COP21:日本はしたたかに国際交渉をリードせよ!【前編】[HRPニュースファイル1496]
http://hrp-newsfile.jp/2015/2472/
幸福実現党神奈川県本部副代表/HS政経塾第4期生 壹岐愛子氏
◆国益を賭けた地球温暖化の国際交渉
今年の11月末からフランス・パリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、全ての国が参加する2020年以降の新たな温室効果ガス削減の国際枠組みを合意すること(パリ合意)を目指しています。
これに先立ち、新たな枠組みの前提となる各国の削減目標である「約束草案」の提出が求められており、127の国と地域が約束草案を国連に提出済みです(10/27現在)。
日本は、2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比26.0%削減する約束草案を、今年7月に提出しました。
10月下旬にはドイツ・ボンでCOP21に向けた最後の準備会合が開催され、パリ合意文書の草案作成に関する厳しい交渉が行われました。
各国には、シェールガス革命を背景に温暖化対策の実績をオバマ大統領のレガシー(遺産)として残したい米国、これまでの温暖化交渉や排出権市場をリードしてきたEU、今後の経済成長を阻害する削減義務化を極力排除したい中国やインド、温暖化は先進国の責任であるとして莫大な資金援助を求める途上国など、利害の対立するさまざまな主張があり、COP21で法的拘束力(削減義務)のある枠組みを合意することは不可能な見通しです(10/24日経)。
◆京都議定書は日本外交の敗北
これに対して、1997年のCOP3(京都)で採択された京都議定書は法的拘束力のある枠組みであり、締約国を先進国(附属書I国)と発展途上国(非附属書IF国)とに分け、先進国のみが条約上の削減義務を課されていました。
先進国には基準年(1990年)比削減率に基づいた2008~2012年(第1約束期間)の「排出枠」が割り当てられ、この排出枠の不足分・余剰分を先進国間で取引すること(国際排出量取引)や、途上国の削減量を先進国が排出権として購入し先進国の削減量に充当すること(クリーン開発メカニズム)が認められていました。
しかし、京都議定書には重大な欠陥がありました。クリントン民主党政権のゴア副大統領の強い意向で採択に賛成した米国は、ジョージ・W・ブッシュ共和党政権に交代して京都議定書から離脱。
目標達成が困難なオーストラリアとカナダは目標達成を事実上断念。爆発的な経済成長により世界最大の排出国となった中国には削減義務がなく、同様に途上国に分類されるインドやブラジルも、排出量が大幅に増えても削減義務がありません。その結果、京都議定書で削減義務を負った国の排出量は、2010年には世界の排出量のわずか25%にとどまり、京都議定書を遵守しても世界の削減にはほとんど役立たない状況となりました。
また、基準年を欧州やロシアに有利な1990年に設定したことによって、削減義務を負う先進国の中でも著しい不平等がありました。
EUは1990年比8%の削減義務を課されましたが、1990年以降、EU域内の東欧諸国は社会主義の崩壊によって経済が低迷し、その後は非効率な設備が更新されたことによって大幅に排出量が減ったため、大量の余剰排出枠を抱え、EU全体としては容易に達成できることがわかっていました。
ロシア(1990年比0%の削減義務)、ウクライナ(同0%)等の東欧諸国も、社会主義の崩壊によって大幅に排出量が減ったため、大量の余剰排出枠が発生しています。
一方、日本は京都議定書で1990年比6%の削減義務を負いましたが、日本では1970年代の石油危機以降に省エネ対策が徹底しており、1990年時点では既に世界最高水準のエネルギー効率を達成していたため、日本が経済成長を続けながら第1約束期間に6%のCO2削減を行うことは非常に困難でした。
こうした各国の状況は1997年の京都議定書採択時点でわかっていたことであり、削減義務の達成のため排出権を購入しなければならない日本から、大量の余剰排出枠を抱える東欧諸国や削減義務を負わない中国等の途上国へ、資金が提供されることが狙いだったとも言われています。
日本は「ハメられた」ことになりますが、「京都」の名を冠した議定書であり、外交上の理由で厳しい条件を呑まざるを得ませんでした。
その結果、日本は第1約束期間に東欧や中国から排出権という「紙屑」を大量に購入し、数千億円の国富の流出をもたらしました。
約1億トンの排出権を政府が税金で、約2.7億トンの排出権を電力会社が電気料金で購入し、2008年のリーマンショックに端を発した世界金融危機による景気低迷も手伝って、日本は何とか削減義務を達成することができました。
しかし、日本の排出量は世界の僅か4%にも満たず、全くナンセンスな行為であったことを忘れてはなりません。
◆約束草案を「削減義務」にするな
