中国で困る外国人旅行者、現金もカードも不可
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【北京】米オレゴン州ポートランドに住むコートニー・ニューナムさん(30)は初めて中国を旅行した際に、屋台の列に並んだ。定番の駄菓子であるアメをかけたサンザシの実の串刺し「糖葫芦(タンフールー)」を買おうとしたのだ。
その時、彼女は屋台の店主に誰もお金を払っていないことに気付いた。「みんなコードをスキャンして歩き去るだけ。私は『ちょっと待って、何なのこれは』って感じになった」とニューナムさんは語る。そして彼女は、何も買わずに立ち去った。
中国はこれまでも決して観光客が過ごしやすい場所ではなかった。しかし最近は、ほとんどすべての物が堅苦しい正方形に姿を変えたようだ。ちょうど中国で多くのシステムのロックを解くために必要な決済アプリ用QRコードのように。
タクシーを呼ぶ際、医者にかかる際、食事の代金を払う際、航空券を予約する際にも、コードをスキャンする必要がある。物乞いでさえ、QRコードを使った支払いを求める。財布が不要の世界は、14億人の中国人の生活を便利なものにした。しかし、中国本土を訪れる年間1億4000万人の観光客は不自由を強いられる。
彼らは、使い慣れたアプリに頼ることができない。中国ではグーグルはブロックされ、ウーバーは中国の配車サービスアプリの滴滴(ディディ)に取って代わられた。レストランなどの口コミサイトのイェルプは、中国では使えない。
中国市場を支配する決済システム、つまりインターネットサービス大手テンセントホールディングスの微信支付(ウィーチャットペイ)と、アント・フィナンシャル・サービシズ・グループの支付宝(アリペイ)はこれまで、中国の銀行口座を持っていないとまず利用できなかった。クレジットカードも大きな助けとはならない。
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最初に立ちはだかったのは、万里の長城にある店の店主だった。水のボトルを買おうとしたが、現金を受け付けてくれなかった。
次に、50元札(約760円)でタクシー運転手に料金を払おうとした。しかし、運転手はウィーチャットペイでしかお釣りを渡せないと言うので、結果的に多額のチップを取られる形になった。
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ショーテスさんは「自分では何もできない小さな子どもになったように感じた。いつも『助けてください』と言わなくてはならなかった」と話した。
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このサイトでつかえるのは中国語だけだ。
アリペイを使おうとする外国人旅行者は、もう少し幸運かもしれない。アリペイは先週、海外のカードからプリペイドカードにお金を移動させる前にパスポート、ビザ(査証)情報をアリペイに入力することなど、7段階の手続きが必要なサービスを導入した。
ベルギー人マーケティング・コンサルタントのカトリーヌ・ドウィットさんは先ごろ、万里の長城に近い洗面所でいら立つ経験を味わった。彼女は最新式のトイレットペーパー・ディスペンサーの前で手を動かしたり、くぼみに指を入れたりしたあと、最後にはその機械をたたいた。QRコードの印に気づいた時、不快感さえ覚えた。
「洗面所は本当に必要な場所。それなのに携帯でなんだか分からないことをやらないと、トイレットペーパーが出てこないなんて」と怒った。トイレットペーパー・ディスペンサーのメーカー、Yunzhi Zhilian Network Technologyのチーフエグゼクティブ、リャオ・ユウシン(Liao Yuxin)氏は、QRコードの利用に熱心なことについて、「中国のユニークな特徴」だとして擁護した。
同氏は「日本に行けば彼らの文化を楽しむように、外国人はQRコードのスキャンをすることで中国文化を体験できる」と述べ、ディスペンサーが中国人との会話のきっかけを作る可能性もあると指摘した。「どのようにスキャンするのか分からなければ、中国人に聞いてほしい」
ドウィットさんは文化交流の会話をするような気分ではなかった。洗面所に来た中国人の1人が携帯を取り出して操作し、何枚かのトイレットペーパーを渡してくれ、彼女はようやく窮地から抜け出すことができた。
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