凶は紛れもなく中国ですが、その責任を感じることなく、対外的に異様な動きを見せています。
2月17日、中国海軍のミサイル駆逐艦フフホトがハワイ沖300kmまで進出し、訓練を行いました。
中国海軍が単独でハワイ沖に進出したのは初めてですが、この帰路に米海軍の対潜哨戒機に対して、軍用レーザーを照射、米軍が中国に対して厳重抗議を行うという事態が発生しました。
また3月16日には、複数の中国軍機が台湾の空域に初の夜間飛行を実施し、尖閣諸島周辺の海域にも中国の公船は30日以上連続で進出し、覇権への野心を顕わしています。
◆シーレーンから見る日本のエネルギー安全保障の危うさ
原油等の重要な戦略物資を輸送する海上ルートのことをシーレーンと呼びますが、特に中東ホルムズ海峡からのシーレーンは、中国の南側に面した南シナ海を通過するため、米中対立の影響をダイレクトに受けます。
南シナ海を通らずに迂回するルートもありますが、輸送する時間もコストも大きく上昇してしまいます。
また、日本が化石燃料をどの地域からの輸入に依存しているかを見ると、中東地域から原油を約9割、天然ガスを約2割も輸入していることが分かります。
以上の観点から、日本は次の危機を見据え、世界の地理的な影響による地政学的リスクの軽減とエネルギー源の多様化を、今すぐに進めるべきです。
(1)今すぐに対応すべきこと:原発再稼働
エネルギー安全保障を確立するために、今すぐやるべきことは原子力、石炭、天然ガスといった3つのエネルギー資源をいかに確保し、有効に活用するかという点に集約されます。
まず一つ目は、安全性が確保された原発の再稼働です。
原子力発電を動かすことは、すなわち日本のエネルギー自給率を高めることを意味するため、日本のエネルギー安全保障上、非常に重要だと考えます。
2010年には20.3%だった日本のエネルギー自給率ですが、東日本大震災以降、原発が停止してしまったため、2017年には9.6%まで半減しており、主要国のなかでも、日本がずば抜けて低い水準となっています。
◆日本の原発は世界一厳しい安全性基準
一方で、原発の安全性については世界で最も厳しい基準が求められています。
東日本大震災における福島第一原発で事故が発生した原因は、津波の海水によって非常用電源が故障し、原子炉の熱を継続的に下げる冷却ポンプが機能しなくなったことにあります。
そうした教訓を生かし、電源を守る取り組みや、原子炉そのものの耐震性を強化する、あるいは冷却できなくても、放射性物質をなるべく外に出さないなど、様々な対策が練られてきました。
リスクとコストのバランスは、考える必要がありますが、東日本大震災以降、日本の原発の安全面は、大幅に増強されてきました。
◆技術・法律の両面で原発を止める必要はない?
こうした経緯から、2020年3月末の時点で、全国で6基が稼働していますが、これら稼働中の原発も再び運転を停止する予定となっており、原発再稼働は、今や風前の灯火です。
原発が停止する理由は、テロ対策に向けた施設、要するに「たとえ旅客機が突っ込んできても安全」なレベル、いわゆる「特重施設(特定重大事故等対処施設)」の工事が間に合わないためです。
しかし、この特重施設の工事は、テロが起きても大丈夫なように、バックアップの施設は作ることになりますが、技術的・法律的にも、審査中に必ずしも原発を止める必要はありません。
法律不遡及の原則からいけば、建築基準法上、耐震基準が強化された場合、今までの建物を無理やり使用中止にはできませんが、原発施設においては、それがまかり通っています。
◆政治家は腹を括って原発再稼働に舵を切れ
安全確保は大切なことですが、それによって生じた損害は、憲法における財産権の侵害であり、本来、国が賠償すべきものです。
少なくとも、原発が審査で再稼働できないツケを電気料金という形で、国民が払うのは筋が通りません。
原子力規制委員会の在り方にも大きな問題があり、現状では、国家としての大局観を欠いた、技術専門家による「議論のための議論」に陥っている状況です。
また、原発を使える期40年に限定する廃炉規制も即時撤廃すべきです。
現在、廃炉を決めている原発は24基ありますが、これらは安全にもかかわらず、40年規制で経営が成り立たないから、廃炉に追い込まれている現状があります。
もともと日本では60年運転を前提とした検査体系が運用されていたため、原子炉等の主要設備はもっと長寿命で、廃炉の時期は個別の設備の劣化状況に応じて決めるべきであり、廃炉検討中の原発は、今すぐに廃炉ストップをかけるべきです。
日本のなかで再稼働ができない「空気」はあるかと思いますが、日本の政治家は腹をくくって、エネルギー自給率を高める原発再稼働を推し進めるべきではないでしょうか。 (2)すぐに対応すべきこと:パリ協定からの離脱