京都議定書の反省を踏まえ、日本は2020年以降の新たな枠組みの国際交渉において、「全ての国が参加する公平かつ実効性のある枠組みであること」を繰り返し主張してきました。
また、日本は、EUが主張する、各国に削減義務を割り当てるトップダウン型ではなく、各国が自主的な削減目標を提出して相互に実績を検証する、ボトムアップ型の「プレッジ・アンド・レビュー方式」を主張しており、パリ合意の大きな方向性は日本の主張に沿ったものとなることが見込まれており、前述のとおり、法的拘束力のない枠組みになる見通しです。
しかし、こうした事実に反して、日本が国連に提出した約束草案(2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比26.0%削減)が、あたかも京都議定書のような条約上の日本の削減義務であるかのような誤解や曲解、そして欺瞞が一部で起きています。
左翼系のメディアや政党、環境系の有識者、環境NGO、環境省の一部等が、約束草案が国家の必達目標であるような誤った解釈に基づいて、約束草案を達成するための規制強化、課税強化、経済統制的な制度の導入を正当化するような主張をしています。
◆地球温暖化問題は「武器なき経済戦争」であることを心得よ
今年のCOP21に対する国内外の関心は非常に高く、日本は丸川珠代環境大臣のほか、安倍晋三首相の出席も検討されています(10/22日経)。
温暖化に関する国際会議はしばしば環境派の政治家のパフォーマンスの場として利用され、これまでにも米国のゴア元副大統領、オバマ大統領、日本では鳩山元首相等が演説を行い、環境NGOや環境行政に携わる人々の喝采を浴びてきました。
しかし、各国とも自国の国益や産業の利益を最優先に、「地球を守るため」という錦の御旗を掲げて戦う「武器なき経済戦争」の面があることも事実であり、鳩山氏のように「地球を守るため」に自国の国益を失うスピーチを行うことは、通常はあり得ません。
日本からCOP21に出席する安倍首相や丸川大臣は、決して一時的な人気取りに走ることなく、長期的な日本の国益を見据えて、経済統制ではなく自由な経済発展の価値観を共有する諸国の利益のために、地球温暖化問題の本質をよく理解した発言をしていただきたいと思います。
COP21:日本はしたたかに国際交渉をリードせよ!【後編】 http://hrp-newsfile.jp/2015/2474/
◆エネルギーミックスは「絵に描いた餅」
約束草案の根拠になっているのは、今年7月に政府が発表した2030年度における長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)であり、その達成状況によっては、日本の温室効果ガス排出量は大幅に上振れするリスクがあります。
長期エネルギー需給見通しでは、実質経済成長率を1.7%と仮定したうえで電力需要は大幅には増加せず、さらに徹底した省エネが進むと仮定する一方、供給についてはCO2を発生しないゼロエミッション電源44%(原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%)と、火力発電56%(LNG(液化天然ガス)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%)を見込んでいます。
しかし、現実にこれほどの省エネが進むとは到底考えられません。
また、国民負担のこれ以上の増加を防ぐために再生可能エネルギーの導入はある程度抑制せざるを得ず、一方で原発の再稼働は遅々として進まず、原発新増設の目途も全く立っていないことから、このままではゼロエミッション電源の比率が想定ほど増えない可能性があります。(2015.03.29 HRPニュースファイル「電源構成――原発の新増設に道をひらけ!」)
現在、原子力規制委員会の安全審査が大幅に遅れており、再稼働したのは川内原発1、2号機だけです。さらに民主党時代に導入した原発40年廃炉規制が追い打ちをかけています。
現行制度では40年を迎える原発は事前に20年延長申請が1度だけできますが、審査中に期限が到来した場合には延長が不可能となることから、事業計画が立てられないことを理由に電力会社は次々に40年廃炉を選択しています。
このまま全ての原発が40年で廃炉された場合、震災前に54基稼働していた原発が18基まで減り、設備容量は震災前の4割に減少します。電力需要がエネルギーミックスの想定どおりになった場合に、2030年度の原発比率は最大でも13%程度にしかなりません(稼働率85%を仮定)。
◆一定量の石炭火力発電を確保せよ
政府は再稼働だけでなく新増設にも着手すべきですが、地元との調整を含む準備期間の長さを考慮すると、今すぐに始めても2030年度までに運転開始できる原発は限られています。
