人民元・基軸通貨への挑戦VS日米豪印クアッド+欧州
2021.04.27http://hrp-newsfile.jp/2021/4071/
国防・安全保障
外交・国際政治
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幸福実現党党首 釈量子
◆中国王毅外相、中東6カ国訪問
3月24日~30日、中国の王毅外相は中東6カ国(サウジアラビア、トルコ、イラン、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン)を訪問しました。
その狙いは、中国は経済協力や新型コロナウイルスのワクチンをテコに、中東との関係を強化し、ウイグルや香港の人権問題を巡る米欧の圧力に対抗することです。
3月27日には、中国の王毅外相とイランのザリフ外相が、25年間の「包括的戦略パートナーシップ協定」に署名をしました。
今回の公式発表では、協定の詳細は明らかになっていませんが、昨年夏にリークされた協定内容によると、中国は、原子力や港湾、鉄道などインフラ投資、原油・ガスのエネルギー開発、5G通信の科学技術協力などを行う見返りとして、イランの原油を安価で購入するというものでした。
中国は、約4000億ドル(約40兆円)の巨額投資を行う予定です。イランにとっては、安定した原油の買い手を確保したことになります。
中国外務省の発表によると、王毅外相は署名に先立ってロウハ二師と会談し、「世界がどのように変わろうとも、中国とイランの関係は変わらないだろう」と話しました。
また、外国勢力の介入や理不尽な制裁を非難し、米国のイランに対する経済制裁を牽制しました。
中国はイランと接近し、米欧の民主主義陣営への対抗軸をつくろうとしています。
◆ペルシャ湾に中国軍駐留か
このような動きをする中国は、具体的に何を狙っているのかでしょうか。
一点目は、中東での軍事的影響力拡大、エネルギー資源確保です。
中国は米中対立が激しくなる中、ここ数年、戦略的にイランへの関与を強めてきました。
例えば、2016年、習近平国家主席初となるイラン訪問を行いました。
今回の協定は、習近平氏のイラン訪問以降、水面下でずっと進めてきたものです。
イランの地元メディアによると、今回の協定で、中国はイランからペルシャ湾のキーシュ島を25年間借りて、中国軍の兵士が最大5000人駐留することができるようになります。
これは、ペルシャ湾に中国人民解放軍が駐留するという事態になります。
さらに、中国はホルムズ海峡の外側に位置する戦略的要衝のジャスク港(Jask Port)にインフラ投資し、軍事拠点化する可能性があります。
ジャスク港を押えればホルムズ海峡を押えることができます。
また、イラン以外でも、2015年、アフリカのジブチに中国人民解放軍の海外初の軍事拠点を設けました。
ジブチは「アフリカの角」と呼ばれ、バブ・エル・マンデブ海峡の南端にあり、アデン湾から紅海、スエズ運河へと船が通過する戦略的要衝です。
ジブチは中国に対してGDPの約70%の債務があります。債務の罠で、中国に掠め取られた国の一つです。
中国はすでにスリランカを「債務の罠」にかけ、スリランカのハンバントタ港を実質的に手に入れています。
スリランカ、パキスタン、イラン、ジブチの港をつなげると、中国の「真珠の首飾り」がより強固なものになることがわかります。
これらの動きを見ると、中国が中東やインド洋で軍事的影響力を拡大し、アメリカなどの影響力を排除しようとしていることがわかります。
◆中東で人民元取引拡大。米ドル覇権への挑戦
中国が中東に接近する狙いの二点目は、中東での人民元取引拡大です。これは、米ドル覇権への挑戦を意味します。
3月30日の「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、中国とイランは「中国イラン銀行」も設立すると述べています。
現在、世界の貿易や金融は米ドルを中心に取引されています。
米国の力の源泉は軍事力や経済力に加え、このドルの支配力にあります。
米国が管理するドルの決済システムから、制裁対象の銀行や企業を排除すれば、その後の貿易決済などが出来なくなります。
中国やイランにとって、このドル支配を打ち破ることは大きな目標です。今回の協定により、人民元の取引を増やしていくはずです。
気になるのは、中国の最大の原油輸入国、サウジアラビアの動きです。