いますぐ対応すべきことの2つ目として、パリ協定からの離脱を提言します。
既に原発の廃炉も進んでいるので、既存の原発を全て再稼働してもエネルギー自給率の根本的な解決にはつながらないと言えます。
短期的な方策として、地政学的リスクを少なくする決断をすべきであり、それが「パリ協定」からの離脱です。
「パリ協定」とは、地球温暖化を抑制するために、世界規模でCO2の削減を進める枠組みですが、いかに不公平であり、今まで努力してこなかった中国に非常に有利な協定であるかを知る必要があります。
コロナ・ショックで、グローバリズムが機能しなくなる中、日本が「パリ協定」に残り続ければ、それだけ日本が不利な状況に立たされ続けるわけです。
◆日本が世界に誇る石炭火力の技術力
特に、現在、最も批判されているものの1つが石炭火力発電ですが、なぜなら石炭が天然ガスと比べると、より多くのCO2を排出するからです。
一方で、石油や天然ガスと比べて、最も南シナ海での有事の影響が少ないのが、石炭です。
石炭の多くは、オーストラリアから南シナ海を通らずに、太平洋を通って日本に輸入されます。また、オーストラリア以外でも、世界各地で豊富に埋蔵しているのも石炭の特徴です。
日本の石炭火力は、高効率で環境に対する負荷が低い世界に誇れる技術ですが、「環境に悪い」というイメージが広がり、石炭火力は危機的状況です。
従って、パリ協定から離脱し、国内のCO2排出規制を撤廃することで、戦略的に石炭火力発電を維持していくべきではないでしょうか。
(3)すぐに対応すべきこと:天然ガスの輸入増加と調達先の多様化
更に3つ目として、ロシアや米国からの天然ガスの輸入量を増やし、調達先を多様化することです。
輸入している液化天然ガス(LNG)の多くが、南シナ海を通過している現状を鑑み、有事の際も、困らないエネルギー体制を築かなければなりません。
その中でも、日米同盟のある米国に加えて、ロシアからの輸入量を増やすことが重要です。
特に、ロシアからの輸入増加は、お互いにWin-Winの関係をもたらし、ロシアの中国接近を防ぐという意味でも有効です。
また、パイプラインも建設することで、エネルギー調達手段を多様化させ、リスクを分散することが出来ます。
一方で、ロシアに日本が接近することには、米国への配慮が必要で、アメリカのシェールガスの購入量を増やすような対策をとるべきです。
◆メタンハイドレートを一刻も早く実用化するには?
以上のように、短期的には日本のエネルギー安全保障を確立するために、①原発再稼働②パリ協定からの離脱③天然ガスの調達先の多様化という3つの政策が有効だと考えます。
一方、長期的には、日本のエネルギー自給率を高める大胆な投資が必要です。
まずメタンハイドレートの本格的な開発です。メタンハイドレートは「燃える氷」と呼ばれ、日本が使う天然ガスの100年分以上が日本の海底に存在していると言われています。
しかし、国内の石油や天然ガスの地質調査や、メタンハイドレートの研究開発などの事業費の今年の予算は、258億円と期待される事業規模の割に投資額は非常に少なく、実用化のペースを早めるためにも、更に投資を行うべきです。
◆本格的なエネルギー国産化を目指す政治を!
また、次世代型の再生可能エネルギーの大胆な開発と主力電源化も必要です。
例えば、マグマから直接エネルギーを取り出す次世代地熱発電、温かい海水と冷たい海水の温度差で発電する海洋温度差発電などに、大胆に投資すべきで、技術立国としての意地を見せる必要があります。
また、原発も次世代型原発を増設していくべきです。
現在、世界では次世代型原発として、SMRと呼ばれる出力30万kW以下の小型原発が盛んに研究されていますが、その中でも、高温ガス炉と呼ばれる原子炉は非常に有望です。
原子炉は通常、水などで、止まった後も、冷やし続ける必要があります。しかし、高温ガス炉は、自然に止まり、自然に冷える構造になっているので、飛躍的に安全性が高まります。
また、1000℃という高熱を利用して、水素も製造でき、水素の大量製造ができるようになれば、水素ガスタービンでの火力発電や、炭素回収技術と組み合わせて石油やガスの人工合成も可能になります。
幸福実現党としては、今回の新型コロナという危機をバネにして、原発再稼働などエネルギー安全保障の強化を迅速に進めるとともに、エネルギーを国産化する次世代型技術への大胆な投資を提言してまいります。
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執筆者:釈 量子
幸福実現党党首
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無理?