原発の不足を補う電源として、不安定な再生可能エネルギーは現実的ではないため、当然に火力発電が増加します。CO2排出が比較的少ないLNGは、価格が高く、多くが中東で産出されるためシーレーン封鎖等の国際情勢の変化に対して脆弱です。
このため、経済性や安全保障の観点から、価格が安く生産地が世界各国に遍在する石炭を、発電用の燃料の比率として一定量確保しなければなりません。
しかし、CO2排出がLNGよりも多いことから、環境省や環境NGOが石炭火力の使用を制限しようとしています。
米国オバマ政権が、地球温暖化を理由に、発展途上国での石炭火力発電所の建設に融資することを禁止するよう、世界銀行やOECD(経済協力開発機構)に要請しています。
米国ではシェールガスが石炭よりも安価に産出するようになり、これを背景に他国の石炭火力を抑制する戦術に出ていますが、石炭火力が重要な電源である途上国や、東欧の石炭産出国は反対しており、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も石炭火力向けの融資は止めないと明言しています。
こうした一部の石炭火力に反対する国内外の動きも踏まえて、環境省は日本国内での石炭火力の建設や運転を規制しようとしています。
しかし、原発が不足する中で石炭火力を減らせば、電力コストが上昇し、電力の安定供給にも支障をきたす可能性があります。
エネルギーミックスを根拠とした約束草案を金科玉条の如く守ろうとすれば、CO2対策によって国民負担の増大を招き、エネルギー多消費産業の国外移転を誘発し、結果として国民の生活水準の低下を招きます。
また、中国軍の南シナ海への進出や不安定な中東情勢に鑑みると、CO2対策に固執するあまり、LNG依存を高めて日本の安全保障を脅かしかねません。
◆「地球の神」の願いは自由と繁栄
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2014年に発表された第5次評価報告書の中で、「気候システムに対する人為的影響は明らかであり、近年の人為起源の温室効果ガス排出量は史上最高となっている」と述べています。これが現在の温室効果ガス削減に関する国際交渉のベースになっています。
しかし、幸福実現党は宗教政党として、「地球は高次な意識を持った生命体であり、CO2の濃度だけで気候が変化するような、単純な機械のようなものではない」という事実を申し上げたいと思います。
大川隆法・幸福実現党総裁はその著書の中で、「温暖化は、CO2などの温室効果ガスの影響で起きるのではなく、地球自体の天然現象として、温暖化と寒冷化が起きる。地球は、そういう周期を持っている」と述べています(大川隆法著『幸福維新』)。
地球は過去にも何度も気候変動を繰り返しており、人類はそれに適応してきました。気候変動よりももっと恐れるべきは、CO2削減を理由に社会主義的な統制経済を正当化し、創意工夫と自助努力による発展・繁栄の機会が奪われ、ひいては国民の自由と安全が脅かされることです。
「地球の神」の願いは、CO2削減などではなく、地球文明の飛躍的な発展・繁栄にあるということを断言いたします。
◆技術開発によって世界に抜本的なエネルギーシフトを起こせ
日本は外交上の理由で、今後もある程度は地球温暖化の国際交渉に関与せざるを得ないことは確かです。
また、地球温暖化問題の存在によって利益を得る業界もあり、直ちにこれを全否定することは得策でないでしょう。
しかし、その場合にも日本は、経済成長や安全保障を阻害されることなく、これらを確保しながら技術開発によって長期的にCO2削減を目指す道を主張すべきです。
日本が得意な技術の一つは省エネルギーや高効率化ですが、義務を負わずに経済合理性の範囲内で導入を進めることが重要です。
もう一つは、核を取り扱う技術です。原子力技術の持続的発展はもちろんのこと、核融合に関する技術開発によって、無尽蔵にエネルギーを生産することを目指すべきです。
再生可能エネルギーでは、やがて人口100億人に達する世界を支えることは不可能ですが、エネルギーの供給が化石燃料から核にシフトすれば、エネルギー供給とCO2の問題はほぼ解消します。
今年のCOP21では、日本からは安倍晋三首相や丸川珠代環境大臣の出席が検討されていますが、日本の国益を著しく損ねるCO2削減を約束するような発言を絶対に行わず、日本の得意分野の技術開発によって、世界の抜本的なエネルギーシフトを長期的に推進していくことを主張していただきたいと思います。
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それは、科学的ではないですね。
自然にそうなったとか、軽微な地震でイカレたとかなら分かりますが。
まぁ、今後予想されるのは原発の不足から火力発電を増加させようということですが、その火力発電も環境省や環境左翼や外国の圧力で難儀なことになるかもしれないということですかね。
確かに、再生可能エネルギーを普及させるために電気料金の値上げが、今後待っている未来でしょうね。