4月3日の香港の「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが3月、「中国のエネルギー安全保障を確保することは、今後50年間で最大の優先事項である」と報じています。
同紙では、「この発言から、将来的に、中国のサウジアラムコから輸入する原油は、人民元で取引される可能性が高い。そうなれば、他の国に波及する可能性がある」と指摘しています。
少し背景を補足すると、トランプ前大統領は、サウジアラビアとの関係を重視していました。
しかし、バイデン大統領は2月、人権外交の一環として、「ムハンマド皇太子がサウジアラビア記者のカショギ氏殺害を承認していた」という情報機関の報告書を公表し、皇太子の警備隊など76人に制裁を課しました。
結果として、中国とサウジアラビアが接近することになったわけです。
原油取引にドルを使うことは、米国のドル覇権を維持するための重要な要素でした。
サウジアラビアが米ドル決済から人民元決済に移行するようなことがあれば、これまでの枠組みを破壊する、米ドル覇権への挑戦だと言えます。
◆「日米豪印クアッド+欧州」で一対一路阻止へ
現在、中国が主導し、17カ国が「国連憲章を守るための友好グループ」を立ち上げ、米欧に対抗する勢力として、参加を呼び掛けています。
17カ国とは、中国、北朝鮮、ラオス、カンボジア、イラン、シリア、アルジェリア、パレスチナ、アンゴラ、エリトリア、キューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、セントビンセント・グレナディーン、ロシア、ベラルーシです。
参加国を見ると、北朝鮮やベネズエラなど、独裁色の強い専制国家が名を連ねています。今後、中東の国が参加する可能性があると思います。
これらの動きに対して、バイデン大統領は3月25日の記者会見で、世界の現状は「民主主義勢力と専制主義勢力の戦いだ」「近いうちに、米国で民主主義サミットを実現させたい」と述べました。
バイデン大統領は翌日の26日、イギリスのジョンソン首相との電話で、中国の一帯一路に対抗し、「民主主義国家で同様のイニシアチブを作り上げ、世界中の民主主義陣営を支援する構想」を提案しました。
現在、中国の一対一路に対抗する枠組みとして、日米豪印クワッドがあり、3月12日には、四カ国首脳のテレビ会議が開催されました。
しかし、主題が、新型コロナウイルスのワクチン供給になっていることに物足りなさを感じます。
海上自衛隊の発表によると、3月17日~18日、中東のアデン湾で、護衛艦「ありあけ」が、フランス海軍の原子力空母「シュルル・ド・ゴール」やベルギー海軍のフリゲート艦「レオポルド1世」と共同訓練を行いました。
3月19日~20日には、フランスとベルギーに加え、米海軍の強襲揚陸艦「マキンアイランド」とも共同訓練を行いました。
イギリスも5月に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃軍を、ドイツも8月にフリゲート艦をインド太平洋に派遣する予定です。
日本にとって、これらの動きは歓迎すべきことですが、東シナ海や南シナ海、中東での中国の覇権拡大を抑え込むためには、もう一段踏み込む必要があります。
具体的には、日本はクワッドを軍事同盟である「アジア版NATO」として格上げすることを提案すべきだと思います。これは、中国が一番嫌がっていることです。
国内の親中派勢力は反対すると思いますが、今後は「クアッド+欧州」で中国の一対一路を阻止しなくてはなりません。
トランプ政権の中には、日米豪印のクアッドを「アジア版NATO」に発展すべきとの声が実際にありました。
今後は、主体的に、日本から声を上げていくべきではないでしょうか。
日本はウイグルや香港の人権弾圧を終わらせるためにも、正義を貫く「武士道の国」として生まれ変わらなくてはなりません。
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釈 量子
執筆者:釈 量子
幸福実現党党首
人民元・基軸通貨への挑戦VS日米豪印クアッド+欧州。中東で反米共闘拡大、習近平ドル覇権打破へ。(釈量子)【言論チャンネル】
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